翌朝、階下に向かうと凪さんがソファに座ってテレビのニュースを見ていた。
「おはよう。よく眠れた?」
「はい、お陰様で」
凪さんはゆったりとした生成り色のワンピースにスパッツ、その上にダボッとしたカーディガンを羽織っていた。
「食欲はある?」
「必要ないのかもしれませんが、気合いを入れるために食べたいです」
「よし。じゃあ用意しよう。和食、パンどっちがいい?」
「しっかり和食で」
「了解。手伝って」
私は凪さんと一緒にキッチンに立ち、お米を研いで味噌汁の用意をし、グリルに塩鯖を入れて点火し、玉子焼きを作る。凪さんは冷蔵庫からほうれん草のごま和え、煮物を出して小鉢に盛る。
「結構なボリュームだけど大丈夫?」
「いけます! 食べるの大好きなので!」
「頼もしいね」
「食材とかはどうやって仕入れるんですか? 凪さんが買い物するんですか?」
この浮世離れした人が、スーパーでカートを押している姿はあまり想像できない。
それにこんなに綺麗な人が出歩いていたら、話題になっていてもおかしくない。
「協力者がいる。二重に店が出ていたら、自分で買い物にも行くけどね」
「ぼっちじゃなくて良かったですね。てっきりカクと二人っきりかと思っていました」
「……言うねぇ、千秋」
凪さんは私を見てニヤリと笑う。
「千秋の図太いところ、いいと思うよ。君みたいな状況になって、すぐに順応できる人って割と少ない。騒いで喚いて、泣き崩れて手が着けられなくなるとか、『早く元の世界に戻せ』と脅す人もいた」
「思っている以上に、私と同じ体験をしている人がいるんですね。……っていうか、気持ちは分からないでもない」
私は玉子焼きをひっくり返し、お皿に移す。我ながらいい出来だ。
「私は特殊な存在ではあるけど、ベースはヒトだからね。嫌な態度をとられたらムッとするし、あまりにも失礼だったら『放置してやろうかな』って思う。でも彼らが縋る相手は私しかいないし、私は人助けをするためにこの店を営んでいる。だから嫌な事があっても淡々と〝店主〟を貫いて対応するよ」
「結構大変なんですね。凪さんがお客さんを振り回してる印象がありました」
「ま、二重なんて場所にいても、結局は客商売だよ」
明るく笑った凪さんは、できあがった料理をダイニングテーブルに運ぶ。
すっぴんだからか、昨晩よりずっと素の凪さんを知る事ができたように思えた。
お店は十時に開店なので、「それまでのんびりしていいよ」と言われ、私は凪さんと一緒にテレビを見て過ごす事にした。
「千秋、手を出して」
「はい」
不意にそう言われて手を出すと、掌の上にブレスレットを置かれた。
「ターコイズにラピスラズリ、タンザナイトと浄化のクリスタル、アメジスト。暫定的な魔除け」
「ありがとうございます!」
私はパッと笑顔になって青系で統一されたブレスレットを見る。
「言っておくけど、完全に守ってくれる訳じゃないからね。石は邪気を吸ったり、祓ったりしてくれるけど、限界がある。キャパを超えたら石がバラけたり、割れる時もある。私の所に持ってきたら作り直してあげるけど、そうならないように気をつけて。無理に危険のただ中に突っ込もうとすれば、お守りがあっても痛い目を見る。二重にいようが、現世にいようがそれは同じ」
「はい」
「光輝が来たら一緒に出かけて、夜は迷い人が活発になるから、夕方には帰っておいで。危険だからちゃんと光輝に送ってもらってね」
「分かりました」
その時、やにわに尋ねられた。
「千秋って光輝みたいなタイプが好きなの?」
「えっ!?」
ズバリと言い当てられ、私は思いきり動揺する。
「おはよう。よく眠れた?」
「はい、お陰様で」
凪さんはゆったりとした生成り色のワンピースにスパッツ、その上にダボッとしたカーディガンを羽織っていた。
「食欲はある?」
「必要ないのかもしれませんが、気合いを入れるために食べたいです」
「よし。じゃあ用意しよう。和食、パンどっちがいい?」
「しっかり和食で」
「了解。手伝って」
私は凪さんと一緒にキッチンに立ち、お米を研いで味噌汁の用意をし、グリルに塩鯖を入れて点火し、玉子焼きを作る。凪さんは冷蔵庫からほうれん草のごま和え、煮物を出して小鉢に盛る。
「結構なボリュームだけど大丈夫?」
「いけます! 食べるの大好きなので!」
「頼もしいね」
「食材とかはどうやって仕入れるんですか? 凪さんが買い物するんですか?」
この浮世離れした人が、スーパーでカートを押している姿はあまり想像できない。
それにこんなに綺麗な人が出歩いていたら、話題になっていてもおかしくない。
「協力者がいる。二重に店が出ていたら、自分で買い物にも行くけどね」
「ぼっちじゃなくて良かったですね。てっきりカクと二人っきりかと思っていました」
「……言うねぇ、千秋」
凪さんは私を見てニヤリと笑う。
「千秋の図太いところ、いいと思うよ。君みたいな状況になって、すぐに順応できる人って割と少ない。騒いで喚いて、泣き崩れて手が着けられなくなるとか、『早く元の世界に戻せ』と脅す人もいた」
「思っている以上に、私と同じ体験をしている人がいるんですね。……っていうか、気持ちは分からないでもない」
私は玉子焼きをひっくり返し、お皿に移す。我ながらいい出来だ。
「私は特殊な存在ではあるけど、ベースはヒトだからね。嫌な態度をとられたらムッとするし、あまりにも失礼だったら『放置してやろうかな』って思う。でも彼らが縋る相手は私しかいないし、私は人助けをするためにこの店を営んでいる。だから嫌な事があっても淡々と〝店主〟を貫いて対応するよ」
「結構大変なんですね。凪さんがお客さんを振り回してる印象がありました」
「ま、二重なんて場所にいても、結局は客商売だよ」
明るく笑った凪さんは、できあがった料理をダイニングテーブルに運ぶ。
すっぴんだからか、昨晩よりずっと素の凪さんを知る事ができたように思えた。
お店は十時に開店なので、「それまでのんびりしていいよ」と言われ、私は凪さんと一緒にテレビを見て過ごす事にした。
「千秋、手を出して」
「はい」
不意にそう言われて手を出すと、掌の上にブレスレットを置かれた。
「ターコイズにラピスラズリ、タンザナイトと浄化のクリスタル、アメジスト。暫定的な魔除け」
「ありがとうございます!」
私はパッと笑顔になって青系で統一されたブレスレットを見る。
「言っておくけど、完全に守ってくれる訳じゃないからね。石は邪気を吸ったり、祓ったりしてくれるけど、限界がある。キャパを超えたら石がバラけたり、割れる時もある。私の所に持ってきたら作り直してあげるけど、そうならないように気をつけて。無理に危険のただ中に突っ込もうとすれば、お守りがあっても痛い目を見る。二重にいようが、現世にいようがそれは同じ」
「はい」
「光輝が来たら一緒に出かけて、夜は迷い人が活発になるから、夕方には帰っておいで。危険だからちゃんと光輝に送ってもらってね」
「分かりました」
その時、やにわに尋ねられた。
「千秋って光輝みたいなタイプが好きなの?」
「えっ!?」
ズバリと言い当てられ、私は思いきり動揺する。



