高校に入学して、早くも二ヶ月が経とうとしている。
今、おれの膝の上には大好きな星輝が座っている。
「ねー、銀志。今日、夢に銀志が出てきたんだ」
星輝が、ふにゃりと笑って見上げてきた。
「えっ、マジ!?」
「うん。夢でも銀志に会えたから、うれしい」
「どんな夢見たんだ?」
「食べきれないくらい大きくてクリームもりもりのパンケーキを二人で食べたんだよ」
甘い声で呟きながら、星輝はさらに体重を預けてくる。すこしだけ重たいけれど、おれに言わせればこれこそが『幸せの重み』ってやつだ。
……ダメだ。おれの彼氏めちゃくちゃかわいすぎる。
「お前らさあ……教室の真ん中でイチャイチャするの、そろそろ自重しろよ。見てるこっちが気恥ずかしくなるわ」
頭上から呆れ果てた声が降ってきて、おれは膝の上の星輝に顎を乗せたまま、視線だけを上へ向けた。
声の主は、入学式の日に席が隣になって以来なにかとつるんでいる、黒縁メガネをかけたクラスメイト・相馬。呆れ顔でこちらを見下ろしてくる相馬に、おれは「へへん」と鼻を鳴らしてみせる。
「いいだろ別に。おれたち付き合ってるんだし」
「限度ってもんがあるだろ」
「羨ましいのか? 分かるぞ、星輝かわいいもんな」
おれが膝の上の星輝をぎゅーっと力いっぱい抱きしめると、星輝はふふっと嬉しそうに声を上げて身を委ねてきた。
「あー、はいはい。もう好きにしろよ……」
相馬は露骨に嫌そうな顔をして大きなため息をつくと、教卓の方へと去っていった。
勝手に敗北して去っていった相馬を見送りながら、おれは腕の中の星輝に視線を落とす。
心地よさそうに目を細めている星輝の横顔。
すっと通った綺麗な鼻筋に、すこし薄い整った唇。
最近なんだか、星輝の雰囲気が『かわいい』の割合よりも『かっこいい』の割合の方がどんどん多くなってきている気がして、ふとした瞬間に心臓がうるさく跳ね上がる。
星輝とは中学の卒業式の日に、おれから告白して付き合い始めた。
一緒に勉強をしたり遊んだりしているうちに、気づけば星輝のことが好きでたまらなくなっていたんだ。
おれたちは付き合ってからというもの、春休みも高校に入学してからも、ほとんど毎日一緒にいる。
でも、星輝はめちゃくちゃ顔がいい。女子たちが「アイドルみたい」と騒ぐのも納得できるくらい、名前の通りキラキラしていて華やかな雰囲気を持っているから、とにかくありえないくらいモテる。クラスの女子はもちろん、他クラスや先輩、後輩からも毎日のように告白されているし、そのたびに星輝は「ごめん。俺、銀志と付き合ってるから」ときっぱり断ってくれている。それが最高に嬉しい。
おれだって告白されることはあるけど、そのたび「星輝いるから無理!」って秒で断る。当たり前だ。星輝以外を好きになったり付き合うなんて考えられない。
おれたちは、付き合っていることをこれっぽっちも隠さない。むしろ超オープンだ。周囲から見ればただのバカップルにしか見えないだろうし、実際にそうなんだろうけど。
なのに、告ってくる人たちが絶えないのは不思議で仕方ない。
お互い、誰がどう見たって一途に相手だけを想い合っている自信はある。
……ある、んだけどさ。
付き合ってもうすぐ三ヶ月。手を繋ぐのも、こうして抱きしめるのも当たり前になった。
……だけど、おれたち……まだ、キスすらしてなくね……?
突如として頭をよぎったその事実に、顔が一気にカッと熱くなった。
いやいや! いくらなんでも早すぎるだろ!
大事にしたいし、がっつきすぎて手が早いとか思われたくないし!
