ジュエリーアイスがとけるまで

 陶芸レッスンの二週目。
 今日は先週マグカップの形にしたものを削ったり、高台をつくったりする日だった。一通り説明してもらい、作業に集中していると、隣から視線を感じた。

「なーんも言うことないなぁ」と、先生が微笑みながら頬杖をついてこちらを見ている。
 
「……やりづらいんですけど」
「ああ、すみません。体験のときも言ったけど、本当に筋がいいから……。僕、こんなんでお金もらったら怒られちゃう」
「誰にですか」
「えー? 晶くん?」
「怒らないですけど……」
「けど……?」
「桜木先生、ちゃんとやりましょう」
「ふふふ、はーい」
 先生は楽しそうに笑いながら、椅子に座り直した。

 細かいところは先生に手伝ってもらい、なんとか理想の形に仕上げた。

 次に、釉薬を選ぶために、たくさんのサンプルを用意してもらった。いつもなら即決できるはずなのに、最初の作品で愛着が湧いているのか、なかなか決められなかった。その間、先生は何も言わず、優しい表情で一緒にサンプルを眺めていた。
 五分ほど悩み、淡いブルーグレーのような色を選んだ。

「これにします」
「お〜、いいですね。晶くんっぽい色だ」
「俺っぽい? ……ですか?」
「はい! ロシアンブルーみたいで。……って、猫のロシアンブルー、知ってます?」
「知ってます」
「僕、実家で飼ってて〜、『かんた』って名前なんですけど、すっごく可愛いんですよ」

 ……ロシアンブルーに『かんた』って……。
 やっぱりちょっと変わってんな、この人。
 そう思っていたら、俺の顔を真っ直ぐ見て、

「うん、やっぱり。晶くん、ロシアンブルーみたいです。特に目の感じが!」
 
 そんな近距離で言うことじゃないだろ。
 俺は照れてしまって、「ロシアンブルー、ですか……」という意味不明な返しをしてしまった。

 それでも先生はニコニコしたまま、俺の目をじっと見つめている。
 しばらくすると、ハッとしたように「ああ、ごめんね!」と言い、距離を取った。

「じゃあ、来週はお休みで、さらに乾燥させて、素焼きをしておきます。再来週にこの色、つけましょうね」
「はい」
「楽しみですね」
「よろしくお願いします。……では、失礼します」と言って、教室を後にした。

 車を走らせている最中も、ロシアンブルーの話を振り返っていた。
 ロシアンブルーの目ってどんなだっけ?

 途中で寄ったうどん屋で、うどんをすすりながらスマホで『ロシアンブルー』と検索した。
 ……いや、こんなキラキラしてないし。本当、人たらしめ。
 そのままスマホをスライドしていると、『ロシアンブルーってどんな性格?』というネット記事が出てきたので、タップしてみた。

「静か、警戒心が強く神経質で人見知り、特定の人に愛着を示す……か。……最後以外、俺じゃん」
『特定の人』に当てはまる人を頭に思い浮かべてみたけど、やっぱりいなかった。

 いつかペット飼うときがきたら、ロシアンブルーに決まりだな。そんなことを思いながら、残りのうどんを一気に完食した。