「俺、今日は左手しか使わないから」
朝から、謎の田中の宣言
「そう、頑張ってね」
僕は、左手で、鞄の中の教科書をゆっくり出している田中に、感情の無い応援を伝え、1限目の準備をする。
教室の入口に光がさす感覚
遊が教室に入ってくる。
みんなの、視線が遊に集まる。
まだクラスのみんなも、僕も、遊の輝きには、慣れていない。
遊がいる場所は自然に発光している、その輝きが遊がいるからだと、目視で確認しないと、脳の処理が追いつかない。
「温、おはよ」
自分の席に鞄を置く前に、僕のところまで来てくれる、みんなの視線も引き連れて。
なので、僕は毎朝、みんなの視線に緊張して、引きつった顔で、挨拶をする。
なんで、こんな奴のところに遊が?
皆か思っているだろう。僕だって思ってる。
今だに、なぜこの状況になっているのか、入学してからの記憶をさかのぼっても、説明出来ない
遊は、後ろの田中を見て、
「何やってるの?」
と僕に聞く。
田中の隣で、田中を温かく見守っていた津田が、答えてくれる。
「今日は左手しか使わないんだって」
遊は、なんの疑問も持っていない津田に
「なんで?」
とストレートに聞く。
そりゃ聞きたくなるよな。だけど田中のことだから、どうせまた、思いつきだろう。
津田は
「朝起きたら、右手が動かないんだって」
と、予想外の答え
「えっ?なんで?」
僕は、つい、また津田に聞いてしまった。
「なんで本人の俺に、聞かないんだよー」
とごもっともなことを、田中に言われ
田中以外の3人で、目を合わせてニヤついてしまった。
田中には失礼だけど、ちょっと面白い。
「じゃあ、僕が代表して、右手はどうして動かないの?」
田中は、ゆっくりと3人を見たあと
「…知らん」
「なんだよ、それ」
「分かってたら、湿布貼るなり、病院行くなり対策をとるだろ」
「そりゃそうだけど」
僕らから、次の言葉が出てこないと、田中は
「まっ、寝違えたんだろうと、仮定はしてるが」
と、無理して、手首を回してみせた。
「手も寝違えるの?首でしか、聞かない表現だけど」
僕の素朴な疑問に
「そりゃ…そういうこともあるだろう」
と田中は、自分を納得させ、また左手で荷物の整理を始めた。
「手首って寝違えることある?」
遊が、携帯でAIに聞いている。
そしてその結果
「無いって。他の理由、例えば、手の使いすぎとか」
遊の話の途中で田中は
「あーわかった。これは、俺ら4人に与えられた試練だ」
「なんで、そうなる?」
僕は即座にツッコんだ。
遊は、このモードに入った田中の話を聞いても、仕方ないと悟っている。
僕に、アイコンタクトをして、自分の席に、行ってしまった。
津田は、いつも通り、違和感を感じる事なく、話を進める。
「なんの試練?」
「結束を測る試練だよ」
「そっかぁ」
「早い早い!津田、納得が早いから。なんで、田中が手首が痛いと、僕らは結束するの?」
田中は僕を見据えて
「箱星の話を聞いていなかったのか?」
「聞いてた」
「俺は、手の使いすぎで動かない。つまり、手を使わない方がいい。つまりのつまり、残りの3人が俺を手伝わなくては、いけない。4人の結束が必要だろ?」
ツッコミどころが多すぎる。
「田中、つまりのつまりって日本語無いから。4人の結束って、田中は何もしないんだから、3人だろ!てゆーか、手の使いすぎってなんだよ!聞いたことないよ」
津田は真面目なトーンで
「部活でかな?」
って
「お前らサッカー部だろ?」
チャイムがなり、この会話に終着をつけてくれた。
2限目は体育
「田中、手首、大丈夫?」
「もう完治した」
「早っ」
「1限目の間、ずっとマッサージしていたら、治った」
田中はどこか自慢げだ。
「そうか、よかったな」
朝の、あの会話はなんだったんだ。呆れながら僕は、着替える。
4人で体育館まで歩いていると、田中が、また、変わった話を始める。
まっ、これが田中のいいところでもある。
「ハム
ロースハム
ベーコン、この並びであってると思う?」
津田が
「ベーコン
ハム
ボンレスハム、じゃない?」
と、なんの疑問も持たずに答える。
遊は、少し考えて
「ソーセージ
ベーコン
生ハムかな」
「でた!箱星のおしゃれ入れ込むヤツ〜」
「なんだよ、おしゃれ入れ込むって」
遊は、田中に反論してるけど、僕も少し田中に賛成だ。
遊は、僕に
「温、コイツが、答えてやったのに、やいやい言ってくるんだよ」
と、助けを求めてくる。
「はいはい、この3人の会話が変だから。3人は、違和感無いみたいだけど、ハムの並びってなに?」
「何って並びは、歯並びとかのあの、並びだよ」
「田中。あ〜あれね…って、納得出来ないから。歯並びがいい、は聞いたことあるけど、加工肉の並びに、正解があるとか、聞いたこと無い」
「あるだろ〜耳聞こえがいい的な」
田中の、このズレた感性が面白い
「耳聞こえね〜」
僕も答えたい。思考をめぐらす。
少しでも面白い答えを思いつけ、僕!
