「絶対に死なないでね」と、君がそう言ってくれたから。〜未来へ進むため、僕と彼女の一歩目~

 『阿久津(あくつ)さん
  榊(さかき)です。明日の昼休み、いつもの校舎裏に来てくれませんか?
  もちろん、嫌なら全然、来なくても良いんですけど……』
 ベッドに寝ころびながら打ったメッセージ。
 今日は休みだから、なんとなくのんびりしてしまう。
 友達にメールを送るなんて、久しぶりだった。
 卓哉(たくや)は、いじめのせいで、転校してしまった。
 転校してから、卓哉(たくや)とは、全く連絡をとっていない。
 しかも、メールでのやり取りは、あまりしたことがなかった。
 送信ボタンを押す時、少し手が震えてしまった。
「……はあ」
 返信が来るとは思っていない。
 期待してはいけない。
 俺とは会いたくないかもしれない。
 もしかしたら、勉強が忙しくて、メールに気づいていないかもしれない。
「そうだ……。テスト勉強……」
 もう、期末テストは、すぐ目の前だった。
「……勉強しないと」
 先に少し水分補給をしようと思い、部屋を出る。
 キッチンには、兄貴がいた。
 ジュースを飲んでいる。
「漣(れん)。なんか飲む?」
「……あ、うん。水を……」
「そっか。……ん、どうぞ」
「あ、ありがとう……」
 兄貴は、俺の憧れの存在。
 優しくて、明るくて、頭が良くて、運動もできて、友達も多い。
 俺は、そんな兄貴みたいにはなれない。
「……漣(れん)ってさ、俺のこと、嫌い?」
「え……?なんで……」
「だって、漣(れん)、俺と比べられてばっかりじゃん。それで、嫌な思いもしてるだろうし」
 兄貴は、気づいていたんだ……。
 俺が、兄貴と比べられてばかりで、嫌な思いをしていることに。
「……だから、俺のこと嫌いなのかなーって。ほら、俺が話しかけてもさ、なんか、よそよそしい、っていうのかな。そんな感じだったし」
「ごめん……」
 俺は、兄貴に、ずっと嫌な思いをさせていたのかもしれない。
「……俺、兄貴と比べられるのは嫌だけど、兄貴のことは嫌いじゃないよ」
「そっか。じゃあ、良かった……。……俺、出掛けるわ。またね」
「うん、また……」
 確かに、外出しそうな服装だった。
 バッグをつかんで、玄関に向かう途中で、兄貴は振り返る。
「あ、そうだ」
 俺を見つめて、にこりと笑う。
「なんかあったら、なんでも言えよ。相談、乗ってやるからさ」
「……うん」
 やっぱり、兄貴が、俺の兄で良かった。