《SIDE 久礼日向》
「お前、いつまで勇にその喋り方を続けるの?」
冨塚さんに訊かれた時、
「まだ当分続けます」
スラッと答えたものの、一生かもしれないと思うことがよくある。
オネエ言葉になれたユウに、本当の喋えり方をしたら怖がられるだろうし、両想いなのに壁が出来てしまう気がした。
ユウは同級生の男に襲われたってことで、未だに男性不信なところがある。
それに、ユウがすぐ俺に心を開いてくれたのは、俺をオネエと誤解したからだ。
男性らしさはなるべく封印しているからこそ、ユウが甘えてくれているとしたら……。
俺の一番はいつだってユウだ。
ユウのためなら、言葉遣いを一生偽っても構わない。
どうせ、仕事中は一部の気心知れた人たち以外には一生オネエ言葉を遣うから、さして難しい話ではない。
そんなささいなことよりも、重大な問題はいくつもある。
例えば、仕事と恋愛の両立だ。
メイクアップアーティストは俺の夢だけれど、長期休暇になると一週間以上会えないなんてことも出てくるだろう。
いくら通信機器が発達していようと、ナマモノに勝るものはない。
他にも重大な問題が……。
ユウは旭たちが俺たちの関係を知っていることを知らない。
ユウが俺たちの関係を告白しても、旭たちは知らなかった振りを通すと言っているが……。
ユウとイチャイチャできる数少ない放課後のおウチデートを、毎回邪魔されるのだけは苦行すぎる。
ユウの歩幅に合わせて、ユウの気持ちが落ち着いた時に、すべてがユウファーストだけれど、ユウ摂取不足になりやすいのが難点だ。
何より一番の問題は、恋をしたユウが日に日に可愛さを増し、綺麗さもでてきたことだろう。
加藤みたいなヤツらに目をつけられないか、心配でたまらない。
まだ、可愛くなることに抵抗があったユウだけれど、少しずつスキンケアをさせてくれるようになった。
けれど、覚える気はないようだ。
無防備なユウが愛らしすぎて、キスしたくなるのを我慢してのスキンケアは拷問に近い。
本格的な夏が来る前には、化粧水と乳液、それと日焼け止めを徹底させたいが、ユウは自分でやるよりも俺に全部やってもらうのが好きみたいで、覚えさせても一人でやってくれるか疑問だ。
本当に大切なモノに出会えたから、価値観が変わった。
ユウと出会えて、ユウと両想いになって、俺は自分の我慢の限界の低さを知った。
ユウだけが俺を狂わせる。
絶対にユウを幸せにする。
それを念頭に、今日も俺は行動する。
俺は今、最高に幸せで、まあまあ欲求不満だ。
END