「ベーコン
フランクフルト
サラミは」
田中の冷たい視線
「無い」
「なんでだよー」
「こっちは、ハムとかベーコンでやってるわけ」
「うん」
「2人は生ハムとか、サラミとかなわけ」
「うん」
「全然違うだろ?」
「うん?」
隣の遊が
「なぞなぞか?」
と田中に尋ねる。確かに
「なぞなぞなんて出してないよ。なっ津田」
「うん、ハムは焼くでしょ」
このパターンの会話で毎回、正解に辿り着く津田を、尊敬してしまう
体育館に向かう津田の背中が、上下に揺れる
スキップ?下手だな
田中は、僕らの前で、仁王立ちし
「わかったか。ハムやベーコンは加熱して食べるだろ?」
と、鼻息荒めに言ってくるけど、そもそも僕には料理の知識がない
「そうなのか?」
田中の言ってることが、合ってるのか、どうかも分からない。
ツッコミをちゃんとするなら、もっと色々なことに知識がないとダメだな。
そんな自分の反省をしていると
「俺の生ハムは焼いてくれてもいいけど」
と遊
「ダメ!」
と言う田中を無視して、僕の目を見ながらゆっくりと顔を近づけてくる遊
えっ、今の会話の、次のターンって僕?
「温には、もっと妬いてほしいんだけど」
「ぼ、く?」
吐息がかかるこの距離で、何の話でしょうかっ?
僕、料理は出来ませんが…?
「俺は、温が田中や津田と話しているのを見るだけで、妬いちゃうんだけど」
あっ、ヤキモチを妬くの方…にしても、
「いや、田中と津田は…」
僕は苦笑いしながら、遊の澄んだ瞳から目を逸らす。
心臓がもたない。
遊は僕の手首を掴んで、もう一度、僕を自分の方に、向き直させる
「温には、もっと妬いて欲しいな」
僕を見つめる遊に、この整った顔に、僕はなんと答えるのが正解なんだ?
答えは出ない
田中が、僕と遊の顔の間で、指を鳴らす
パチン
僕らは、我に返る
「長い!」
と呆れ顔の田中
先をスキップする津田が、振り返り
「なんで止まってるの?3人!遅れるよー」
と叫んでいる
「「「はーい」」」
朝から、謎の田中の宣言
「そう、頑張ってね」
僕は、左手で、鞄の中の教科書をゆっくり出している田中に、感情の無い応援を伝え、1限目の準備をする。
教室の入口に光がさす感覚
遊が教室に入ってくる。
みんなの、視線が遊に集まる。
まだクラスのみんなも、僕も、遊の輝きには、慣れていない。
遊がいる場所は自然に発光している、その輝きが遊がいるからだと、目視で確認しないと、脳の処理が追いつかない。
「温、おはよ」
自分の席に鞄を置く前に、僕のところまで来てくれる、みんなの視線も引き連れて。
なので、僕は毎朝、みんなの視線に緊張して、引きつった顔で、挨拶をする。
なんで、こんな奴のところに遊が?
