「どうした?」
と、田中が僕の携帯画面を覗き込む
遊との、一旦の別れまで後78日
僕は、朝からカレンダーを数えていた。
「おはよ!なに?カレンダー?文化祭も終わったし、次は球技大会、そして期末テスト、そして終業式だな」
「うん、そうだね。まだまだある。よね」
田中は不思議そうに
「何まで?」
「何でもない。ちょっとトイレ」
僕は、溢れる涙をこらえながら、トイレに駆け込んだ。
まだまだある。
78ってめちゃ多いよ。
普通の数字の感覚なら。
だけど、なのに、涙が止まらない。
「おはよ!あれ?昨日も目が赤かったけど、今日も」
津田に見抜かれる。
毎朝、カレンダーを数えて泣いているなんて、バカだよ僕は。
「そう?大丈夫だけど」
誤魔化せてない。津田はきっと気づいてる。
「おは!おは!おは!」
脳天気、田中登場!
「お前ら見た?」
僕は津田と目を合わせ、首をかしげる。
「掲示板に、文化祭の集客ランキング貼り出されてて、なんと1位は…ジャン!落研でした。キラキラキラ」
と手を僕の周りで振る。
津田も田中のマネをしてキラキラキラと、してくれる
「あっ、それはどうも。ありがと」
「なんだよーテンション低いな」
「最近元気ないよなー。草壁。なっ、津田?」
「そうだね。そっとしておくタイミングかもね」
「なんで?」
「なんでって…」
津田は僕に同意を求める視線。
僕が言うの?
遊と別れるカウントダウンをしてて、毎日落ち込んでます、って。自分で言うの変じゃない?
僕は、津田の目に、その気持ちをテレパシーで送った。
「なに、見つめ合ってんだよー」
と、田中が、指を鳴らした。
昼食
「俺らって男子校?」
田中の問に
3人で辺りを見渡す。
僕が代表して
「いや、いるよ。女子はたくさん」
と伝え、もう一度、お弁当に目をやると
田中はまた
「俺らって、なんで女子と喋ってないの?」
津田も僕も
「なんでかな」
と流した。
そして、3人で遊をみる。
遊は、カフェで出てくる様な、カラフルな具沢山のサンドイッチを頬張りながら…ってあれ?コンビニのおにぎりじゃない。
僕らの視線を受け止めた遊は
「なに?」
と怪訝な顔
田中は
「箱星は、なんで女子と喋ってるの?」
遊は、僕らを見ながら
「俺、喋ってる?」
「喋ってないの?」
「…喋ってない」
「嘘つくなよ!喋ってるよ」
「なんだよ!その誘導」
「箱星は、喋りかけられてるし、呼び止められてるし、告られてるし」
田中の告られてるしに、僕の心臓はピキッと痛む
遊がモテるのには、もう慣れたつもりなのに、いつも告白の噂を聞くと、心臓がピキッとなる。
遊に直接聞けばいいのに、いつも怖くて、何も聞けない。
付き合うことになった。
そう言われたらどうしようって。
「嘘ついてねーよ」
「嘘だね!2組の沢村彩奈に告られたって、聞きました」
「田中、声が大きいよー」
僕はクラスのみんなに、苦笑いで会釈した。
遊は、いつもの通り、自分の噂話に興味がないようで、僕のお弁当に人参のグラッセをいれた。
「好きでしょ?」
「ありがと。あっ、お母さん帰ってきたんだね」
僕はグラッセやサンドイッチを指差した。
「あぁ、後2ヶ月も無いから、こっちでの手続きとか色々あるし。」
遊は僕に気まずそうに
「ルンルンで準備してるよ!ほんとに、人の気も知らないで」
僕は、その遊の、態度だけで十分
遊が行きたくないって空気を出してくれるだけで、僕は遊の背中を、押してあげられる
「そんなこと言わないで。親孝行のつもりで、付き合ってあげな」
「そうそう、沢村さんとも付き合ってあげな」
「田中うるさい」
遊の迫力にビクっとなる田中
「はいっ。静かにしまーす…親孝行かぁ…俺もしてないなぁ」
「静かにしてないじゃん。あと俺もって。遊は親孝行してるし、僕もいつもしてるから」
「なにしてる〜?」
口をとがらせ、変な節をつけた話し方で、こちらを挑発する田中
「だから何って…自分で食べた食器は、自分でシンクに持って行くとか」
「小学生か!」
「洗濯が終わって畳んでくれた自分の服は、自分で片付けるとか」
「小学生!」
「あっ、お風呂掃除!」
「小学生だよ」
「津田は?」
田中は僕に見切りをつけて、津田にふる
遊は、微笑ましくその様子を見ている
「う〜ん…お手伝いさんのお手伝いをすることが親孝行になる?」
「ならん!」
「津田んちってお手伝いさんいるの?」
「うん、2人だけだけど」
「普通は、1人もいないから」
「親孝行?田中と仲良くなったこと、かな」
「なにそれ?」
黙る田中、照れてる?
