「おはよー」
「おはよう」
教室、朝の爽やかな雰囲気をよそに、僕だけ、どんよりと机にへばりついている。
「おはよ。」
そんな僕に、元気な津田が挨拶をくれる。
「津田はいつも元気だな。てゆーか、気持ちが安定してるよな」
「そう?」
津田は鞄を自分の机に置き、すぐに僕の隣に戻ってきた。
「まだ、漫才のこと、箱星君に話せてないの?」
小声で僕に尋ねる津田
「はぁー」
ため息でそれに答える僕
津田は田中の椅子を僕の隣に持ってきて、話を始めた。
「俺とか草壁君のタイプって、つい言葉の裏とか、建前とか、深読みしたりするんだよね。それで考えて、ぐちゃぐちゃになって。疲れて諦めて、考えない、喋んない。それで、大切なもの失って。
俺、中学の時、田中に言われたんだ。
言葉をそのまま受け取れって。俺は思ったことをこねくり回さないで、そのまま言葉にしてるからって。
安心して全て受け取れって。俺は、それで救われた。
もちろん、この対人術が万能じゃないのは分かってる。
だけど、俺にとっての田中が、草壁君にとっての箱星君なら。
草壁君も思ってることを、そのまま伝えれば、箱星君にも、きっと伝わって、箱星君もそのまま返してくれる。そう思うよ」
田中と津田の関係を羨ましく思う。
僕と遊とは違う信頼関係が見える。
「おはよう!おはよー、おはよ」
田中が目が合う相手、全員に挨拶しながら、登校してきた。
「朝から元気だな」
僕は机にへばりつきながら、田中に言った。
「朝だから、元気なんだろーなっ、津田」
「そうだな。田中は朝型だもんな」
「そうそう、朝型、朝活、朝男だからな」
「テキトーなことばっかり言いやがってー」
僕は顔を埋めた。
「なんだよ、草壁」
「色々あるんだよ。それより、田中、宿題の…」
津田、ありがとう!
今の僕には、田中のテキトーさをツッコめるほど、余裕がない。
僕は言う!今日、こねくり回さないで遊に言う。
開けている窓から、秋の爽やかな風が入った。
「おはよ、温」
爽やかな風と共に遊が登校、キラキラし過ぎだって。
僕言うのー?今日?えー言えない……
「先輩、やっぱり、豆皿さんのネタを3本目にしません?」
「1番ウケるネタを最初にした方がいいだろ?」
「そうかな?」
文化祭まであと2週間も無い、僕らは覚えたネタの順番を、あーでもない、こーでもないと、かれこれ30分は話し合っていた。
「君たち、ホントに落語じゃなくて漫才をするの?」
いつもの様に、将棋を差している阿部先輩に声をかけられる。
「もちろん!」
と先輩が張り切って答えた。
「とゆーか、お二人は大丈夫なんですか?落語、全然練習してませんけど。」
僕は、お決まりのソファから立ち上がり先輩たちの、将棋盤を見に行った。
将棋盤の横には落語の小さなメモが置かれていた。
僕はそれを指差し、
「これってどういうことですか?」
と阿部先輩をみた
「どーもこーも、そういうことだ。」
「そういうこと?」
「僕たちは、落語の練習を全然してない訳ではなく、毎回コツコツと、真面目に」
「真面目にはしてませんよね?」
「話は最後まで聞く!真面目にはしていないけど、毎回のコツコツが、実を結ぶから心配するな」
「聞いたことありません。そんな努力の仕方」
「そりゃそうだよ。努力はしていないから。努力のカテゴリーをいくら探しても無いはずだ。しかし、緩く、それなりの結果を出す方法というカテゴリーを探せば」
「僕の中に、そんなカテゴリーはありません」
「あるだろ、誰のなかにも。なっ?山名」
ソファで、漫才動画を見返していた先輩は、聞いていなかった様で
「あります!」
と満面の笑みで答えた。
ほんとに、調子いいんだから
「やったよ」
将棋盤をずっと睨んでいた、安藤先輩が、次は落語のメモを睨みながら、将棋の手を打ったことを伝えた。