……まあ、本当の理由は、星輝の顔が近くに来るだけで心臓がバクバク破裂しそうになって、緊張のあまり手も足も出なくなるからなんだけど。
とにかく! おれはかっこいい彼氏なんだから、焦らずじっくり星輝をエスコートするって決めてるんだ。
「銀志? どうかした?」
不思議そうに小首をかしげておれを見上げてくる星輝に、心臓の爆音を聞かれないようにしながら、おれは「なんでもない!」と星輝のさらさらの髪を撫でて笑ってみせた。
今、おれの膝の上には大好きな星輝が座っている。
「ねー、銀志。今日、夢に銀志が出てきたんだ」
星輝が、ふにゃりと笑って見上げてきた。
「えっ、マジ!?」
「うん。夢でも銀志に会えたから、うれしい」
「どんな夢見たんだ?」
「食べきれないくらい大きくてクリームもりもりのパンケーキを二人で食べたんだよ」
甘い声で呟きながら、星輝はさらに体重を預けてくる。すこしだけ重たいけれど、おれに言わせればこれこそが『幸せの重み』ってやつだ。
……ダメだ。おれの彼氏めちゃくちゃかわいすぎる。
「お前らさあ……教室の真ん中でイチャイチャするの、そろそろ自重しろよ。見てるこっちが気恥ずかしくなるわ」
頭上から呆れ果てた声が降ってきて、おれは膝の上の星輝に顎を乗せたまま、視線だけを上へ向けた。
声の主は、入学式の日に席が隣になって以来なにかとつるんでいる、黒縁メガネをかけたクラスメイト・相馬。呆れ顔でこちらを見下ろしてくる相馬に、おれは「へへん」と鼻を鳴らしてみせる。
「いいだろ別に。おれたち付き合ってるんだし」
「限度ってもんがあるだろ」
「羨ましいのか? 分かるぞ、星輝かわいいもんな」
おれが膝の上の星輝をぎゅーっと力いっぱい抱きしめると、星輝はふふっと嬉しそうに声を上げて身を委ねてきた。
「あー、はいはい。もう好きにしろよ……」
相馬は露骨に嫌そうな顔をして大きなため息をつくと、教卓の方へと去っていった。
勝手に敗北して去っていった相馬を見送りながら、おれは腕の中の星輝に視線を落とす。
心地よさそうに目を細めている星輝の横顔。
すっと通った綺麗な鼻筋に、すこし薄い整った唇。
最近なんだか、星輝の雰囲気が『かわいい』の割合よりも『かっこいい』の割合の方がどんどん多くなってきている気がして、ふとした瞬間に心臓がうるさく跳ね上がる。
星輝とは中学の卒業式の日に、おれから告白して付き合い始めた。
一緒に勉強をしたり遊んだりしているうちに、気づけば星輝のことが好きでたまらなくなっていたんだ。
おれたちは付き合ってからというもの、春休みも高校に入学してからも、ほとんど毎日一緒にいる。
でも、星輝はめちゃくちゃ顔がいい。女子たちが「アイドルみたい」と騒ぐのも納得できるくらい、名前の通りキラキラしていて華やかな雰囲気を持っているから、とにかくありえないくらいモテる。クラスの女子はもちろん、他クラスや先輩、後輩からも毎日のように告白されているし、そのたびに星輝は「ごめん。俺、銀志と付き合ってるから」ときっぱり断ってくれている。それが最高に嬉しい。
おれだって告白されることはあるけど、そのたび「星輝いるから無理!」って秒で断る。当たり前だ。星輝以外を好きになったり付き合うなんて考えられない。
おれたちは、付き合っていることをこれっぽっちも隠さない。むしろ超オープンだ。周囲から見ればただのバカップルにしか見えないだろうし、実際にそうなんだろうけど。
なのに、告ってくる人たちが絶えないのは不思議で仕方ない。
お互い、誰がどう見たって一途に相手だけを想い合っている自信はある。
……ある、んだけどさ。
付き合ってもうすぐ三ヶ月。手を繋ぐのも、こうして抱きしめるのも当たり前になった。
……だけど、おれたち……まだ、キスすらしてなくね……?
突如として頭をよぎったその事実に、顔が一気にカッと熱くなった。
いやいや! いくらなんでも早すぎるだろ!
大事にしたいし、がっつきすぎて手が早いとか思われたくないし!
……まあ、本当の理由は、星輝の顔が近くに来るだけで心臓がバクバク破裂しそうになって、緊張のあまり手も足も出なくなるからなんだけど。
とにかく! おれはかっこいい彼氏なんだから、焦らずじっくり星輝をエスコートするって決めてるんだ。
「銀志? どうかした?」
不思議そうに小首をかしげておれを見上げてくる星輝に、心臓の爆音を聞かれないようにしながら、おれは「なんでもない!」と星輝のさらさらの髪を撫でて笑ってみせた。