「田中ってこんな感じで、ウチのこと色々なところで、話してくれるから、マジてお店のお客さん増えたし、変な家?怖いかも…って思われてたのが、田中のお陰で、ただの変な家でご近所さんに認識してもらえた」
「ポジティブシンキング」
「前向きだね」
僕と遊は、同時に感想を言った。
「お前ら、津田を馬鹿にするなよ」
と田中は津田と肩を組んだ。
「別に津田のことはぁ、馬鹿にしないよ。」
「津田のことはぁ。って含みのある言い方だな箱星」
「含んでねーよ」
「含んでますー」
「どうでもいいよー」
2人をなだめながら、4人で笑い合う。こんなバカ話も、後少しか…と思うと、悲しみが胸をよぎった。
「どこ行くの?」
遊にいきなり手首をつかまれた。
「えっ?トイレだけど」
「あっごめん」
「うん」
どうしたんだろう?最近の遊は、少しおかしい
昨日も、部室を出るのが5分遅れただけで
携帯に着信が3度もあった。
「入れ違いで、先に帰ったかと思った」
本気で焦る遊を、初めて見た気がした。
今日のお昼だって
たまたま、お弁当の無い僕が、購買に行こうとしたら
「俺も」
って、買うもの無いのに付いてくるし
「どういうことだ?」
「何が?」
トイレから出たところで独り言を田中に聞かれた。
「いや、最近の遊ってちょっと近いってゆーか」
「そう?前から激近だよ。これ以上、近くなったら、お前ら重なるけど」
ニタニタする田中を
「真面目にー」
と睨んだ。
「田中に真面目を求めちゃダメだよ」
後ろから津田が、田中と僕の間に入ってきた。
「そうなんだけど」
「おい!俺だって真面目に考えてることくらいあるぞ」
「「例えば?」」
2人に詰められ、タジタジの田中は、絞り出すように
「昨日の夜は」
「夜は?」
「狛犬について考えてた」
さっそく、怪しい
「狛犬って犬じゃん。なのに、ウチの近所ライオンなんだよ!」
「…田中とは、真面目な話は、出来ないんだよな」
「草壁が真面目な話しろって言うからしたのに、その言い方は納得いかねー」
「なんで、狛犬はライオンだ!が真面目な話なんだよ。ライオンってカタカナじゃん」
「カタカナ禁止なんてルール聞いてません」
こうしていつの間にか、遊の話じゃなくなった。
でも僕なりに、授業中も遊の背中を見ながら、遊の気持ちを考えてみた。
もしかして…
「遊、今日は、ちょっと公園へ寄ってから帰ろう」
2人で公園でブランコを漕ぐ
数人いる小学生たちは、シーソーに集まってゲームをしている。
遊の小学生の頃は、どんな子供だったんだろう。
小学生の頃に会えていたら、僕達は、どうなっていただろう…
珍しく、遊から会話が始まらない
「遊、大丈夫?」
「えっ?」
「僕、遊がアメリカに行くって聞いて、自分のことしか考えれてなかった。だけど、遊の気持ちになったら、もしかして…寂しいのかなって。不安なのかなぁって。ごめん、今更だよね。だけど心配になってて」
「ありがと。大丈夫、大丈夫だったんだ。だけど、後1ヶ月って思った瞬間、怖くなった。英語は苦手じゃ無いけど、教科書と日常会話じゃ全然違うし、アジア人だし、(差別)無いとは思うけど、絶対かは分からない。自分で決めたことなのに、温には気持ちの整理つけてもらったのに、実は俺は、この状況に、全然追いつけてなくて。
温に会えなくなる、温に触れられなくなる、温と話せなくなる、温に…考え出したらきり無くて、寂しくて悲しくて、不安で、怖くて。」
