オネエの同級生にスキンケアを叩き込まれています

 なんでこうなった。
 全然掃除をしていない俺の部屋で、日向が物珍しそうに見回しながらリュックを床に置き、ベッドに腰かけた。
「あっ、脱ぎっぱなしのパジャマ」
 日向が持ち上げたパジャマを、俺は素早く奪って椅子に投げた。
「それじゃあ、場所を移動させただけで同じよ?」
 日向が肩を揺らして笑った。
「煩いなあ」
 落ち着かない俺は、ブレザーを脱いで背凭れにかけた。
「この子ったらもう、本当に世話が焼ける」
 日向が立ちあがった。ハンガーラックからハンガーを外し、俺のブレザーをかける。
「ここでいいのよね。ワタシのもかけさせてもらうわよ」
 日向もブレザーを脱いだ。
 シャツだけになると、肩幅の広さがよくわかる。
 日向もブレザーをかけると、立ったままの俺の腕を掴んで、ベッドに座った。
 行き場所がなくて、俺もベッドに座る。
「この広さなら、男二人でも寝れるわね。ちょっと試しに横になってみましょうか」
 さっさと俺のベッドに横たわった日向が、俺を手招きした。
 やることもない俺は、渋々日向の隣で横になった。
 友達を家に連れて来たのは、いつ振りだろう。小学五年生の頃だったかな。あの頃の遊んでいた連中とは、習い事だったり、クラスが違ったりと、中学に上がってから次第に疎遠となった。
 だから、買い物から帰ってきた母さんが、日向を見た途端、「夕食を食べていきなさいよ」となり、「食べるんだったら泊れば」と、旭兄が余計な一言を付け加えて、今に至る。
「自分のおウチなのに、何緊張してるの?」
「緊張してないし」
「じゃあ、これは何よ」
 日向の手が俺の首へと伸びてきて、俺はビクッとした。
 今は、加藤に犯されかけて触れられた部分に、誰も触れさせたくない。
 あの時からずっと、俺は汚いから……。
 汚れてしまったから……。
 加藤と再会して、それを思いだしてしまったから……。
「何って何が?」
 俺は日向の両手の前に、手を広げて進むのを防いだ。
 けど、日向の手は簡単に突破してきて、俺は目をギュッと閉じた。
「大丈夫よ。食べちゃったりしないから目を開けて」
 言いながら、日向の手が俺の襟元に触れ、俺のネクタイをスルリと外した。
「これが緊張している証拠。普通、家に帰ったら、ブレザーと一緒に外すでしょう。お菓子も全然食べてなかったし、今日はもう疲れた?」
 日向は俺のボタンを一個だけ外すと、仰向けになった。
 俺も仰向けになった。
 片側の腕の側面が、日向に触れていて熱い。
「ご飯が出来たら呼んでくれるって言ってたし、ユウは少し寝たら?」
 日向が上体を起こして、俺の頭をそっと撫でた。
「日向は?」
「さっき、始さんがスウェットを貸してくれるって言ったから、今、借りてくるわ。あと、試供品でいいから化粧水とかあれば頂きたいし、近くにコンビニがあるなら下着とか欲しいなって。ちょっと下でお話してくるわ」
 日向が両腕を俺の顔の横についた。
「じゃあ、ゆっくり寝ててね」
 そのまま俺を跨いでベッドを降りると、日向は俺の部屋から出ていった。
 俺は知らず知らず詰めていた息を吐いた。
 どうして、このタイミングで日向が泊まるんだよ。
 洋服の上からだって、こんな汚い体に触れてほしくないのに……。
「最悪だ」
 俺は呟いて、引っ張った掛布団を抱きしめ、そこに顔を埋めた。