「草壁、山名先輩が廊下で待ってるよ」
「先輩を待たせるなよー」
クラスメイトの笑い声、みんなに帰宅を急かされる。
始業式から毎日
放課後、僕を迎えにくる山名先輩に、最初は驚いてたみんなも、今はもう慣れたようだ。
10日も続けば慣れるか。
「先輩、何度も言ってますが、迎えに来なくても大丈夫ですから」
「後輩、何度も言っているが、部室までの通り道なんだよ、君の教室は」
僕ら2人は廊下を歩き出す。
身長差20センチの先輩を見上げながら話す。首が痛い。
「先輩、そこは通り過ぎて、先に部室に行って、頂いて大丈夫ですので」
「後輩、そこを通り過ぎたら、私が、薄情な人物にうつるだろう」
2人でふざけた会話をしながら
「先輩、そんなこと気にされてるんですか?先輩は、"5よし"ですよ」
僕は手をパーにして、先輩にみせた。
「後輩、5よしとは、なんだい?」
と、山名先輩は僕のパーを握った。
「顔よし、体格よし、家柄よし、頭よし…あと?」
僕は考えながら足を止めた。
山名先輩は、
「忘れてんのかよー、とりあえず、部室の鍵を取りに職員室行くぞ」
と、僕のパーの手を握ったまま歩き出す。
「先輩、あと1つなんですかね?」
「なんで本人に聞くんだよ!」
「だってー」
そんな、雑談をしながら職員室に入った。
「失礼しまーす」
職員室は苦手
僕は、先輩の声の後ろでお辞儀した。
鍵は、職員室、中央の壁に掛かっている。
僕らは小声で、話を続けながら鍵をめざす。
「体格よしも、絶対違うと思う。体格って」
「えーじゃあ、あと2個も、先輩のいいところ探すんですか?」
「さっきから失礼なやつだな〜」
先輩の笑顔の後ろが、急に眩しくなった。灰色一色だった職員室、そこだけ輝いてて
「えっ」
僕は、先輩に握られていた手を、振りほどいて、その手を後ろに隠した。
光の中の遊と、目が合っている。
どうしているの?
帰国が早まった?
どうして教えてくれないの?
どうしていつも、いつも、事後報告…?
「どうした?温君〜」
先輩に肘で押される。
「えっと…」
僕は眉間をグリグリしながらこの、状況を整理する。
いなかった遊がいる、遊と話したい、でも、今から先輩と部活で。ここは職員室で、えっと…えっと…
「ほら、鍵取ってきたから、行くぞ」
先輩に手を引っ張られて、職員室を後にした。
遊に目をやると、まだ担任と話をしていた。
あとでメッセージを送ろう。
どうせ今話せるわけじゃない
「考え事?」
先輩に顔をのぞき込まれる。
ドキッとして足が止まる。
えっ?ドキッ?…イヤ無い無い
急に、完璧なハンサムが目の前に来たから、ドキッとしただけ。
だけど、もし遊じゃなくて、先輩を好きになれたら、
もっと、楽で楽しくて、気も使わなくて良くて、趣味も合って。告白して、ダメでも笑い話にしてくれそうで。
「どうした!」
「いったぁー」
背中を思いっ切り叩かれた。
痛いけど笑っちゃう
「痛いですよ〜なんですか」
「なんですか?じゃないよー。ずっと無視しやがって!」
「無視なんてしてません」
「してたよ、この俺様を無視するなんて、お前くらいだからな!」
「なんですか?俺様って」
「お前も言ってただろ?俺は人気者なの。だから俺様と話せるだけでも有難がるヤツがいるのに、お前くらいだよ、無視するのは」
「あっ、5よしの、残り2個思いつきました!偉そう、口が達者」
「コラ!だからそれは、褒め言葉じゃねーだろ」
先輩は笑いながら、その長い腕で、僕の肩をつつみ込んだ。
職員室から部室までの渡り廊下、爽やかな秋の風が吹いた
暑すぎず、寒すぎ、居心地のいいそんな秋が僕と先輩を包んだ。
部室のソファ
いつものように、並んで座る先輩と僕
「先輩、やっぱり、ネタ書くのは間に合わないです」
先輩は、両手をあげ伸びをしながら
「そうだな〜どうしよっか?」
「コピー漫才にしますか?」
「コピー漫才?」