僕は思いっ切りブランコをこいだ
こいで、こいで、こいで
「バカヤロー」
と大声で叫んだ
隣で遊も、思いっ切りこぎ出すのが分かった。
僕は、モヤモヤを吐き出す。僕が吐き出せば、きっと遊も吐き出せる。
僕はもう一度
「バカヤロー」
と叫んだ
ギコギコ錆びたブランコの音と共に遊の声で
「バカヤロー」
と聞こえた
僕は思いっ切りこぐ
「ありえねー」
遊も思いっ切りこぐ
「ありえねー」
僕は空に向かって、足をあげて
「マジでー」
と叫ぶ。
「あぁ〜〜」
お尻が、ずり落ちて尻もちを着いた僕に遊が
「大丈夫?」
と、すぐにブランコから降りて、寄り添ってくれる
目が合った瞬間、
2人で、吹き出してしまった。
「あースッキリした」
「ほんと?」
「かなり。ありがと、温」
「僕は何にも」
「最後、すっ転んで、笑わせてくれたじゃん」
「それは…狙ったわけじゃないし」
僕は、少し情けない気持ち。
「温はいいよ。やっぱり温はいい」
「何だよそれ」
僕は照れ隠しに、お尻の砂を払いながら、立ち上がった。
「遊もいいよ、やっぱりいい」
「何だよそれぇ」
遊もズボンの砂を払いながら、立ち上がる。
「だって、遊は正直だから。いつも。その強さが、箱星遊って感じがする」
「強くないよ、ホントに。だから、今更、ぐちゃぐちゃになって…」
「ぐちゃぐちゃになってるって、ちゃんとわかってるじゃん!そこから、逃げない、遊がカッコいいんだよ」
「…今日は、めちゃくちゃ褒めてくれるじゃん」
遊は照れながら、もう一度ブランコに座った
「だって、カッコいいんだもーん。遊はぁ」
僕は、自分の気持ちを、堂々言えて、嬉しかった。
「温、どっちが、遠くまで靴を飛ばせるか?やる?」
「いいよ、絶対勝つ」
僕らは、子供みたいに遊んだ。
夜が二人を分かつまで。
と、田中が僕の携帯画面を覗き込む
遊との、一旦の別れまで後78日
僕は、朝からカレンダーを数えていた。
「おはよ!なに?カレンダー?文化祭も終わったし、次は球技大会、そして期末テスト、そして終業式だな」
「うん、そうだね。まだまだある。よね」
田中は不思議そうに
「何まで?」
「何でもない。ちょっとトイレ」
僕は、溢れる涙をこらえながら、トイレに駆け込んだ。
まだまだある。
78ってめちゃ多いよ。
普通の数字の感覚なら。
だけど、なのに、涙が止まらない。
「おはよ!あれ?昨日も目が赤かったけど、今日も」
津田に見抜かれる。
毎朝、カレンダーを数えて泣いているなんて、バカだよ僕は。
「そう?大丈夫だけど」
誤魔化せてない。津田はきっと気づいてる。
「おは!おは!おは!」
脳天気、田中登場!
「お前ら見た?」
僕は津田と目を合わせ、首をかしげる。
「掲示板に、文化祭の集客ランキング貼り出されてて、なんと1位は…ジャン!落研でした。キラキラキラ」
と手を僕の周りで振る。
津田も田中のマネをしてキラキラキラと、してくれる
「あっ、それはどうも。ありがと」
「なんだよーテンション低いな」
「最近元気ないよなー。草壁。なっ、津田?」
「そうだね。そっとしておくタイミングかもね」
「なんで?」
「なんでって…」
津田は僕に同意を求める視線。
僕が言うの?
遊と別れるカウントダウンをしてて、毎日落ち込んでます、って。自分で言うの変じゃない?
