おもちゃ箱に恋をした!?いえこれは断じて恋ではありません!

「落研ってなに?」
食べ終わったお弁当を片付けながら、津田が聞いてきた。
今日は天気がいいから、教室で食べてるのは、僕らと、後一組くらい。
春の気持ちいい風が、カーテンを揺らす音が聞こえてくる。

「落語研究会。っていっても別に何も研究してないけど」
「じゃあ何してるんだ?」
田中は3つ目の、菓子パンを頬張りながら聞いてきた。絶対、カロリー取り過ぎだろ。

「何って?何も…2人いる先輩は、落語をBGMに将棋をさしてる」
「温は?」
箱星が、僕の筆箱の中に、可愛いオウムの消しゴムを、追加しながら聞いてきた。
「また、くれるの?」
「うん、好きでしょ?」
「うん、かわいい」
僕らは目が合ったまま、目をそらせずにいた。
僕は、箱星のまつげが長くて、その綺麗さに、見惚れていた。
田中が、僕らの顔の間で指を鳴らす。
パチン!
僕らは我に返って動き出す。
「お二人さん、現実に戻った?それで草壁は何してるの?」

「あっ、僕は、お笑いのYouTubeみたり」
「なにそれー楽しそう。俺らなんか、25度を超える暑さの中、走り回ってるてゆーのに。なっ津田」
「そうだね。YouTubeは羨ましすぎ」
「ズルいぞ、ズルいぞ!」
と、田中が、責めてくる。
「僕は別にYouTube見るために、入ったわけじゃなくて。」
「サッカー部って、めちゃくちゃ大変なんだぞ〜ズルいな」
子供みたいな、田中に、箱星は
「田中、ズルいズルいって、うるさい。あと、話がごちゃごちゃだし。」
「ごちゃごちゃって?」

「田中はサッカー部に、なんで入ったの?」
「それは、運動部の方が、内申がいいって聞いて」
「で、実際、どうなの?」
「OBは、良かったって言ってるけど」
「じゃあ、それでオッケーじゃん」
「だけど暑いし、大変だし、草壁はいいなって」
「田中は、暑くない部活を選んだわけでもなく、大変じゃない部活を選んだわけでもなく、楽しそうな部活を選んだわけでもない。内申がいい部活を選んだんだろ」
田中の思考が止まってるのが顔を見ればわかる。
「つまり?」

「だから、田中の部活は暑いし大変だし、楽しくもない。だけど内申はいい。それが全て。それを田中が選んだんだ」
「えー、暑いし大変だし、楽しくもない部活を選んだつもり無いよ。なっ津田」
「でも、なんか納得」
フリーズしてた津田は箱星の話に、大きく頷いた。
「津田、箱星に言いくるめられるなよ」
僕は田中に
「言いくるめるって、人聞き悪すぎ」
とツッコんだ。

田中と津田は、あーだこーだと言いながら、自動販売機に、ジュースを買いに行った。
箱星ってやっぱり僕らとは違うステージにいる…冷静で大人で。
そう思いながら、隣にいる箱星に目をやると、僕の筆箱の中の消しゴムを並べている。
ウサギにペンギンに熊に、モルモット。オウムに…ずいぶん増えたな。一生懸命並べている箱星、そのギャップがズルいってー。

箱星から目を離せずにいると、急に顔をあげた箱星が
「もう少し、そのまま、俺だけを見ててよ」
と言った。
「えっ」
僕は、どうしていいか分からず、教室中に視線を泳がせた。