「……ああ……、緊張する」
私は胸元を押さえ、溜め息をつく。
「神野さん、私にペンダントを『あげる』と言った時、素直に受け取らない様子を見て『おや』っていう顔になったんです。多分、彼は私に呪具が効かない事に気づいたんじゃないかな。……だから体に何かしたんじゃ……」
光輝さんは私の言葉を緋一さんに伝えたけれど、二人ともすぐ返事はしなかった。
やがて緋一さんは溜め息混じりに言う。
「彼が俺たちに相当な恨みを抱いているのは分かった。でも、一度会っただけの女子大生に、そこまでの敵意を持つものなのか?」
その疑問はもっともだ。普通に考えれば、よほど失礼な事でもされない限り、人は初対面の相手にしつこく拘らない。
「千秋ちゃんを気に入ったとか?」
「…………あるかもしれない」
私と光輝さんは、ポツリと言った緋一さんを見る。
「……神野さんと仲良くしている同僚が、『彼はエリートで格好いいけど、プライドが高い上に性格がかなり悪い。お気に入りのキャバ嬢に邪険にされた時は、ストーカー化してた』って言ってた」
うわあ……。
「ぐ、具体的には?」
光輝さんが先を促す。
「執拗にメッセージを送り、その内容もセクハラ、モラハラ気質な感じだったらしい」
ぎゃああ……!
顔だけはいいと思っていたのに、何も褒めるところがなくなった。
「……そ、そう見えませんでした」
光輝さんも神野さんの所業にドン引きしている。
「確かに神野さんはしつこい所があるけど、仕事では優秀で憧れの人だった。……だから嫉妬も交えて脚色されてるんじゃ……と思ってた。……けど、俺や関係ない人まで害したなら話は違う。……憧れていた先輩だからこそ、俺の手で引導を渡さなければ」
緋一さんはその横顔に、並々ならぬ決意を宿していた。
やがてタクシーは神野さんのマンションの前に着いた。
賃貸マンションはごく普通の外観で、ここに私の体がある……と思うとゾクリとする。
緋一さんが緊張した面持ちで呼び出しボタンを押すと、しばらくして《はい》と男性の声がした。
「神野さん、俺です。猟沢です。壱島もいます。……入れてください」
緋一さんが言うと、神野さんは少しの間沈黙し、尋ねてくる。
《何の用だよ》
「ペンダントや、行方不明になっている女子大生について聞きたい事があります」
彼は何も隠さず、真正面から神野さんに立ちむかう。
《はっ、あのペンダントが何なのか分かっていながら、俺の家に来たのかよ》
「正直、〝何〟なのかは分かっていません。ただ、あれを着けた俺がどうなったかは自覚しています。それについても話を聞きたいです。大体の理由は察しますが、あなたの口から『なぜ』かを聞きたい。……加えて、行方不明になっている女子大生もあなたが関わっていますよね? ――――すべて聞かせてください」
緋一さんが凄みのある声で言ったあと、光輝さんも続ける。
「警察などの第三者にはまだ何も言っていません。とにかく、俺たちは事情を知りたいし、彼女がどこにいるのか知りたいんです」
《ま、警察に言っても『ペンダントのせいです』なんて言ったら、頭のおかしい奴扱いされるよな》
神野さんは半笑いで言う。
何がおかしいのか分からないけれど、彼は自分の悪事がつまびらかにされたのに、一向に焦っている気配がない。
だからこそ嫌な予感がするし、彼の家に上がったあと、さらなる〝何か〟が襲いかかってきそうな気がしてならない。
「あの子は神野さんの家にいるんですか!? いるなら……、警察案件になりますよ」
光輝さんは覚悟の宿った声で告げた。
《いない》
けれど彼はあっさり答え、私たちは三人とも「えっ?」と声を上げる。
私は胸元を押さえ、溜め息をつく。
「神野さん、私にペンダントを『あげる』と言った時、素直に受け取らない様子を見て『おや』っていう顔になったんです。多分、彼は私に呪具が効かない事に気づいたんじゃないかな。……だから体に何かしたんじゃ……」
光輝さんは私の言葉を緋一さんに伝えたけれど、二人ともすぐ返事はしなかった。
やがて緋一さんは溜め息混じりに言う。
「彼が俺たちに相当な恨みを抱いているのは分かった。でも、一度会っただけの女子大生に、そこまでの敵意を持つものなのか?」
その疑問はもっともだ。普通に考えれば、よほど失礼な事でもされない限り、人は初対面の相手にしつこく拘らない。
「千秋ちゃんを気に入ったとか?」
「…………あるかもしれない」
私と光輝さんは、ポツリと言った緋一さんを見る。
「……神野さんと仲良くしている同僚が、『彼はエリートで格好いいけど、プライドが高い上に性格がかなり悪い。お気に入りのキャバ嬢に邪険にされた時は、ストーカー化してた』って言ってた」
うわあ……。
「ぐ、具体的には?」
光輝さんが先を促す。
「執拗にメッセージを送り、その内容もセクハラ、モラハラ気質な感じだったらしい」
ぎゃああ……!
顔だけはいいと思っていたのに、何も褒めるところがなくなった。
「……そ、そう見えませんでした」
光輝さんも神野さんの所業にドン引きしている。
「確かに神野さんはしつこい所があるけど、仕事では優秀で憧れの人だった。……だから嫉妬も交えて脚色されてるんじゃ……と思ってた。……けど、俺や関係ない人まで害したなら話は違う。……憧れていた先輩だからこそ、俺の手で引導を渡さなければ」
緋一さんはその横顔に、並々ならぬ決意を宿していた。
やがてタクシーは神野さんのマンションの前に着いた。
賃貸マンションはごく普通の外観で、ここに私の体がある……と思うとゾクリとする。
緋一さんが緊張した面持ちで呼び出しボタンを押すと、しばらくして《はい》と男性の声がした。
「神野さん、俺です。猟沢です。壱島もいます。……入れてください」
緋一さんが言うと、神野さんは少しの間沈黙し、尋ねてくる。
《何の用だよ》
「ペンダントや、行方不明になっている女子大生について聞きたい事があります」
彼は何も隠さず、真正面から神野さんに立ちむかう。
《はっ、あのペンダントが何なのか分かっていながら、俺の家に来たのかよ》
「正直、〝何〟なのかは分かっていません。ただ、あれを着けた俺がどうなったかは自覚しています。それについても話を聞きたいです。大体の理由は察しますが、あなたの口から『なぜ』かを聞きたい。……加えて、行方不明になっている女子大生もあなたが関わっていますよね? ――――すべて聞かせてください」
緋一さんが凄みのある声で言ったあと、光輝さんも続ける。
「警察などの第三者にはまだ何も言っていません。とにかく、俺たちは事情を知りたいし、彼女がどこにいるのか知りたいんです」
《ま、警察に言っても『ペンダントのせいです』なんて言ったら、頭のおかしい奴扱いされるよな》
神野さんは半笑いで言う。
何がおかしいのか分からないけれど、彼は自分の悪事がつまびらかにされたのに、一向に焦っている気配がない。
だからこそ嫌な予感がするし、彼の家に上がったあと、さらなる〝何か〟が襲いかかってきそうな気がしてならない。
「あの子は神野さんの家にいるんですか!? いるなら……、警察案件になりますよ」
光輝さんは覚悟の宿った声で告げた。
《いない》
けれど彼はあっさり答え、私たちは三人とも「えっ?」と声を上げる。



