美樹本は少年の話を続ける。
「拾った雑誌をね」
「ホームレスのテントが並ぶ河川敷に持って行くの」
少し表情が暗くなる。
「あの人たち、公園のゴミ捨て場で見かけられたら通報されちゃうの」
「あの子はそれを知ってたの」
「その人たち、すごく嬉しそうに少年に声を掛けてた」
……。
「あんな小さな子が、捨てられた物を循環させていたの」
「それが分かってから、私はその子と仲良くなりたくて声を掛けた」
美樹本の表情がさらに沈んでいく。
「でも、その子はとても人見知りで、恥ずかしがり屋で……」
「特に距離感が変な私は避けられて」
泣きそうな顔で笑う。
「普通に話し掛ければ良いのに」
「驚かしたり、皮肉を言ったり、突然現れたり」
「そりゃ嫌がられるよね。思春期に入ったばかりの男の子だし」
その子の話なのに、妙にすんなり入ってくる。
何故だろう?
「でもね……」
「そんな男の子と、すんなり仲良くなったの」
「新藤さんが……」
美樹本の表情が一気に強張る。
「えっ?」
「私はやきもちを焼いた」
「嫉妬したの」
……。
嫌な沈黙が流れる。
「でね……」
「私はある日、友達にこう言ってしまったの」
「新藤さんって暗いよね」
「私、話しかけるのやめるわって」
……。
……。
「それからだった……」
「新藤さんはクラスでも学校でも浮き始めた」
「ひと月もしないうちに、今みたいな空気が出来上がっていた……」
美樹本は大粒の涙を流していた。
「私は、自分の影響力を良くも悪くも分かってなかった」
「新藤さんがああなったのは、私のせいなの!」
……。
教師として掛ける言葉を選ばないといけない。
余計な発言は絶対に避けなければならない。
だけど――
俺は何故か、次の話をし始めた。


