今日も楽しそうな笑い声を奏でる遊星を横目に、私はお給料を管理しているファイルを眺めていた。
お給料が入る度、使っていいお金と、今後に備えて貯金しておくお金を分けて管理している。
使っていいお金は制限しておかないと投げ銭で全て使ってしまうから、この中からしか使わないように頑張ってはいる。
備えの分は、今回みたいにグッズが出た場合にのみ出動する枠組みだ。
ようやく使う時が来た。
貯金額【八万円】。
結構貯めれている方だと思う。
「ランダムは迷わず大量に買うとして......」
グッズ販売日まであと一週間。
ハロウィングッズということもあって、毎月二十八日が給料日なんだけど、ちょうど発売日と重なっている。
予定表アプリを開いて、シフトが入ってる時間で一週間分のお給料を計算してみよう。
「二万四千二百円か......」
貯金額と合わせて、十万を越える。
..............え、私頑張ったくない!?!?
我慢することなくグッズが手に入りそうで、浮き足立った気持ちでスマホを抱きしめた。
私の腕の中で押しつぶされて、くぐもったせいで遊星の話が聞こえずらくなり慌てて離す。
グッズの詳細画面に飛び、一つ一つ凝視する。
イラストレーターさんが好みだったのか、遊星ならなんだって好きなのか、全ビジュがイケすぎててどれも厳選できそうにない。
今後のグッズの為に貯金額を半分置いておこうかとも考えたが、まぁ、無理だった。
普通に無理だった。
次は次。
その時までにまたバイト頑張ればいい。
今回のデビューグッズを除いた、初グッズは記念すべきものなのだから全部手に入れなきゃ!!
とりあえず、十万円という大台に乗るため、発売日までにバイト頑張るぞ!!!!
「グッズどれも最高に可愛いから、日常の一部に是非!!!」
グッズの為に高額は投げれないけれど、おめでとうの気持ちを込めて、千円のハピチャを選択した。
【グッズ楽しみです!】
「ハピチャありがとう!グッズ是非是非!!みんな無理のない範囲で買ってね〜」
遊星のこういう配慮が大好きだ。
だからこそ、私が返せる最大の愛を返したい。
※
グッズの発売日である今日は、朝からSNSが騒がしい。
遊星と翔馬は宣伝をしていて、ファンは早く手にしたい!!楽しみ!!と盛り上がっている。
私も今日バイトに行って、無事に十万円の大台に乗るところをこの目で見るのが楽しみだ。
鏡の前で前髪にアイロンを通し、学校にいても浮かないように身なりを整える。
バッグを手に取り、遊星の小さいぬいぐるみが揺れているのを確認して、ローファーに足を通す。
廊下を小走りしている振動が背後から伝わってきて、嫌な予感がした。
「ちょっと、今日美優バイト?」
普段は聞いてこないくせに、このタイミングで聞いてくるあたり、絶対に調べあげている。
遊星のグッズの発売日であることを分かった上で詮索してきているんだろう。
かけられてもいない手錠が自分の手首に見えて嫌になる。
ローファーを履き終わりお母さんを見て微笑む。
少し笑顔が不格好かもしれないが、これでも頑張っているから許して欲しい。
「バイトだよ」
「最近詰め込みすぎじゃない?何かあるの?」
「......欲しいものがあるだけだよ。そんなに心配しなくても大丈夫。借金してる訳でもないでしょ?」
「やっぱりあのイラストを見始めてからよね?前みたいにお友達と遊ばなくなったの」
遊星をイラスト呼びされることへ嫌悪感を覚えながらも、必死に余計なことを言わないように気持ちを抑える。
右手に異常なほど力が入っているのがわかる。
「別に、遊星を見始めたからって訳じゃないよ。元々一人でいる方が好きなだけ」
「でも、中学生の頃とか高校に入ってからも一年生の時はもう少しお友達とお外にいたじゃない」
「そうだけど、私は本当は家で本読んだりしてるほうが落ち着くの。だから、そっちを選んだんだよ」
そこまで言うと、お母さんは口ごもって黙ってしまった。
失望したかな。
お母さんの望みは何となく察してはいたけど、今声に出してはっきりと分かった。
やっぱりお母さんの望み通りには出来ない。
できる限りの笑顔を向けて、「行ってきます」とだけ伝えて家を出た。
お母さんからの返事は何も聞こえてこなかった。
※
「お疲れ様です!」
「美優ちゃんお疲れ!!私も今日はここで上がり!!いぇーい」