もうダメだ。
僕はこの2人を諦めて、時計を見た。
5時30分を過ぎてる…ヤバ。遊との約束の時間まで、後10分も無い。
「先輩、すみません。今日はこの辺で。」
「えっ、あ〜時間か。毎回毎回、シンデレラだな」
「…褒めてます?」
「褒めてねーよ。ほらさっさと行け!」
「ありがとうございます。じゃあ」
僕は荷物を持って、出口に急いだ。
「あっ、まだ言ってないの?箱星に。漫才のこと」
「…はい」
「実行委員から、落語ブースの看板に、漫才も入れとかないとダメって言われたんだけど、どうする?」
「えっと…」
「どうする?って言うのは、書く書かない?を聞いてる訳じゃなくて、いつなら書いていい?ってことね」
「はい、分かってます。でも、もう少し、もう少し待ってください。すみません、じゃあ」
僕は先輩の顔も見ずに飛び出した。
遊は、山名先輩のことは何も聞いてこない。
毎日、部活大変だねーって、外側の話をするだけ。
文化祭までは、毎日部活だから、待ってなくていいよって言っても、そこは、頑なに待っててくれる。
「温!」
昇降口で振り返ると遊がいた。
優しい笑顔、この笑顔を曇らせたくはない。
とか、言っていつも後回しにしちゃう
「部活、毎日大変だよね」
はい、きました。
毎日の定型文。
部活の中身の話は、一切聞いてこない。
もう、山名先輩と仲いいの?とか、落語するの?とか聞いてくれたら、話しやすいのに…
「まぁ、でも好きなことだから、遊んでるみたいなもんだよ」
「そっか、温はいいな。趣味があって」
「遊は、無いの?」
ほら、話がこうやって逸れていく
「うん、誰かに聞かれたら読書って答えるけど、絶対毎日、読書してるわけじゃないし」
「いつも、色々読んでるよね」
「うん、2〜3冊を同時進行で読む癖があって」
「えー、僕がそれしたら、」
今日もまた言えない
遊と話ながら、僕は山名先輩と漫才をすることを言えない自分に、ズルさを感じていた。
「おはよう」
教室、朝の爽やかな雰囲気をよそに、僕だけ、どんよりと机にへばりついている。
「おはよ。」
そんな僕に、元気な津田が挨拶をくれる。
「津田はいつも元気だな。てゆーか、気持ちが安定してるよな」
「そう?」
津田は鞄を自分の机に置き、すぐに僕の隣に戻ってきた。
「まだ、漫才のこと、箱星君に話せてないの?」
小声で僕に尋ねる津田
「はぁー」
ため息でそれに答える僕
津田は田中の椅子を僕の隣に持ってきて、話を始めた。
「俺とか草壁君のタイプって、つい言葉の裏とか、建前とか、深読みしたりするんだよね。それで考えて、ぐちゃぐちゃになって。疲れて諦めて、考えない、喋んない。それで、大切なもの失って。
俺、中学の時、田中に言われたんだ。
言葉をそのまま受け取れって。俺は思ったことをこねくり回さないで、そのまま言葉にしてるからって。
安心して全て受け取れって。俺は、それで救われた。
もちろん、この対人術が万能じゃないのは分かってる。
だけど、俺にとっての田中が、草壁君にとっての箱星君なら。
草壁君も思ってることを、そのまま伝えれば、箱星君にも、きっと伝わって、箱星君もそのまま返してくれる。そう思うよ」
田中と津田の関係を羨ましく思う。
僕と遊とは違う信頼関係が見える。
「おはよう!おはよー、おはよ」
田中が目が合う相手、全員に挨拶しながら、登校してきた。
「朝から元気だな」
僕は机にへばりつきながら、田中に言った。
「朝だから、元気なんだろーなっ、津田」
「そうだな。田中は朝型だもんな」
「そうそう、朝型、朝活、朝男だからな」
「テキトーなことばっかり言いやがってー」
僕は顔を埋めた。
「なんだよ、草壁」
「色々あるんだよ。それより、田中、宿題の…」
津田、ありがとう!
