Re死んだはずの俺は言われた。『あなたもその事故の原因です』


記憶。



普通に考えれば、物心が付いた頃から現在まで続く一枚の絵巻のようなものだろう。



だが――



突然そこに関係のない人生が入り込んできたら。



あるいは、今の自分が箇条書きのような存在で、そこへ別の自分が放り込まれたら……。



そんな感覚は、普通なら無いよな……。





ぼんやりとそんなことを考えながら、今日も教壇に立っている。



人に期待されるのも、



期待するのも苦手だ。



結局、面倒だからだ。



特に中学生。



まだ何者でもなく、過敏で過激。



それでいて、まだ無邪気だ。



人格を形成する上で、一番多感な時期でもある。



俺みたいな奴が関わっても、ろくなことにならない。





それなのに、自然と視線が向いてしまう。



その生徒はいつも一人だった。



女子なんだから、グループとか派閥みたいなものがあっても良さそうなものだが、



彼女は誰とも話している様子がない。



良く言えば自由な娘。



悪く言えば空気みたいな娘。





俺は初日から、その生徒のことがずっと引っかかっている。





「先生、休み時間付き合ってよ」





終業のチャイムが鳴っていたことにも気付かず、ぼーっとしていた俺の腕を掴んだのは、



美樹本 麗香(みきもと れいか)。



例のデリケートな存在だ。





「どこ行くんだ?」





「購買部」





「何で俺が?」





「ここのカレーパン、空港の絶品カレーを使ってるの」





「先生にも是非とも知って欲しいの」





何とも行動的で、インパクトの強い娘だ。



あの娘とは真逆な……。





「真逆……?」





なぜか、その言葉にも引っかかる。





「さ、行こ先生」





楽しそうに俺の腕を引っ張っていく。



こういう娘はモテるんだろう。



積極的で明るくて、容姿も申し分ない。



男子側からすれば、大いなる勘違いを起こすタイプだ。





「先生って何か変わってるよね」





「……!」





「何か達観してるっていうか、俯瞰的っていうか」





「単に冷めてるだけかもしれないけど」





まあ、そう言われても仕方がないか。





「ほら、そういう所」





物怖じしない。



さっぱりした性格。



デリケートな存在とは聞いていたが、どうもそんな感じはしない。





「なあ、聞いても良いか?」





「何、先生?」





「今のクラスに、いじめとかあるのか?」





突然何を言ってるんだと、自分でも思った。





自然に教室のあの娘のことを考えていたのかもしれない。





次の瞬間。





美樹本の表情が、明らかに変わっていた。