「はい、コピーバンドがあるんですから、コピー漫才でも、おかしくはないですよ」
「まぁな、だとしたら、ネタは…」
僕らは同時に
「大移動は?」
「大移動だな」
と言った。
僕は、揃ったことが嬉しかった。
だからつい、ソファがキュコキュコなるくらい、お尻で、跳ねてしまった。
「ですよね〜豆皿さんの大移動は絶対、万人受けすると思うんです」
「そうそう、あんなネタが何個もあれば、豆皿も賞レースで優勝できるんだけどな」
「そうですよね、あと」
携帯がバイブ音で机の上で揺れている
「すみません」
僕は、先輩に会釈して、携帯の画面を見た。
遊からのメッセージ
〈一緒に帰ろう、待ってる〉
どうしょう、他にもネタをどうするかとか、色々話さなかいといけないことがあるから、あと1時間以上はかかる。
それに、先輩との、この時間は楽しい
〈まだまだかかるから、今日は先に帰っていいよ〉
待ってる!と言ってる人間に、帰っていいよって。変な日本語だと分かっている。
でも、待たなくていいとは、打てなかった。それって、遊を拒否してるようで。僕は、遊を拒否なんてしたくない。ただ、今は、少し、何も考えたくないんだ。
〈何時間でも待ってる〉
待ってる、かぁ…遊のなかでは、一緒に帰るは、決まってること
僕に相談は、なし?
〈ごめん、今日は時間がかかるから〉
そう送って、携帯をしまった。
先輩との楽しい漫才の話、のはずなのに、時計ばかりが気になる。
ガタガタガタガタ
「なに?温君ってビンボー譲りするタイプ?」
「いや、すみません」
全然楽しく無い。もう…
遊が、待ってるって分かってて、楽しめるはず無いじゃん!
遊を待たせとけるはず、無いじゃん!
ほんとに、何も分かって無い
「先輩…すみません、帰ります。友達を待たせてて」
僕は、先輩の答えも聞かずに、部室を飛び出した。
ほんとに、遊は何にも、何もかもわかって無い
でも、それは当たり前
だって僕は遊に、何にも伝えて、無いんだから。
「先輩を待たせるなよー」
クラスメイトの笑い声、みんなに帰宅を急かされる。
始業式から毎日
放課後、僕を迎えにくる山名先輩に、最初は驚いてたみんなも、今はもう慣れたようだ。
10日も続けば慣れるか。
「先輩、何度も言ってますが、迎えに来なくても大丈夫ですから」
「後輩、何度も言っているが、部室までの通り道なんだよ、君の教室は」
僕ら2人は廊下を歩き出す。
身長差20センチの先輩を見上げながら話す。首が痛い。
「先輩、そこは通り過ぎて、先に部室に行って、頂いて大丈夫ですので」
「後輩、そこを通り過ぎたら、私が、薄情な人物にうつるだろう」
2人でふざけた会話をしながら
「先輩、そんなこと気にされてるんですか?先輩は、"5よし"ですよ」
僕は手をパーにして、先輩にみせた。
「後輩、5よしとは、なんだい?」
と、山名先輩は僕のパーを握った。
「顔よし、体格よし、家柄よし、頭よし…あと?」
僕は考えながら足を止めた。
山名先輩は、
「忘れてんのかよー、とりあえず、部室の鍵を取りに職員室行くぞ」
と、僕のパーの手を握ったまま歩き出す。
「先輩、あと1つなんですかね?」
「なんで本人に聞くんだよ!」
「だってー」
そんな、雑談をしながら職員室に入った。
「失礼しまーす」
職員室は苦手
僕は、先輩の声の後ろでお辞儀した。
鍵は、職員室、中央の壁に掛かっている。
僕らは小声で、話を続けながら鍵をめざす。
「体格よしも、絶対違うと思う。体格って」
「えーじゃあ、あと2個も、先輩のいいところ探すんですか?」
「さっきから失礼なやつだな〜」
先輩の笑顔の後ろが、急に眩しくなった。灰色一色だった職員室、そこだけ輝いてて
「えっ」
僕は、先輩に握られていた手を、振りほどいて、その手を後ろに隠した。
光の中の遊と、目が合っている。
どうしているの?
帰国が早まった?
どうして教えてくれないの?
