「……でも、俺が千秋ちゃんに何をできるんですか?」
すると、凪さんはにんまりと笑って彼に尋ねた。
「光輝は縁があってこの店に入ったと思うんだけど、何か困り事ってある? うちの店は、困った人がうっかり足を踏み入れてしまう所なんだ」
光輝さんは腕組みをして思案する。
「……俺、今日は会社でミスしたし、残業もあってムシャクシャしてたんですよ。最近ツイてなくて、慕っている人からも嫌われちまうし。……で、金曜日だし飲もうと思って新宿に来たんですが、この辺って〝彼ら〟が多いんです。『あー、やだな。視えなくなればいいのになー』って思いながら歩いていたらこの店に入り、初対面の人とお茶をする羽目になっています」
(そんな事あるんだ……)
日常を送っていると〝運命〟と聞くと特別なものに感じられるけれど、今はその大きな力が確実に働いているのを目の当たりにした気分だ。
そう思いつつも私は光輝さんに〝慕っている人〟がいると知って落胆する。
凪さんは私の気持ちも知らず、「ふんふん」と頷いて提案した。
「視えて困ってるなら、魔除けで〝彼ら〟の存在をぼかす事はできるよ」
「マジですか!?」
「でも、そこはギブアンドテイク。代わりに千秋の手助けをしてくれないかな?」
「……まぁ、できる事ならいいですけど。困っている人は助けたいですし」
私は光輝さんに感謝しつつ、凪さんに質問する。
「ギブアンドテイクって言いましたけど、私は誰にギブすればいいんですか?」
「千秋はちょっと変わった体質をしてるから、色々〝実験〟したいかな」
「例えばどんな?」
「迷い人に対して魔除けがどの程度効くかとか、色んな……実験?」
「ただの人身御供じゃないですか!」
抗議すると凪さんはカラカラと笑い、手首のスナップを利かせて空中を叩く。
「そんな人聞きの悪い~!」
(……この人、滅多にお目にかかれない美人だけど、割と軽いよな……)
私は脱力感を覚えて肩を落とし、溜め息をつく。
「それより、光輝さんに手伝ってもらったら、本当に現世に戻れるんですか?」
名前を出された彼は、私の質問を聞いて困ったように凪さんを見る。
彼は幽霊を視られるけれど、助けたいと思ってくれても実際にどうすればいいか分からないだろう。
すると凪さんは少し真面目な表情になり、お茶を一口飲んでから言った。
「まず状況を整理しよう。光輝は現世の肉体のままこの店にいる」
「えっ」
私は目を見開いて驚く。てっきり光輝さんも〝仲間〟だと思っていたからだ。
「それに〝視えて〟いるから迷い人を回避できるし、二人で体探しをするといいよ」
「交通機関ってどうなりますか? さっき人をすり抜けちゃいましたけど」
私は挙手して尋ねる。
「乗れるよ。二重は現世のコピーみたいな世界だ。交通機関も施設も住宅も全部同じ。千秋は現世の物を動かす事はできないけど、二重の物は動かせる。誰かの前で二重のライターを持ち上げても、現世の人の前では何も起こっていない。……まぁ、霊体の電車、霊体のライターって思えばいいのかな」
凪さんに説明され、私は「ややこしいけど分かりました」と頷いた。
「それで、俺は何をすればいいんですか?」
「ここからは君たち次第なんだけど、とりあえず柚良ちゃんの所に行ってみてごらん。彼氏の猟沢緋一くんの所にもね」
凪さんが言った時、光輝さんが「猟沢緋一!?」と声を上げた。
「し、知ってるんですか?」
すると、凪さんはにんまりと笑って彼に尋ねた。
「光輝は縁があってこの店に入ったと思うんだけど、何か困り事ってある? うちの店は、困った人がうっかり足を踏み入れてしまう所なんだ」
光輝さんは腕組みをして思案する。
「……俺、今日は会社でミスしたし、残業もあってムシャクシャしてたんですよ。最近ツイてなくて、慕っている人からも嫌われちまうし。……で、金曜日だし飲もうと思って新宿に来たんですが、この辺って〝彼ら〟が多いんです。『あー、やだな。視えなくなればいいのになー』って思いながら歩いていたらこの店に入り、初対面の人とお茶をする羽目になっています」
(そんな事あるんだ……)
日常を送っていると〝運命〟と聞くと特別なものに感じられるけれど、今はその大きな力が確実に働いているのを目の当たりにした気分だ。
そう思いつつも私は光輝さんに〝慕っている人〟がいると知って落胆する。
凪さんは私の気持ちも知らず、「ふんふん」と頷いて提案した。
「視えて困ってるなら、魔除けで〝彼ら〟の存在をぼかす事はできるよ」
「マジですか!?」
「でも、そこはギブアンドテイク。代わりに千秋の手助けをしてくれないかな?」
「……まぁ、できる事ならいいですけど。困っている人は助けたいですし」
私は光輝さんに感謝しつつ、凪さんに質問する。
「ギブアンドテイクって言いましたけど、私は誰にギブすればいいんですか?」
「千秋はちょっと変わった体質をしてるから、色々〝実験〟したいかな」
「例えばどんな?」
「迷い人に対して魔除けがどの程度効くかとか、色んな……実験?」
「ただの人身御供じゃないですか!」
抗議すると凪さんはカラカラと笑い、手首のスナップを利かせて空中を叩く。
「そんな人聞きの悪い~!」
(……この人、滅多にお目にかかれない美人だけど、割と軽いよな……)
私は脱力感を覚えて肩を落とし、溜め息をつく。
「それより、光輝さんに手伝ってもらったら、本当に現世に戻れるんですか?」
名前を出された彼は、私の質問を聞いて困ったように凪さんを見る。
彼は幽霊を視られるけれど、助けたいと思ってくれても実際にどうすればいいか分からないだろう。
すると凪さんは少し真面目な表情になり、お茶を一口飲んでから言った。
「まず状況を整理しよう。光輝は現世の肉体のままこの店にいる」
「えっ」
私は目を見開いて驚く。てっきり光輝さんも〝仲間〟だと思っていたからだ。
「それに〝視えて〟いるから迷い人を回避できるし、二人で体探しをするといいよ」
「交通機関ってどうなりますか? さっき人をすり抜けちゃいましたけど」
私は挙手して尋ねる。
「乗れるよ。二重は現世のコピーみたいな世界だ。交通機関も施設も住宅も全部同じ。千秋は現世の物を動かす事はできないけど、二重の物は動かせる。誰かの前で二重のライターを持ち上げても、現世の人の前では何も起こっていない。……まぁ、霊体の電車、霊体のライターって思えばいいのかな」
凪さんに説明され、私は「ややこしいけど分かりました」と頷いた。
「それで、俺は何をすればいいんですか?」
「ここからは君たち次第なんだけど、とりあえず柚良ちゃんの所に行ってみてごらん。彼氏の猟沢緋一くんの所にもね」
凪さんが言った時、光輝さんが「猟沢緋一!?」と声を上げた。
「し、知ってるんですか?」



