光輝さんはしばらく泣いていたけれど、落ち着いたあとにティッシュで洟をかんだ。
「ねぇ、カク。どうすべきだと思う?」
尋ねると、光輝さんの頭部に鹿頭が現れた。
《千秋の対応は見事だったから力になってあげる。……その香炉は強い呪具だから壊さないように。それに一週間も行方をくらましていた女子大生が、光輝の家から発見されたら一大事でしょ? 千秋は自力で動けないし、光輝と緋一が病院に連れて行くにしても不審がられる。……ここから先は、霊とか特殊な世界の話じゃなくて、現実問題にヤバくなる事への対応になってくる》
「そうだね」
《だから店においで。神野と同じように凪が何とかする。一週間も寝かされていたから、体が弱っているのはどうにもできないけど、奪われた生命力は凪がカバーできる》
「どうやってお店に行けばいいの? 今だって地下鉄で二十分近く掛かったでしょ。そんな中、自力で動けない私を抱えてなんて……」
するとカクはウインクしてニヤリと笑った。
《凪が特別に、光輝の家と店を繋ぐって》
「そんな事できるの!?」
私は驚いて声を上げる。
《二重は意志の力でどうとでもなる。それに店は凪だけの場所だからね》
「確かに」
店が新宿三丁目のどこかにあるとしても、一般的な建物の作りを無視したあの店を、常識で測ろうと思ってはいけない。
《凪は客が来そうな場所に店を構えてる。でもその気になれば、好きな場所に店を繋げられるわけ。『困っている人がいれば、私はドアを開く』。……これ、凪のポリシーね》
「ありがとう!」
私はガバッと勢いよくカクに頭を下げる。
《一人は千秋を、一人は香炉を持って適当なドアをくぐっておいで。千秋の靴や持ち物も忘れずにね》
「分かった!」
カクが消えたあと、光輝さんは溜め息をつき、今のやり取りを緋一さんに説明する。
困った顔をしていた彼も、凪さんが助けてくれると知って表情を和らげた。
「良かったな」
ポンと背中を叩かれた光輝さんは、「そうですね」と覇気なく頷き、「千秋ちゃん、触るよ。ごめんね」と断りを入れてから〝私〟の背中と膝の裏に手を回して姫抱っこした。
緋一さんは「鍵を掛けておこう」と玄関を施錠し、香炉と靴、私のバッグを持つ。
そのあと、トイレからではあんまりなので、バスルームのドアから店に行く事にした。
「本当に繋がるのかな」
不安そうな緋一さんが恐る恐るバスルームに繋がるドアを開けると――、なんと、本当に凪さんの店が見える。
「お客様のご来店~!」
カクの声がし、私たちは意を決してドアの向こうに足を踏み入れた。
**
「ねぇ、カク。どうすべきだと思う?」
尋ねると、光輝さんの頭部に鹿頭が現れた。
《千秋の対応は見事だったから力になってあげる。……その香炉は強い呪具だから壊さないように。それに一週間も行方をくらましていた女子大生が、光輝の家から発見されたら一大事でしょ? 千秋は自力で動けないし、光輝と緋一が病院に連れて行くにしても不審がられる。……ここから先は、霊とか特殊な世界の話じゃなくて、現実問題にヤバくなる事への対応になってくる》
「そうだね」
《だから店においで。神野と同じように凪が何とかする。一週間も寝かされていたから、体が弱っているのはどうにもできないけど、奪われた生命力は凪がカバーできる》
「どうやってお店に行けばいいの? 今だって地下鉄で二十分近く掛かったでしょ。そんな中、自力で動けない私を抱えてなんて……」
するとカクはウインクしてニヤリと笑った。
《凪が特別に、光輝の家と店を繋ぐって》
「そんな事できるの!?」
私は驚いて声を上げる。
《二重は意志の力でどうとでもなる。それに店は凪だけの場所だからね》
「確かに」
店が新宿三丁目のどこかにあるとしても、一般的な建物の作りを無視したあの店を、常識で測ろうと思ってはいけない。
《凪は客が来そうな場所に店を構えてる。でもその気になれば、好きな場所に店を繋げられるわけ。『困っている人がいれば、私はドアを開く』。……これ、凪のポリシーね》
「ありがとう!」
私はガバッと勢いよくカクに頭を下げる。
《一人は千秋を、一人は香炉を持って適当なドアをくぐっておいで。千秋の靴や持ち物も忘れずにね》
「分かった!」
カクが消えたあと、光輝さんは溜め息をつき、今のやり取りを緋一さんに説明する。
困った顔をしていた彼も、凪さんが助けてくれると知って表情を和らげた。
「良かったな」
ポンと背中を叩かれた光輝さんは、「そうですね」と覇気なく頷き、「千秋ちゃん、触るよ。ごめんね」と断りを入れてから〝私〟の背中と膝の裏に手を回して姫抱っこした。
緋一さんは「鍵を掛けておこう」と玄関を施錠し、香炉と靴、私のバッグを持つ。
そのあと、トイレからではあんまりなので、バスルームのドアから店に行く事にした。
「本当に繋がるのかな」
不安そうな緋一さんが恐る恐るバスルームに繋がるドアを開けると――、なんと、本当に凪さんの店が見える。
「お客様のご来店~!」
カクの声がし、私たちは意を決してドアの向こうに足を踏み入れた。
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