自己分析では、私はたぶん統合型の多重人格者なのかもしれない。
一つの身体に二つの人生……。
その一人が「ゼネコン」という単語に反応する。
いや、恐怖すら覚えている。
「早草、どうする? やるか独占」
「やります。やらせてください!」
でも、もう一人の私は即答する。
その返事を聞いたディレクターは、即座に調整へ入った。
そしてインタビューは五日後に決まった。
無視される。
拒否される。
否定される。
消えてしまう。
経験したことはない……。
でも覚えている……。
だからといって、大勢の前に立つのも、
大勢を代表するのも正直怖い。
そんな不思議な心を抱えたまま、私は生きている。
インタビュー当日。
早朝。
スタッフと機材は既に美樹本正義のオフィスへ到着している。
私も局の車で現場へ向かった。
ビルへ到着すると同時に、オフィスへ案内される。
小さな雑居ビルの三階。
スマホ画面に映るアプリからは想像できないほど地味な光景だった。
私は少し驚いていた。
「よくおいでくださいました」
美樹本本人が出迎えてくれる。
「よろしくお願いいたします。キャスターの早草礼子です」
スタッフたちとの名刺交換が始まる。
「さあ、どうぞこちらへ」
カメラマンと私、それぞれ二人が応接室へ通された。
正直、私は鼻の高い若者を想像していた。
だが、全く違う。
柔らかい物腰。
丁寧な態度。
期待していた傲慢さは微塵も感じられない。
番組としては、正直少し物足りなさも感じる。
インタビューは何の問題もなく進んだ。
撮れ高は微妙になるかもしれない。
好印象で、良い人すぎる。
噂や事前情報そのままの人物だった。
インタビューを終えようとした、その時だった。
ガチャッ。
扉が開く。
「何だ、まだ終わってなかったのか兄貴」
入って来た男は、悪びれる様子もなく言い放った。
「こら、義隆」
「まだインタビュー中なんだぞ」
「すまん、すまん兄貴」
「出直すよ」
カメラマンは無意識にその男へレンズを向けていた。
この人は危ない。
私の中で、警鐘を鳴らしている私がいた。