嬉しそうに私の隣で伸びをした架純先輩は、なんの躊躇もなく厨房にいる店長に声をかけた。
「店長!お給料まだですか〜!!」
「あぁ、はいはい」
ド直球すぎる架純先輩の言葉に驚きながらも、何も気にしてなさそうな表情で表に出てきた店長にも二重で驚いた。
名前の書かれた封筒が手渡され、架純先輩と二人して掲げて喜ぶ。
呆れたように裏へ戻って行った店長を見つめていると、架純先輩が嬉しそうに声を上げた。
「推しのコンビニくじ引き放題!!!明日朝イチで行くの!!!」
「うわぁ!それはいいですね!!私も今夜推しのグッズ買うんです!!!」
「おぉ!!いいじゃーん!!!」
「ランダム沢山あったので、貯金も全部いっちゃいます!」
「絶対爽快じゃん!」
スタッフルームまで歩きながら盛り上がり、お互いの推しの良さを語る。
架純先輩は、偏見がなく、話しやすい気がする。
バイトの制服から、学校の制服に着替えたことで乱れてしまった前髪を整える。
すると、右隣からものすごく明るい声が聞こえてきた。
「てかさ、私最近ZTuberの翔馬好きになってさ!美優ちゃんの推しって遊星だよね!?」
「え!?そうです!!ZTuberの話出来る友達いないんでなんだか嬉しいです!」
「ハマったら終わる気してんだけど、翔馬の魅力知っちゃったら掛け持ちもありかな〜とか思ったりもしちゃって♡」
突如として同士が登場し、目ん玉が飛び出そうだった。
なるべく人とは関わりたくないのだけれど、遊星の話が出来るなら友達ってのもいいかもしれない。
架純先輩が私と友達になってくれるかは別だけど。
先に着替え終わった私は、ここまで話したのに先に帰るのは気が引けて、架純先輩が着替え終わるまでスマホを弄って待っていることにした。
すると、架純先輩の名案とでも言いたげな明るい声がスタッフルームに響き渡った。
「そーだ!!!今回ランダム多いんだよね!?!?」
「はい......思っていた以上に......ははは」
「ならさ!私も思い切って翔馬のグッズ買うから、お互いの推し出たら交換しない!?」
女神かと思った。
普段から輝いて見える架純先輩が、より光を背負っているみたいだ。
有り難すぎてる提案に思わず架純先輩の手を取った。
「もぉー!!!是非!!!!!有難いです!!!!!!」
「いやいや!推し活は助け合わなくちゃ!!」
「あ!良かったら、デビューグッズ保存用に多く買ってるので翔馬いりますか!?」
「へ!?いいのー!?!?でも、タダは申し訳ないから......」
困り眉でそう言った架純先輩は、給料袋から千円札を取り出した。
「代金はお支払いします!」
「え、いや!全然大丈夫です!!!私が感謝を伝えたいだけなので!!!」
「えー!でも......」
「本当に気にしないでください!!そうだ、もしお時間あったらこれから家に取りに来ますか?」
「なら......お言葉に甘えて!!!時間あるある!!!時間しかないよ〜!!!!」
嬉しそうに声を弾ませる愛嬌増し増しの架純先輩を横目に、お母さんに連絡を入れる。
あ、友達家にあげるとか私初めてかも。
【今から少しだけバイト先のお友達家に上がってもいい?】
【お友達?もちろんいいわよ】
すぐに既読がついたあと、了承のメッセージと、うさぎが幸せそうに笑ったスタンプが送られてきた。
今朝、あんな顔をさせてしまったんだ。
少しくらい安心させられたらいいな。
架純先輩と二人で店長に向かって元気よく挨拶をすると、店長は気だるげに手を振ってくれた。
お給料が入る度、使っていいお金と、今後に備えて貯金しておくお金を分けて管理している。
使っていいお金は制限しておかないと投げ銭で全て使ってしまうから、この中からしか使わないように頑張ってはいる。
備えの分は、今回みたいにグッズが出た場合にのみ出動する枠組みだ。
ようやく使う時が来た。
貯金額【八万円】。
結構貯めれている方だと思う。
「ランダムは迷わず大量に買うとして......」
グッズ販売日まであと一週間。
ハロウィングッズということもあって、毎月二十八日が給料日なんだけど、ちょうど発売日と重なっている。
予定表アプリを開いて、シフトが入ってる時間で一週間分のお給料を計算してみよう。
「二万四千二百円か......」
貯金額と合わせて、十万を越える。
..............え、私頑張ったくない!?!?