僕は、津田の目に、その気持ちをテレパシーで送った。
「なに、見つめ合ってんだよー」
と、田中が、指を鳴らした。
昼食
「俺らって男子校?」
田中の問に
3人で辺りを見渡す。
僕が代表して
「いや、いるよ。女子はたくさん」
と伝え、もう一度、お弁当に目をやると
田中はまた
「俺らって、なんで女子と喋ってないの?」
津田も僕も
「なんでかな」
と流した。
そして、3人で遊をみる。
遊は、カフェで出てくる様な、カラフルな具沢山のサンドイッチを頬張りながら…ってあれ?コンビニのおにぎりじゃない。
僕らの視線を受け止めた遊は
「なに?」
と怪訝な顔
田中は
「箱星は、なんで女子と喋ってるの?」
遊は、僕らを見ながら
「俺、喋ってる?」
「喋ってないの?」
「…喋ってない」
「嘘つくなよ!喋ってるよ」
「なんだよ!その誘導」
「箱星は、喋りかけられてるし、呼び止められてるし、告られてるし」
田中の告られてるしに、僕の心臓はピキッと痛む
遊がモテるのには、もう慣れたつもりなのに、いつも告白の噂を聞くと、心臓がピキッとなる。
遊に直接聞けばいいのに、いつも怖くて、何も聞けない。
付き合うことになった。
そう言われたらどうしようって。
「嘘ついてねーよ」
「嘘だね!2組の沢村彩奈に告られたって、聞きました」
「田中、声が大きいよー」
僕はクラスのみんなに、苦笑いで会釈した。
遊は、いつもの通り、自分の噂話に興味がないようで、僕のお弁当に人参のグラッセをいれた。
「好きでしょ?」
「ありがと。あっ、お母さん帰ってきたんだね」
僕はグラッセやサンドイッチを指差した。
「あぁ、後2ヶ月も無いから、こっちでの手続きとか色々あるし。」
遊は僕に気まずそうに
「ルンルンで準備してるよ!ほんとに、人の気も知らないで」
僕は、その遊の、態度だけで十分
遊が行きたくないって空気を出してくれるだけで、僕は遊の背中を、押してあげられる
「そんなこと言わないで。親孝行のつもりで、付き合ってあげな」
「そうそう、沢村さんとも付き合ってあげな」
「田中うるさい」
遊の迫力にビクっとなる田中
「はいっ。静かにしまーす…親孝行かぁ…俺もしてないなぁ」
「静かにしてないじゃん。あと俺もって。遊は親孝行してるし、僕もいつもしてるから」
「なにしてる〜?」
口をとがらせ、変な節をつけた話し方で、こちらを挑発する田中
「だから何って…自分で食べた食器は、自分でシンクに持って行くとか」
「小学生か!」
「洗濯が終わって畳んでくれた自分の服は、自分で片付けるとか」
「小学生!」
「あっ、お風呂掃除!」
「小学生だよ」
「津田は?」
田中は僕に見切りをつけて、津田にふる
遊は、微笑ましくその様子を見ている
「う〜ん…お手伝いさんのお手伝いをすることが親孝行になる?」
「ならん!」
「津田んちってお手伝いさんいるの?」
「うん、2人だけだけど」
「普通は、1人もいないから」
「親孝行?田中と仲良くなったこと、かな」
「なにそれ?」
黙る田中、照れてる?
「田中ってこんな感じで、ウチのこと色々なところで、話してくれるから、マジてお店のお客さん増えたし、変な家?怖いかも…って思われてたのが、田中のお陰で、ただの変な家でご近所さんに認識してもらえた」
「ポジティブシンキング」
「前向きだね」
僕と遊は、同時に感想を言った。
「お前ら、津田を馬鹿にするなよ」
と田中は津田と肩を組んだ。
「別に津田のことはぁ、馬鹿にしないよ。」
「津田のことはぁ。って含みのある言い方だな箱星」
「含んでねーよ」
「含んでますー」
「どうでもいいよー」
2人をなだめながら、4人で笑い合う。こんなバカ話も、後少しか…と思うと、悲しみが胸をよぎった。
「どこ行くの?」
遊にいきなり手首をつかまれた。
「えっ?トイレだけど」
「あっごめん」
「うん」
どうしたんだろう?最近の遊は、少しおかしい
昨日も、部室を出るのが5分遅れただけで
携帯に着信が3度もあった。
「入れ違いで、先に帰ったかと思った」
本気で焦る遊を、初めて見た気がした。
今日のお昼だって
たまたま、お弁当の無い僕が、購買に行こうとしたら
