おもちゃ箱に恋をした!?いえこれは断じて恋ではありません!

「どうだった?」
テストが終わった途端、後ろから背中をツンツンされる。
僕は、帰りの準備をしながら現状報告

「多分、今の現国は、70無い…ヤベー」
「心配するな!俺は、50も無い…ヤベー」
と、大袈裟に田中は、机に倒れ込んだ。
「大丈夫かぁっ」
僕も大袈裟に、田中の肩を揺する。
こんなどうでもいい、小芝居に、幸せを感じる。

「どうしたの?田中」
津田が合流。これでまた、小芝居が長くなるな。

「津田、俺は学力という現代のモノサシにやられたぁ、だけど信じてくれ!世が世なら俺は、俺は…」
「俺は?」
津田が、合いの手を入れる。
「もっと歌舞いてたからな」
と、斜め上に視線をおくる田中。
「何それ?意味わかんない」
僕は、この話をスパッと止めた。
だけど田中は、止まらない。

「江戸時代だったら、歌舞伎役者になれるほど、キャーキャー言われる容姿ってこと。俺って、ちょんまげ似合いそうだろ?」
「そう?」
「昔から言われるんだよ!古い顔って。なっ津田」
「中学の美術の先生に、かつら被って、絵のモデルになって欲しいって、お願いされてたもんね」
「そーそー、先生も認める古顔よ。江戸時代だったら、80点はあったな。この顔」
「自分で言うなよ!それに今は令和」
僕は、陶酔してる田中を、現実に戻した。

「令和かぁー」
机に再び倒れ込みながら、田中は、3列向こうの一軍集団に目をやった。
「鮫島って、自分がカッコいいの自覚し過ぎだよな…80点なのに」
肩までかかる髪の毛をかきあげながら、一軍女子の机に腰かけている、鮫島が目に入る。
いやいや、鮫島に食ってかかるなんて…
「そうかぁ?」
僕は、誤魔化した。
この会話は、多分、聞こえてない。
でも僕たちは、一軍に目をつけられている。
箱星を取ったから…だ?
いや、別に箱星は物じゃない。取るも何も、無いんだけど…

箱星はその容姿で、学校一目立つ存在。
その箱星がいるグループの価値は、なぜか上がるらしく…地味な僕らの価値も上がっているらしい。

つまり、上がるグループがあれば、下がるグループもある。
鮫島率いる、ウチのクラスの一軍は、他のクラスの一軍より、価値が低いらしい。
価値ってなんだ?
自分の価値が上がってる実感は、全く無いけど…とか言いたいことは盛りだくさんだが、この話は、かなりデリケート。
だから僕はこの件については、気づかないフリをしている。
だから、田中!
鮫島には触れるな!
 
「俺だって80点なのに…」
「江戸時代だったらね」
と津田が、たしなめるけど
「それも、確証無いだろ」
田中は、僕のツッコミを無視して話を続ける。
いつものことだ。

「その点、我ら箱星は、1億点なのに、その自覚ないよな」
「我らって」
僕は、軽く笑いながら、箱星を探した。
あれ?まだ、いない…テスト終わり、教室を出るのは見たけど…
廊下から、帰宅する生徒に逆流して、戻ってくる箱星が見えた。
田中は早速、
「よっ、1億点男!」
と声をかけた。
まだ、教室に残っている、10数人の注目を全て集めながら、
「なんだよ」
と、不服そうな箱星が、僕らの所にやってくる。

「ねっ、なんだろう…。廊下になんかあった?」
とにかく、僕らに集まってる、クラスメイトの視線を散らしたくて、よくわからない質問を、箱星にしてしまった。
「別に…ただトイレ」
「あー…」
だよね。
鮫島含む、一軍の視線が痛い…

「箱星、1億点を集めてる気持ちって、どんなの?」
「温、田中は、なんの話してるの?」
眉間にシワを寄せた箱星が、僕を見る。

「箱星が…カッコいいって話」
僕は、箱星に、直接、カッコいいと伝える恥ずかしさに負け、うつむく。
箱星は、両手をブラブラさせて、ふーんと言った。
照れてる?

「そうそう、鮫島は80点で、あんなに、俺ってカッコいいだろ、を意識してるのに、1億点の箱星は何でしてないのかなーって」
デカい田中の声。
僕は、田中の声が鮫島に届いてないか?ヒヤヒヤしながら、視界の隅に鮫島を入れた。
多分、聞こえてない。
この後、カラオケに行く話をしているらしい。

箱星は、僕の机にもたれて、
「別に俺は、その他大勢からの1億点?なんていらないから」
田中は大袈裟に
「その他大勢って!全校生徒から、どう思われてもいいってことかよ!潔よすぎ」
と、パパンパンと机を叩いた。
なんのリズム?

箱星は田中のリアクションに微笑みながら
「ううん、全校生徒じゃなくて、地球80億人の評価がいらない」
と僕を見つめた。
「俺は1点でいい。たった一人、温からの評価が欲しい」
えっ、僕からの、評価?…評価ってなんの?
だから、近いっ
「あっ、もちろん、、箱星は、、箱星は、いいよ。とにかく、いい」

「ありがと」
でたっ!ニコッっからのキラキラオーラ
だからドキドキしちゃうって!!

パチン!パチン!
と、田中は、僕と箱星の間で指を鳴らした。

「仲良しなのは分かりましたぁ」
と、この場をまとめた。
まとまったかぁ?てゆーか何の話してたっけ(笑)