その日の放課後。
新藤は美術部に来ていた。
「新藤、頑張ってるな」
「先生」
俺は新藤に話しかけた。
蛇が意味するもの――。
死。
そして、脱皮して生まれ変わるという暗示でもある。
だから――。
「ごめんな、俺」
「昨日、お前のスケッチブック見ちゃったんだ」
……。
部室の空気が少し冷たくなる。
「お前、蛇を描くの上手いよな」
「良く描けてた」
「……先生」
戸惑いを隠せない新藤。
声が震えているように聞こえる。
「でも、落書きなんかに使うなよ」
「もったいないからな」
新藤は目を見開いた。
そして、じっと俺を見る。
「ちゃんとアイデアにして、デザインして、表に出してやれ」
「SNS映えするぞ。きっと」
……。
「ありがとう先生」
そう。
俺に出来ることはここまでだ。
後は任せたぞ、美樹本。
そうして部活の時間は過ぎていく。
「……先生、お疲れ様です」
新藤は俺に挨拶をして帰って行った。
「あの新藤が挨拶をして帰りましたね……?」
顧問の先生が俺に話しかけてきた。
「当たり前のことでしょう」
そう言いながら俺は、
綺麗に脱皮した姿を思い描いていた。
帰り道。
桜の木の陰で新藤を待つ影が見える。
彼女は通り過ぎようとする新藤に声を掛けた。
二つのシルエットは、
離れていた時間と蟠りを溶かすように桜色へ染まっていく。
やがて二人は声を出して笑いながら歩き始めた。
腕を組んで歩いて行く――。
俺には教師なんか似合わない。
でも。
本当に教師になれたら、
この学校に必ず戻って来ようと思う。
二人の姿を見守りながら、
俺は校門へ視線を移した。
女性の姿が見える。
俺は、その人を知っている。


