家に帰ってからも、あの女子が最後に呟いた言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。
“こうしないと、私たちがいじめられるから”
まるで誰かに脅されているような口ぶりだ。もしこの予想が当たっているとしたら、あの女子たちは誰にあんないじめを強要されているのだろう。
あのいじめを止めるためには、まずそこから探る必要がありそうだ。
それにしても、いじめを強要されていることを俺に打ち明けた真意は何なのだろう。単に良心の呵責に苛まれて秘密を抱えていることに耐えられなくなったからなのか、また他の理由があるのか。今の俺にはその正解を想像することすらできない。
でも、うっすらと現時点で判明していることがある。それは、このいじめの主犯格はおそらく女子であることだ。
多分、今回のいじめの中心人物は男じゃない。クラスの男連中は今回の浮説に惑わされた結果、女子の間に漂う空気に流されて俺を無視している、という状況なのだと思う。その証拠に暴力やあのキーホルダーの件だって、直接的に関係しているのは女子しかいない。俺をいじめてきたのは今のところ女子だけなのだ。そうなると、女子の中に黒幕がいると考えるのが妥当だろう。順当に考えれば陽葵をいじめていたグループの主犯格が一番怪しい。
でも、俺はこれまで陽葵以外の女子とつるんでこなかったから、どうにも女子同士の関係性や噂に疎い。
まずは、情報源となる誰かと関係性を深めることから始めるべきだろう。
次の日、学校に着いてから最初に控えめな印象の大人しい女子に話しかけた。芯がある快活な性格の人間よりも、このタイプの人間の方が押しに弱いだろうと踏んでの行動だった。
初めは俺がいくら声をかけても黙りこくっていたその女子も、次第に無視し続けることに耐えきれなくなったのか、数分してようやく口を開いてくれた。
「あの、なんなんですか。急にずっと話しかけてきて」
「いやさ、今俺みんなから無視されてるじゃん。風川さんなら優しいから仲良くなれるかなと思って」
「助けを求めてるなら他を当たってください。私は貴方に関わりたくないので」
やっと言葉を発したかと思えば、交渉する間もなく一刀両断されてしまった。思っていたよりはっきりとした冷たい物言いに、少し体が強張るのを感じる。
「ごめん、急に話しかけたりして。風川さんもよく知りもしないクラスメイトから話しかけられたら怖いよな。今からは話しかけないようにする」
「はぁ……そこまで言わなくても大丈夫です。それで、要件は何ですか?」
作戦成功だ。端から話を聞いてもらえるとは思っていなかったから、散々押したうえで引くのが最善だろうと事前に計画を練っておいたのだ。
「要件っていうか、ホントにただ仲良くなりたかっただけ。別に損得も何もないよ」
風川さんは到底そんな言葉は信じられない、といった様子で真意を勘ぐるように俺の瞳をじっと見つめてきた。不思議と、陽葵以外の女子と見つめ合っていても照れくさくはなかった。陽葵となら一瞬視線が交わっただけでも顔が赤くなっていたのに。
「まぁ、いいですよ。連絡先、交換しますか?」
諦めたように首を振った風川さんは静かにそう言った。あぁ、と返事をして風川さんのSNSのアカウントをフォローした。ひとまずは第一関門突破だ。ここから少しずつ関係性を構築していくうちに、女子同士の空気感や関係性を知ることができるかもしれない。
“こうしないと、私たちがいじめられるから”
まるで誰かに脅されているような口ぶりだ。もしこの予想が当たっているとしたら、あの女子たちは誰にあんないじめを強要されているのだろう。
あのいじめを止めるためには、まずそこから探る必要がありそうだ。
それにしても、いじめを強要されていることを俺に打ち明けた真意は何なのだろう。単に良心の呵責に苛まれて秘密を抱えていることに耐えられなくなったからなのか、また他の理由があるのか。今の俺にはその正解を想像することすらできない。
でも、うっすらと現時点で判明していることがある。それは、このいじめの主犯格はおそらく女子であることだ。
多分、今回のいじめの中心人物は男じゃない。クラスの男連中は今回の浮説に惑わされた結果、女子の間に漂う空気に流されて俺を無視している、という状況なのだと思う。その証拠に暴力やあのキーホルダーの件だって、直接的に関係しているのは女子しかいない。俺をいじめてきたのは今のところ女子だけなのだ。そうなると、女子の中に黒幕がいると考えるのが妥当だろう。順当に考えれば陽葵をいじめていたグループの主犯格が一番怪しい。
でも、俺はこれまで陽葵以外の女子とつるんでこなかったから、どうにも女子同士の関係性や噂に疎い。
まずは、情報源となる誰かと関係性を深めることから始めるべきだろう。
次の日、学校に着いてから最初に控えめな印象の大人しい女子に話しかけた。芯がある快活な性格の人間よりも、このタイプの人間の方が押しに弱いだろうと踏んでの行動だった。
初めは俺がいくら声をかけても黙りこくっていたその女子も、次第に無視し続けることに耐えきれなくなったのか、数分してようやく口を開いてくれた。
「あの、なんなんですか。急にずっと話しかけてきて」
「いやさ、今俺みんなから無視されてるじゃん。風川さんなら優しいから仲良くなれるかなと思って」
「助けを求めてるなら他を当たってください。私は貴方に関わりたくないので」
やっと言葉を発したかと思えば、交渉する間もなく一刀両断されてしまった。思っていたよりはっきりとした冷たい物言いに、少し体が強張るのを感じる。
「ごめん、急に話しかけたりして。風川さんもよく知りもしないクラスメイトから話しかけられたら怖いよな。今からは話しかけないようにする」
「はぁ……そこまで言わなくても大丈夫です。それで、要件は何ですか?」
作戦成功だ。端から話を聞いてもらえるとは思っていなかったから、散々押したうえで引くのが最善だろうと事前に計画を練っておいたのだ。
「要件っていうか、ホントにただ仲良くなりたかっただけ。別に損得も何もないよ」
風川さんは到底そんな言葉は信じられない、といった様子で真意を勘ぐるように俺の瞳をじっと見つめてきた。不思議と、陽葵以外の女子と見つめ合っていても照れくさくはなかった。陽葵となら一瞬視線が交わっただけでも顔が赤くなっていたのに。
「まぁ、いいですよ。連絡先、交換しますか?」
諦めたように首を振った風川さんは静かにそう言った。あぁ、と返事をして風川さんのSNSのアカウントをフォローした。ひとまずは第一関門突破だ。ここから少しずつ関係性を構築していくうちに、女子同士の空気感や関係性を知ることができるかもしれない。