我慢することなくグッズが手に入りそうで、浮き足立った気持ちでスマホを抱きしめた。
私の腕の中で押しつぶされて、くぐもったせいで遊星の話が聞こえずらくなり慌てて離す。
グッズの詳細画面に飛び、一つ一つ凝視する。
イラストレーターさんが好みだったのか、遊星ならなんだって好きなのか、全ビジュがイケすぎててどれも厳選できそうにない。
今後のグッズの為に貯金額を半分置いておこうかとも考えたが、まぁ、無理だった。
普通に無理だった。
次は次。
その時までにまたバイト頑張ればいい。
今回のデビューグッズを除いた、初グッズは記念すべきものなのだから全部手に入れなきゃ!!
とりあえず、十万円という大台に乗るため、発売日までにバイト頑張るぞ!!!!
「グッズどれも最高に可愛いから、日常の一部に是非!!!」
グッズの為に高額は投げれないけれど、おめでとうの気持ちを込めて、千円のハピチャを選択した。
【グッズ楽しみです!】
「ハピチャありがとう!グッズ是非是非!!みんな無理のない範囲で買ってね〜」
遊星のこういう配慮が大好きだ。
だからこそ、私が返せる最大の愛を返したい。
※
グッズの発売日である今日は、朝からSNSが騒がしい。
遊星と翔馬は宣伝をしていて、ファンは早く手にしたい!!楽しみ!!と盛り上がっている。
私も今日バイトに行って、無事に十万円の大台に乗るところをこの目で見るのが楽しみだ。
鏡の前で前髪にアイロンを通し、学校にいても浮かないように身なりを整える。
バッグを手に取り、遊星の小さいぬいぐるみが揺れているのを確認して、ローファーに足を通す。
廊下を小走りしている振動が背後から伝わってきて、嫌な予感がした。
「ちょっと、今日美優バイト?」
普段は聞いてこないくせに、このタイミングで聞いてくるあたり、絶対に調べあげている。
遊星のグッズの発売日であることを分かった上で詮索してきているんだろう。
かけられてもいない手錠が自分の手首に見えて嫌になる。
ローファーを履き終わりお母さんを見て微笑む。
少し笑顔が不格好かもしれないが、これでも頑張っているから許して欲しい。
「バイトだよ」
「最近詰め込みすぎじゃない?何かあるの?」
「......欲しいものがあるだけだよ。そんなに心配しなくても大丈夫。借金してる訳でもないでしょ?」
「やっぱりあのイラストを見始めてからよね?前みたいにお友達と遊ばなくなったの」
遊星をイラスト呼びされることへ嫌悪感を覚えながらも、必死に余計なことを言わないように気持ちを抑える。
右手に異常なほど力が入っているのがわかる。
「別に、遊星を見始めたからって訳じゃないよ。元々一人でいる方が好きなだけ」
「でも、中学生の頃とか高校に入ってからも一年生の時はもう少しお友達とお外にいたじゃない」
「そうだけど、私は本当は家で本読んだりしてるほうが落ち着くの。だから、そっちを選んだんだよ」
そこまで言うと、お母さんは口ごもって黙ってしまった。
失望したかな。
お母さんの望みは何となく察してはいたけど、今声に出してはっきりと分かった。
やっぱりお母さんの望み通りには出来ない。
できる限りの笑顔を向けて、「行ってきます」とだけ伝えて家を出た。
お母さんからの返事は何も聞こえてこなかった。
※
「お疲れ様です!」
「美優ちゃんお疲れ!!私も今日はここで上がり!!いぇーい」
嬉しそうに私の隣で伸びをした架純先輩は、なんの躊躇もなく厨房にいる店長に声をかけた。
