正義のヒーローはどこへ征く

 翌週の月曜日から、アキトは不登校になった。
 ずっと僕の部屋に引きこもっている。アキトの両親やユイには今は極力会いたくないらしい。

 僕の母も幼馴染のアキトのことはよく知っている。去年まではアキトの家族に僕がお世話になっていたこともあるから恩返しのように「好きなだけここにいなさい」とアキトに言い、身の回りの世話などは僕にやらせて不必要に干渉はしなかった。

 学校がある僕はいつものように朝起き、母が作ってくれた朝食を摂(と)り。制服に着替えて玄関まで向かう。
 アキトも僕が起きたタイミングで目覚め、隣で一緒に朝食を摂っていた。でも、僕が制服に着替えている間は。ぼんやりと僕を見つめているだけだ。

 玄関まで、アキトはわざわざ見送りに来てくれる。でも、学校には向かわない。本人曰く「なんか、疲れちゃったんだよね」らしい。

「行ってらっしゃい。楽しんできてな」

 そう言って左手で手を振ってくれるアキトに。僕はまた上手い返しが出来ないまま。
 無言で手を振り返せば、アキトは口元を緩ませた。

 *

 アキトが学校に来なくなってから、3日経つ。
「アキトくんが姿を見せなくて心配だ」と囁く声が大半の中「やっとヒーロー気取りがいなくなったか」と伸び伸びしている連中もいた。まあ、もれなくこの前の嫌味を言ってきた青沼くらいしかいないのだけれど。

 何も言わない人たちは……アキトに興味が無いのだろう。変に攻撃してこないからその方が助かるのだけれど。
 僕の日常はアキトがいてもいなくても、そこまで変わらなかった。アキトの代わりにノートを書き写すこともなくなって、少し楽になった。それでも、授業中隣の空いている席をなんとなく何度も見てしまう。

 アキトがいなくても、日常は続いていく。心配していた生徒も、数日経てばだんだんアキトのことを忘れていく。ずっとアキトのことを引きずっているのは、このクラスの中ではきっと僕だけ……。

(なんだか、虚(むな)しいな)

 アキト以外に特に親しい友人がいない僕は、教室の隅の席に座りながら、考える。

 アキトは、命を懸けて妹を守ったのか?
 どうしてアキトは、報われていないのか?
 どうしてアキトが、右腕を失わなければならなかったのか?

 考える。
 授業と授業の合間の休憩時間に。
 お弁当を食べた後の空いた時間に。1人、黙々(もくもく)と。

 アキトが助けたことで、妹のユイは救われたのか?
 兄妹(きょうだい)の溝が深まっているのはなぜ?
 ……ユイへのいじめは、終わったのか?

 ――僕はアキトが目覚めず1ヶ月も入院している間……ユイがどんな思いで学校へ通い続けていたのか、知っているのか?

(何をしていたんだろう、僕は)

 学校帰り、いつもアキトのお見舞いに病院へ行っていた。アキトの両親とはよく顔を合わせていたのに、ユイとは一度も顔を合わせなかった……ということに。僕は今更気づいた。

 放課後、僕はユイがいる教室まで向かい彼女の気持ちを確かめることにした。