どうしていつも、いつも、事後報告…?
「どうした?温君〜」
先輩に肘で押される。
「えっと…」
僕は眉間をグリグリしながらこの、状況を整理する。
いなかった遊がいる、遊と話したい、でも、今から先輩と部活で。ここは職員室で、えっと…えっと…
「ほら、鍵取ってきたから、行くぞ」
先輩に手を引っ張られて、職員室を後にした。
遊に目をやると、まだ担任と話をしていた。
あとでメッセージを送ろう。
どうせ今話せるわけじゃない
「考え事?」
先輩に顔をのぞき込まれる。
ドキッとして足が止まる。
えっ?ドキッ?…イヤ無い無い
急に、完璧なハンサムが目の前に来たから、ドキッとしただけ。
だけど、もし遊じゃなくて、先輩を好きになれたら、
もっと、楽で楽しくて、気も使わなくて良くて、趣味も合って。告白して、ダメでも笑い話にしてくれそうで。
「どうした!」
「いったぁー」
背中を思いっ切り叩かれた。
痛いけど笑っちゃう
「痛いですよ〜なんですか」
「なんですか?じゃないよー。ずっと無視しやがって!」
「無視なんてしてません」
「してたよ、この俺様を無視するなんて、お前くらいだからな!」
「なんですか?俺様って」
「お前も言ってただろ?俺は人気者なの。だから俺様と話せるだけでも有難がるヤツがいるのに、お前くらいだよ、無視するのは」
「あっ、5よしの、残り2個思いつきました!偉そう、口が達者」
「コラ!だからそれは、褒め言葉じゃねーだろ」
先輩は笑いながら、その長い腕で、僕の肩をつつみ込んだ。
職員室から部室までの渡り廊下、爽やかな秋の風が吹いた
暑すぎず、寒すぎ、居心地のいいそんな秋が僕と先輩を包んだ。
部室のソファ
いつものように、並んで座る先輩と僕
「先輩、やっぱり、ネタ書くのは間に合わないです」
先輩は、両手をあげ伸びをしながら
「そうだな〜どうしよっか?」
「コピー漫才にしますか?」
「コピー漫才?」
「はい、コピーバンドがあるんですから、コピー漫才でも、おかしくはないですよ」
「まぁな、だとしたら、ネタは…」
僕らは同時に
「大移動は?」
「大移動だな」
と言った。
僕は、揃ったことが嬉しかった。
だからつい、ソファがキュコキュコなるくらい、お尻で、跳ねてしまった。
「ですよね〜豆皿さんの大移動は絶対、万人受けすると思うんです」
「そうそう、あんなネタが何個もあれば、豆皿も賞レースで優勝できるんだけどな」
「そうですよね、あと」
携帯がバイブ音で机の上で揺れている
「すみません」
僕は、先輩に会釈して、携帯の画面を見た。
遊からのメッセージ
〈一緒に帰ろう、待ってる〉
どうしょう、他にもネタをどうするかとか、色々話さなかいといけないことがあるから、あと1時間以上はかかる。
それに、先輩との、この時間は楽しい
〈まだまだかかるから、今日は先に帰っていいよ〉
待ってる!と言ってる人間に、帰っていいよって。変な日本語だと分かっている。
でも、待たなくていいとは、打てなかった。それって、遊を拒否してるようで。僕は、遊を拒否なんてしたくない。ただ、今は、少し、何も考えたくないんだ。
〈何時間でも待ってる〉
待ってる、かぁ…遊のなかでは、一緒に帰るは、決まってること
僕に相談は、なし?
〈ごめん、今日は時間がかかるから〉
そう送って、携帯をしまった。
先輩との楽しい漫才の話、のはずなのに、時計ばかりが気になる。
ガタガタガタガタ
「なに?温君ってビンボー譲りするタイプ?」
「いや、すみません」
全然楽しく無い。もう…
遊が、待ってるって分かってて、楽しめるはず無いじゃん!
遊を待たせとけるはず、無いじゃん!
ほんとに、何も分かって無い
「先輩…すみません、帰ります。友達を待たせてて」
僕は、先輩の答えも聞かずに、部室を飛び出した。
ほんとに、遊は何にも、何もかもわかって無い
でも、それは当たり前
だって僕は遊に、何にも伝えて、無いんだから。


