「絶対に死なないでね」と、君がそう言ってくれたから。〜未来へ進むため、僕と彼女の一歩目~

「んー!疲れたー」
 水分補給の後、“まだ読めていない本”という誘惑に負けずにテスト勉強ができた。
 昨日買ったばかりのその本を読もうと手を伸ばす。
 ……いや、やめておこう。
 今読んでしまったら、途中でやめられなくなるかもしれない。
 テスト勉強の息抜きなのだ。
 もっと別の……。
「……外、出るか」
 散歩して、気分転換をしよう。
 そう思って、家を出る。
 見慣れた景色が広がっていた。
 同じような家ばかりの住宅街。
 とても大きくて、春には桜が咲く家。
 最近建てられたばかりの家。
 小学生の頃、よく行っていた駄菓子屋。
 色々な場所を通り過ぎて、なんとなく入った公園で、俺は、意外な人物と出会った。
「……たく、や?」
「……漣(れん)くん!」
 公園のベンチに座っていたのは、もう長らく会っていなかった、卓哉(たくや)だった。
「久しぶりだね、漣(れん)くん」
「久しぶり……」
「俺、親父の転勤で引っ越したんだけどさ。こっちに来たくなって、一人で遊びに来たんだ」
「そう、なんだ……」
 まるで、なにもなかったかのように接してくる卓哉(たくや)。
 俺は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「……ここの公園、よく二人で遊びに来たよね。公園に行ったら、慎(しん)くんと、陸人(りくと)くんがいて、四人で遊んだり、お菓子食べたり……」
 本当に懐かしそうに話している。
「……ごめん、卓哉(たくや)」
「謝んないでよ。漣(れん)くんは悪くないでしょ?……俺が勝手にやったことなんだし。漣(れん)くんには止められてたけど、自分がやりたくてやったんだけど」
「でも……」
「そりゃ、漣(れん)くんに無視された時は、悲しかったけどさ。でも、あの後、手紙くれたじゃん?『無視してごめん』って。だから、漣(れん)くんだけは、ずっと友達でいてくれる、って思ったんだよ」
 そんなこと、あっただろうか。
 卓哉(たくや)を裏切った罪悪感しか、俺の中には残っていなかった。
「……転校することになったのは、親父の転勤もあったからだし。まあ、最初は親父だけが向こうに行く予定だったんだけどさ。俺、やっぱり耐えられないかも、って思って、頼んだ。『俺も行きたい』って。……だから、まあ、いじめだけが原因じゃないし、漣(れん)くんのことは、恨んでないから」
 そう言われて、ずっと心に重くのしかかっていたものが、なくなった気がした。
「……ごめん、ほんとに。……俺、卓哉(たくや)に助けてもらったのに」
「だから良いって。俺、漣(れん)くんのこと、大切な友達だって……、親友だって思ってるから」
「……ありがとう、卓哉(たくや)」
 心がすっきりして、その後のテスト勉強は、いつも以上に捗った。