「店長!お給料まだですか〜!!」
「あぁ、はいはい」
ド直球すぎる架純先輩の言葉に驚きながらも、何も気にしてなさそうな表情で表に出てきた店長にも二重で驚いた。
名前の書かれた封筒が手渡され、架純先輩と二人して掲げて喜ぶ。
呆れたように裏へ戻って行った店長を見つめていると、架純先輩が嬉しそうに声を上げた。
「推しのコンビニくじ引き放題!!!明日朝イチで行くの!!!」
「うわぁ!それはいいですね!!私も今夜推しのグッズ買うんです!!!」
「おぉ!!いいじゃーん!!!」
「ランダム沢山あったので、貯金も全部いっちゃいます!」
「絶対爽快じゃん!」
スタッフルームまで歩きながら盛り上がり、お互いの推しの良さを語る。
架純先輩は、偏見がなく、話しやすい気がする。
バイトの制服から、学校の制服に着替えたことで乱れてしまった前髪を整える。
すると、右隣からものすごく明るい声が聞こえてきた。
「てかさ、私最近ZTuberの翔馬好きになってさ!美優ちゃんの推しって遊星だよね!?」
「え!?そうです!!ZTuberの話出来る友達いないんでなんだか嬉しいです!」
「ハマったら終わる気してんだけど、翔馬の魅力知っちゃったら掛け持ちもありかな〜とか思ったりもしちゃって♡」
突如として同士が登場し、目ん玉が飛び出そうだった。
なるべく人とは関わりたくないのだけれど、遊星の話が出来るなら友達ってのもいいかもしれない。
架純先輩が私と友達になってくれるかは別だけど。
先に着替え終わった私は、ここまで話したのに先に帰るのは気が引けて、架純先輩が着替え終わるまでスマホを弄って待っていることにした。
すると、架純先輩の名案とでも言いたげな明るい声がスタッフルームに響き渡った。
「そーだ!!!今回ランダム多いんだよね!?!?」
「はい......思っていた以上に......ははは」
「ならさ!私も思い切って翔馬のグッズ買うから、お互いの推し出たら交換しない!?」
女神かと思った。
普段から輝いて見える架純先輩が、より光を背負っているみたいだ。
有り難すぎてる提案に思わず架純先輩の手を取った。
「もぉー!!!是非!!!!!有難いです!!!!!!」
「いやいや!推し活は助け合わなくちゃ!!」
「あ!良かったら、デビューグッズ保存用に多く買ってるので翔馬いりますか!?」
「へ!?いいのー!?!?でも、タダは申し訳ないから......」
困り眉でそう言った架純先輩は、給料袋から千円札を取り出した。
「代金はお支払いします!」
「え、いや!全然大丈夫です!!!私が感謝を伝えたいだけなので!!!」
「えー!でも......」
「本当に気にしないでください!!そうだ、もしお時間あったらこれから家に取りに来ますか?」
「なら......お言葉に甘えて!!!時間あるある!!!時間しかないよ〜!!!!」
嬉しそうに声を弾ませる愛嬌増し増しの架純先輩を横目に、お母さんに連絡を入れる。
あ、友達家にあげるとか私初めてかも。
【今から少しだけバイト先のお友達家に上がってもいい?】
【お友達?もちろんいいわよ】
すぐに既読がついたあと、了承のメッセージと、うさぎが幸せそうに笑ったスタンプが送られてきた。
今朝、あんな顔をさせてしまったんだ。
少しくらい安心させられたらいいな。
架純先輩と二人で店長に向かって元気よく挨拶をすると、店長は気だるげに手を振ってくれた。

