魔法の花が教えてくれたこと

『ごめん、用事あるから先に行く』

 陸斗にはそうメッセージが送られてきて、私は一人で学校に行った。

 案の定、通り過ぎればコソコソと言われて。
 昨日まで仲の良かった凛華と龍平までも、私と距離を置いてきた。
 それはそうだ。だって、今の私は悪女だから。

「ねぇ、やっぱ陸斗くん可哀想だって。あんな奴に騙されてて」
「ほんとひどいよね。推薦消された同級生の子、人生めちゃくちゃにされてるじゃん」
「……そう、だね」

 移動教室だったのだろうか。廊下を陸斗と女子二人が歩いて行って、チラリとこちらを一瞥した。

 少しだけ、陸斗も私の方を見る。

 すると、悲しい表情をしてすぐに去って行ってしまった。


 こんなに、噂ってすぐ広まるんだ。いや、私のインスタを直接見たのかな。


 思わず涙で視界が滲んだ。
 それを私はすぐに制服の裾で拭う。

「見て、今度はあの悲劇のヒロインみたいなことし出したの?」
「自分が一番可愛いと思ってるんだよ。心はめっちゃ汚いくせに」

 コソコソ、聞こえるか聞こえないかぐらいの音量でそう言われても、私はもう、余計傷ついたりしない。

 心の傷は、既に一番深くまで到達している。

 
 私はリュックの中に忍ばせてきた、あのアヤメの花を思い出しながら天井を見上げていた。

 我慢できなかった。魔法の花がなければ、とっくに私は壊れていたと思う。

 今日、この花を使おう。部活もないし、放課後は一目散に学校を飛び出して、あの公園に行って。いろんな思いが詰まったあの場所で、新たな一歩を踏み出すのだ。
 そうすれば、全部元通りだから。これさえあれば、どんな状況に置かれたって脱出できる。

 
『魔法に頼らず、努力してなんとか乗り切るんだよ』


 ごめんね、陸斗。私には陸斗と同じ考えができなかったみたい。

 不思議なあの少女が、この花はきっと私の望みを叶えると言っていた。その通り。

 私はもう、陸斗とは付き合わなかった世界線にしたい。

 仮面を被るのは悪いことなのかを考えて罪悪感に飲まれる前に、高校でも独りでやり直したいのだ。陸斗との日々が送れなくなるのは、それもそれで辛いけれど。

 陸斗との思い出を思い出せば、きっとなんとかなる。