おもちゃ箱に恋をした!?いえこれは断じて恋ではありません!

「今日から、また部活かぁ」
放課後
後ろの席で、田中が、机に倒れ込むのがわかった。
僕は振り返り
「田中って何部?」
と、今更な質問をした。
「サッカー」
「えーっ、サッカー部…」
「その、点点点はどういう意味だよー。そりゃサッカーは、爽やかイケメンのスポーツって知ってますよ。知ってますけど、他にできることが、無いんだから仕方ないじゃん」
「そんな、卑屈にならなくても。昔からやってたなら、堂々と」
「どうしたの?」
帰る準備を終えた津田が、合流する。

「津田ー。俺と津田は、サッカー顔じゃないけど、一生懸命、サッカーやってるよなぁ」
と、大袈裟に津田に抱きつきながら、泣くふりをする田中。
「だから、僕は一生懸命やってない、なんて言ってないよ」
ゆっくりと、近づいてきた箱星が僕の隣に立ち、
「だけど、2人ともサッカー部ぽくは、ないよな」
と余計な一言を言った。

箱星!僕は箱星に、しーっと人差し指をたてた。
大袈裟に暗い表情の、小芝居を入れる2人。
これは、芝居にのっかって、2人の表情を明るくしないと。

「田中、津田。僕は昔からサッカーをしてる2人を、サッカーが好きな2人を、否定してるわけじゃなくて。むしろ、練習が大変な運動部に入ってる、そんな2人を尊敬してるし、応援したいと思ってる」
田中は、津田から離れ、感慨深そうに
「草壁、ありがとう」
と、小刻みに頷きながら言った。
芝居が大袈裟すぎ。
津田も、流れてもいない涙をぬぐった。そして
「ごめん、話が終わったところ」
「なに?」
「俺も田中も、サッカー初心者だから」
「えー?」
僕は、つい箱星をみた。
箱星の頭の上にもハテナマークが出ている。
「高校からサッカーを始めたんだ」
と、爽やかに言う津田
「うん、別に、小さい頃からやってたなんて、一言も言ってない」
と、棒読みの田中
「だってー、サッカーしか出来ること無いって」
「うん。中学の体育で、サッカーとバレーとバスケを経験した。サッカー以外、突き指とディフェンスに吹き飛ばされた。という記憶しかない」
「うん、サッカーでケガした記憶は無い」
田中と、津田の謎の笑み
「それを、出来るに入れてるの?体育でしたことは、経験したとは言わないよ」
僕は、呆れてしまった。
だけど箱星は
「で、どうなの?実際のサッカー部は?大丈夫なの?」
と2人を心配している。

そうか、そうだよな。
2人がサッカーを楽しめてる感じは…しない?たしか、鮫島もサッカー部だし。
なのに田中はトンチンカンな答え。
「ケガはしてないよ。そもそもまだ、ボールを蹴らせて、もらえてないし」
「そうじゃ無くて。ウチのサッカー部って、県大会でベスト4とかに入る強豪だろ?」
「そうだよ、スゴイだろ」
「なんで、田中が自慢顔、出来るんだよ!サッカー部入って、まだ、1ヶ月だろ」
「でも、その、ベスト4の一員って凄くない?」
「凄くない」
と僕は言い切った。
箱星も
「自分で勝ち得た記録以外、価値はない」
とサラリと言った。

さすが!こう言うことを、当たり前の様に、言える箱星は、僕らとは生きてるステージが違う。
「だけど、ベスト4って」
まだ、拘る田中に

「ベスト4なんてどうでもよくて。大丈夫なのか?って聞いてんの?ウザがられたり、イジられたり、パシリにされてり、してねーのかって聞いてんの!」
箱星…めっちゃ心配してくれてるじゃん。

「そうそう、サッカー未経験の、サッカー顔じゃない2人は、サッカー部で浮いてませんか?ウザがられて、パシらされて、部室の掃除を押し付けられて、顧問からも無視されて、挙句の果てには、2人だけ部費が倍増して、その部費で、みんなは焼肉行って」
「サッカー顔じゃないだけで、俺らそんな扱い受けるの?」
田中と津田の不安な顔
「いや、可能性の話だから」
「分かってるよ!可能性の話だって。サッカー顔じゃないってだけで、俺らに、そんな可能性があるの?」
「無い。あったら絶対イヤだ」
「どっちだよ!」
「それはこっちのセリフだよ!あんのかよ、無いなら無いってハッキリ言ってくれないと心配じゃん…マジで」
僕は、真面目に田中と津田の顔をみた。
箱星も2人の答えを待っている。
田中と、津田はお互いの顔を一瞬みたが、どちらとも答えない。
つまり、少しは嫌な思いをさせられてる…ってことだよな…
箱星は、僕の手を引いて
「よし!挨拶に行こう」
と言った。
「どこに?」
「サッカー部に決まってるじゃん!ウチの田中と津田をよろしくお願いします!って」

「箱星…それって」
それって、めっちゃ、2人を大切に思ってるじゃん。
僕と同じくらい、箱星も田中と津田を大切に思ってくれてるってことが嬉しい。
田中と津田は啞然としている。

「行くぞー田中!津田!走れー」
箱星は僕の手を引いて走り出す。
いつかの日みたいに、その後を田中と津田が追いかけてくる。僕は箱星の背中に
「ありがとう」
と言った。
箱星は振り返って
「心配すんな!全力で守るから。俺らの大切な奴らだろ」
と言ってくれた。
僕は、この頼もし過ぎる背中に、頼れる幸せを噛み締めていた。