こいつは受肉したビッチだ。
安いもんさ。パンツの一枚くらい。
「えと……ごめんなさい、急に呼び出してしまって」
さりとて、初対面でいきなり「パンツ撮らせて」とは言えるはずもない────たとえ女同士であっても。
「あ、あのですね……佐山さん」
佐山サトコは美少女だ。おまけにギャルだ。
虎みたいに金色のメッシュが差し込まれたロングウルフの髪を靡かせている様は、まるで幕末の横浜を我が物顔で闊歩するイギリス人。治外法権と言わんばかりに校則なぞ無視している。
「手を握ってもらえませんかッ!」
放課後の体育館には、私たちしかいなかった。
運動部がやってくるまでの、ほんのわずかな空白を狙ったのだ。
「なにゆえ?」
「それはですね……」
適当な言葉をエサに手を差し出させ、握った瞬間に崩す。
小学生の頃に習っていた合気道の要領で手首を返せば、油断している相手を床へ転がすくらいはできる。その隙に、ポケットへ忍ばせたスマホで指定された写真────佐山サトコのパンツを撮る。
我ながら穴だらけの計画だった。けれど、成功すればミスコンに出なくて済む。
私が笑われるか、佐山サトコを笑いものにするか。その二択なら、答えは決まっていた。
「佐山さんと手を繋いだら……空だって飛べるかなって」
アホらし。自分でもそう思っ────
「なんで知ってるの?」
「……へ?」
「あたし、空飛べるよ。つーか、落ちるの」
気づけば。彼女はもう私の手を握っていた。
とても柔らかくて、ちっちゃくて。切なくなるほど冷たくて。
だから一瞬遅れてしまった────こうしていま、カラダが宙に浮いていると知るまで。
「反重力も、技術のうち」
そう言って微笑む佐山さん。
私は彼女に手を引かれ。夕陽が沈むかの如く、さも当然であるような顔をして────天井へとふたり、落ちていくのだった。



