おもちゃ箱に恋をした!?いえこれは断じて恋ではありません!

夏休みはあっという間に過ぎていった。
ネタは…そう簡単に出来ない!
「おはよー草壁、なんか始業式そうそう、疲れてんな」
「田中、おはよ。なんか元気だな」
「そりゃあ、部活地獄の夏休みより、通常授業の方が楽だからな」
「あれ?Cチームは、練習少ないんじゃ無かった?」
「それがー」
教室中に響くデカい声
「なに?聞こえてるから、普通に喋って」
「はぁ〜」
田中の、大きなため息に、数名の視線がこちらをむく。
「結局、Aチームの練習に借り出されて、ほぼ毎日、部活だったー」
「そうなんだ、それは大変だったね」
「おはよー」
津田が手を振りながら、僕らの席に近づいてきた。
僕らは手をあげた。
「箱星君はまだ?」
津田の問に、田中も僕を見る。

「あっ、1週間、帰国遅らせたんだって」
「なんで?」
「さぁ?お母さんがもう少し、アメリカに居たかったんだって」
8月末、遊からの、メッセージを思い出す。
〈ごめん、母の希望で、後1週間、こっちにいることになった〉
シンプルなメッセージ
 
「温君いる?」
教室の入口に、…先輩?!
赤鬼ではなく
サラサラ、黒髪で、手をふる先輩
教室はざわめく。
そりゃそうだ。
AIで作ったみたいに、カッコいい。
僕は、クラス中の視線を集めて、先輩に走り寄る。

「なんですか?」
「なんだよ、迷惑そうに」
「なんで、黒髪なんですか」
「なんで、小声なんだ」
と、先輩も僕の声のトーンに、合わせてくる
僕は、小声のまま
「先輩、なんで黒髪なんですか?」
「なぜなら、夏休み明けも、赤髪で登校するほど、血迷ってないからだ」
「だけど、目立つじゃないですか!」
「赤髪の方が、目立つと思うけど」
僕は、呆れてしまう。だって
「カッコ良すぎて目立ちます!」
「それは告白と受け取っていいのか?」

「良くない!」

僕は、通常の声量で、突っ込んでしまった。
背中に、クラス中の視線を感じる。

「赤鬼退散!」
そう叫んで、僕は先輩の背中を、何度も叩いた。
「おい、なんだよー分かったよ。話は部室で」
そう言って、赤鬼は走って帰っていった。
はぁー
僕はため息をつきながら、教室に入る
ビンビン視線を感じるが、知らないふりをして、自分の席に座った。
すぐさま、田中と津田が、僕の正面でしゃがみ込む
「おい、草壁、今のなんだよ」
「2年の山名先輩と、仲が良かったの?」
僕は渋々話す。

クラス中が、僕らの話に耳を澄ませているせいで、外の風の音まで聞こえる。

「仲いいって言うか…同じ部活で」
「落研?あの山名先輩が」
「あの?田中、知ってるの?」
「知ってるも何も、箱星が入学するまでは、圧倒的人気ナンバーワンだよ」
「えーそうなの?どこが…」
「どこがって、顔よし、身長よし、頭よし、性格よし、家柄よしの、5良しだよ」
「5よし?」
「本当に知らなかったんだね。」
「一学期は、家庭の事情で、結構休んでたらしいしなぁ」
「へー、家庭の事情?家庭って?」
「だから、知らない?駅前にもある和菓子屋、亀池の孫なの。山名先輩は」
「えー亀池って、全国のデパ地下とかに入ってる、あの亀池?」
「そう、すげーよな。大金持ち」
「そんな、お金の話…」
「お前みたいに、実家が太いヤツは」

その後の、どうでもいい、田中と津田のやり取りをほったらかしたまま、僕は携帯をみた。
遊からのメッセージ
「始業式、帰れなくてごめん」
ごめん、ごめんかぁ。
僕は、机にうつ伏せになって、終業式1週間前のメッセージを思い出した。
「もう少しで飛行機にのる。終業式まで、いられなくて、ごめん」
ごめん、ごめん、ごめん、って。謝ってもらったって、遊には会えない。遊はそばにいない。遊に触れられない。遊の匂い、遊の声、もう忘れそうだよ。
足首のアンクレットをそっと触った。
遊の体温はもう感じられない…

「草壁、体育館行くぞー。始業式」
田中に体を揺すられる。
僕は、顔をオンにする。
遊へのメッセージをうつ
〈こっちは、全然大丈夫だよ〉
これもオンのメッセージだな。
ふと自分に笑ってしまった。