今の僕には、田中のテキトーさをツッコめるほど、余裕がない。
僕は言う!今日、こねくり回さないで遊に言う。
開けている窓から、秋の爽やかな風が入った。
「おはよ、温」
爽やかな風と共に遊が登校、キラキラし過ぎだって。
僕言うのー?今日?えー言えない……
「先輩、やっぱり、豆皿さんのネタを3本目にしません?」
「1番ウケるネタを最初にした方がいいだろ?」
「そうかな?」
文化祭まであと2週間も無い、僕らは覚えたネタの順番を、あーでもない、こーでもないと、かれこれ30分は話し合っていた。
「君たち、ホントに落語じゃなくて漫才をするの?」
いつもの様に、将棋を差している阿部先輩に声をかけられる。
「もちろん!」
と先輩が張り切って答えた。
「とゆーか、お二人は大丈夫なんですか?落語、全然練習してませんけど。」
僕は、お決まりのソファから立ち上がり先輩たちの、将棋盤を見に行った。
将棋盤の横には落語の小さなメモが置かれていた。
僕はそれを指差し、
「これってどういうことですか?」
と阿部先輩をみた
「どーもこーも、そういうことだ。」
「そういうこと?」
「僕たちは、落語の練習を全然してない訳ではなく、毎回コツコツと、真面目に」
「真面目にはしてませんよね?」
「話は最後まで聞く!真面目にはしていないけど、毎回のコツコツが、実を結ぶから心配するな」
「聞いたことありません。そんな努力の仕方」
「そりゃそうだよ。努力はしていないから。努力のカテゴリーをいくら探しても無いはずだ。しかし、緩く、それなりの結果を出す方法というカテゴリーを探せば」
「僕の中に、そんなカテゴリーはありません」
「あるだろ、誰のなかにも。なっ?山名」
ソファで、漫才動画を見返していた先輩は、聞いていなかった様で
「あります!」
と満面の笑みで答えた。
ほんとに、調子いいんだから
「やったよ」
将棋盤をずっと睨んでいた、安藤先輩が、次は落語のメモを睨みながら、将棋の手を打ったことを伝えた。
もうダメだ。
僕はこの2人を諦めて、時計を見た。
5時30分を過ぎてる…ヤバ。遊との約束の時間まで、後10分も無い。
「先輩、すみません。今日はこの辺で。」
「えっ、あ〜時間か。毎回毎回、シンデレラだな」
「…褒めてます?」
「褒めてねーよ。ほらさっさと行け!」
「ありがとうございます。じゃあ」
僕は荷物を持って、出口に急いだ。
「あっ、まだ言ってないの?箱星に。漫才のこと」
「…はい」
「実行委員から、落語ブースの看板に、漫才も入れとかないとダメって言われたんだけど、どうする?」
「えっと…」
「どうする?って言うのは、書く書かない?を聞いてる訳じゃなくて、いつなら書いていい?ってことね」
「はい、分かってます。でも、もう少し、もう少し待ってください。すみません、じゃあ」
僕は先輩の顔も見ずに飛び出した。
遊は、山名先輩のことは何も聞いてこない。
毎日、部活大変だねーって、外側の話をするだけ。
文化祭までは、毎日部活だから、待ってなくていいよって言っても、そこは、頑なに待っててくれる。
「温!」
昇降口で振り返ると遊がいた。
優しい笑顔、この笑顔を曇らせたくはない。
とか、言っていつも後回しにしちゃう
「部活、毎日大変だよね」
はい、きました。
毎日の定型文。
部活の中身の話は、一切聞いてこない。
もう、山名先輩と仲いいの?とか、落語するの?とか聞いてくれたら、話しやすいのに…
「まぁ、でも好きなことだから、遊んでるみたいなもんだよ」
「そっか、温はいいな。趣味があって」
「遊は、無いの?」
ほら、話がこうやって逸れていく
「うん、誰かに聞かれたら読書って答えるけど、絶対毎日、読書してるわけじゃないし」
「いつも、色々読んでるよね」
「うん、2〜3冊を同時進行で読む癖があって」
「えー、僕がそれしたら、」
今日もまた言えない
遊と話ながら、僕は山名先輩と漫才をすることを言えない自分に、ズルさを感じていた。


