「絶対に死なないでね」と、君がそう言ってくれたから。〜未来へ進むため、僕と彼女の一歩目~

 屋上には、すんなり入れた。
 昼休みは、まだある。
 それに、今飛べなくても、まだ放課後がある。
 フェンスに手を掛ける。
 下を見てみる。
 ……コンクリートの道路。
 ここから落ちたら、死ぬんだろうな。
 なんて、他人事のように考える。
 もう、未練なんてなにもない。

『――絶対に死なないでね』

 なんで、今……。
 阿久津(あくつ)の言葉が、頭の中を埋め尽くす。

『……探したよー。全然見つからないから』

『榊(さかき)くんに会いたくて。ほら、昼休みになると、すぐに出て行っちゃうからさ。めっちゃ探した』

『……榊(さかき)くんが、壊れそうだから』

『でも、どうしても気になるから。榊(さかき)のこと』

『……いつか、いなくなっちゃうんじゃないか、って』

 阿久津(あくつ)は、いつも、真っ直ぐ俺を思ってそう言ってくれた。
 クラスの人気者の阿久津(あくつ)が、どうして俺に構うのかは、分からない。

『――絶対に死なないでね』

 フェンスから離れる。
 なぜだろう。
 本気で死のうと思っていたのに……。
 決意が揺らいでしまった。
「……まあ、放課後でも良いか」
 屋上を出る。
 ……阿久津(あくつ)が、あんなこと言わなければ……。