「俺も」
って、買うもの無いのに付いてくるし
「どういうことだ?」
「何が?」
トイレから出たところで独り言を田中に聞かれた。
「いや、最近の遊ってちょっと近いってゆーか」
「そう?前から激近だよ。これ以上、近くなったら、お前ら重なるけど」
ニタニタする田中を
「真面目にー」
と睨んだ。
「田中に真面目を求めちゃダメだよ」
後ろから津田が、田中と僕の間に入ってきた。
「そうなんだけど」
「おい!俺だって真面目に考えてることくらいあるぞ」
「「例えば?」」
2人に詰められ、タジタジの田中は、絞り出すように
「昨日の夜は」
「夜は?」
「狛犬について考えてた」
さっそく、怪しい
「狛犬って犬じゃん。なのに、ウチの近所ライオンなんだよ!」
「…田中とは、真面目な話は、出来ないんだよな」
「草壁が真面目な話しろって言うからしたのに、その言い方は納得いかねー」
「なんで、狛犬はライオンだ!が真面目な話なんだよ。ライオンってカタカナじゃん」
「カタカナ禁止なんてルール聞いてません」
こうしていつの間にか、遊の話じゃなくなった。
でも僕なりに、授業中も遊の背中を見ながら、遊の気持ちを考えてみた。
もしかして…
「遊、今日は、ちょっと公園へ寄ってから帰ろう」
2人で公園でブランコを漕ぐ
数人いる小学生たちは、シーソーに集まってゲームをしている。
遊の小学生の頃は、どんな子供だったんだろう。
小学生の頃に会えていたら、僕達は、どうなっていただろう…
珍しく、遊から会話が始まらない
「遊、大丈夫?」
「えっ?」
「僕、遊がアメリカに行くって聞いて、自分のことしか考えれてなかった。だけど、遊の気持ちになったら、もしかして…寂しいのかなって。不安なのかなぁって。ごめん、今更だよね。だけど心配になってて」
「ありがと。大丈夫、大丈夫だったんだ。だけど、後1ヶ月って思った瞬間、怖くなった。英語は苦手じゃ無いけど、教科書と日常会話じゃ全然違うし、アジア人だし、(差別)無いとは思うけど、絶対かは分からない。自分で決めたことなのに、温には気持ちの整理つけてもらったのに、実は俺は、この状況に、全然追いつけてなくて。
温に会えなくなる、温に触れられなくなる、温と話せなくなる、温に…考え出したらきり無くて、寂しくて悲しくて、不安で、怖くて。」
僕は思いっ切りブランコをこいだ
こいで、こいで、こいで
「バカヤロー」
と大声で叫んだ
隣で遊も、思いっ切りこぎ出すのが分かった。
僕は、モヤモヤを吐き出す。僕が吐き出せば、きっと遊も吐き出せる。
僕はもう一度
「バカヤロー」
と叫んだ
ギコギコ錆びたブランコの音と共に遊の声で
「バカヤロー」
と聞こえた
僕は思いっ切りこぐ
「ありえねー」
遊も思いっ切りこぐ
「ありえねー」
僕は空に向かって、足をあげて
「マジでー」
と叫ぶ。
「あぁ〜〜」
お尻が、ずり落ちて尻もちを着いた僕に遊が
「大丈夫?」
と、すぐにブランコから降りて、寄り添ってくれる
目が合った瞬間、
2人で、吹き出してしまった。
「あースッキリした」
「ほんと?」
「かなり。ありがと、温」
「僕は何にも」
「最後、すっ転んで、笑わせてくれたじゃん」
「それは…狙ったわけじゃないし」
僕は、少し情けない気持ち。
「温はいいよ。やっぱり温はいい」
「何だよそれ」
僕は照れ隠しに、お尻の砂を払いながら、立ち上がった。
「遊もいいよ、やっぱりいい」
「何だよそれぇ」
遊もズボンの砂を払いながら、立ち上がる。
「だって、遊は正直だから。いつも。その強さが、箱星遊って感じがする」
「強くないよ、ホントに。だから、今更、ぐちゃぐちゃになって…」
「ぐちゃぐちゃになってるって、ちゃんとわかってるじゃん!そこから、逃げない、遊がカッコいいんだよ」
「…今日は、めちゃくちゃ褒めてくれるじゃん」
遊は照れながら、もう一度ブランコに座った
「だって、カッコいいんだもーん。遊はぁ」
僕は、自分の気持ちを、堂々言えて、嬉しかった。
「温、どっちが、遠くまで靴を飛ばせるか?やる?」
「いいよ、絶対勝つ」
僕らは、子供みたいに遊んだ。
夜が二人を分かつまで。