皆か思っているだろう。僕だって思ってる。
今だに、なぜこの状況になっているのか、入学してからの記憶をさかのぼっても、説明出来ない
遊は、後ろの田中を見て、
「何やってるの?」
と僕に聞く。
田中の隣で、田中を温かく見守っていた津田が、答えてくれる。
「今日は左手しか使わないんだって」
遊は、なんの疑問も持っていない津田に
「なんで?」
とストレートに聞く。
そりゃ聞きたくなるよな。だけど田中のことだから、どうせまた、思いつきだろう。
津田は
「朝起きたら、右手が動かないんだって」
と、予想外の答え
「えっ?なんで?」
僕は、つい、また津田に聞いてしまった。
「なんで本人の俺に、聞かないんだよー」
とごもっともなことを、田中に言われ
田中以外の3人で、目を合わせてニヤついてしまった。
田中には失礼だけど、ちょっと面白い。
「じゃあ、僕が代表して、右手はどうして動かないの?」
田中は、ゆっくりと3人を見たあと
「…知らん」
「なんだよ、それ」
「分かってたら、湿布貼るなり、病院行くなり対策をとるだろ」
「そりゃそうだけど」
僕らから、次の言葉が出てこないと、田中は
「まっ、寝違えたんだろうと、仮定はしてるが」
と、無理して、手首を回してみせた。
「手も寝違えるの?首でしか、聞かない表現だけど」
僕の素朴な疑問に
「そりゃ…そういうこともあるだろう」
と田中は、自分を納得させ、また左手で荷物の整理を始めた。
「手首って寝違えることある?」
遊が、携帯でAIに聞いている。
そしてその結果
「無いって。他の理由、例えば、手の使いすぎとか」
遊の話の途中で田中は
「あーわかった。これは、俺ら4人に与えられた試練だ」
「なんで、そうなる?」
僕は即座にツッコんだ。
遊は、このモードに入った田中の話を聞いても、仕方ないと悟っている。
僕に、アイコンタクトをして、自分の席に、行ってしまった。
津田は、いつも通り、違和感を感じる事なく、話を進める。
「なんの試練?」
「結束を測る試練だよ」
「そっかぁ」
「早い早い!津田、納得が早いから。なんで、田中が手首が痛いと、僕らは結束するの?」
田中は僕を見据えて
「箱星の話を聞いていなかったのか?」
「聞いてた」
「俺は、手の使いすぎで動かない。つまり、手を使わない方がいい。つまりのつまり、残りの3人が俺を手伝わなくては、いけない。4人の結束が必要だろ?」
ツッコミどころが多すぎる。
「田中、つまりのつまりって日本語無いから。4人の結束って、田中は何もしないんだから、3人だろ!てゆーか、手の使いすぎってなんだよ!聞いたことないよ」
津田は真面目なトーンで
「部活でかな?」
って
「お前らサッカー部だろ?」
チャイムがなり、この会話に終着をつけてくれた。
2限目は体育
「田中、手首、大丈夫?」
「もう完治した」
「早っ」
「1限目の間、ずっとマッサージしていたら、治った」
田中はどこか自慢げだ。
「そうか、よかったな」
朝の、あの会話はなんだったんだ。呆れながら僕は、着替える。
4人で体育館まで歩いていると、田中が、また、変わった話を始める。
まっ、これが田中のいいところでもある。
「ハム
ロースハム
ベーコン、この並びであってると思う?」
津田が
「ベーコン
ハム
ボンレスハム、じゃない?」
と、なんの疑問も持たずに答える。
遊は、少し考えて
「ソーセージ
ベーコン
生ハムかな」
「でた!箱星のおしゃれ入れ込むヤツ〜」
「なんだよ、おしゃれ入れ込むって」
遊は、田中に反論してるけど、僕も少し田中に賛成だ。
遊は、僕に
「温、コイツが、答えてやったのに、やいやい言ってくるんだよ」
と、助けを求めてくる。
「はいはい、この3人の会話が変だから。3人は、違和感無いみたいだけど、ハムの並びってなに?」
「何って並びは、歯並びとかのあの、並びだよ」
「田中。あ〜あれね…って、納得出来ないから。歯並びがいい、は聞いたことあるけど、加工肉の並びに、正解があるとか、聞いたこと無い」
「あるだろ〜耳聞こえがいい的な」
田中の、このズレた感性が面白い
「耳聞こえね〜」
僕も答えたい。思考をめぐらす。
少しでも面白い答えを思いつけ、僕!
「ベーコン
フランクフルト
サラミは」
田中の冷たい視線
「無い」
「なんでだよー」
「こっちは、ハムとかベーコンでやってるわけ」
「うん」
「2人は生ハムとか、サラミとかなわけ」
「うん」
「全然違うだろ?」
「うん?」
隣の遊が
「なぞなぞか?」
と田中に尋ねる。確かに
「なぞなぞなんて出してないよ。なっ津田」
「うん、ハムは焼くでしょ」
このパターンの会話で毎回、正解に辿り着く津田を、尊敬してしまう
体育館に向かう津田の背中が、上下に揺れる
スキップ?下手だな
田中は、僕らの前で、仁王立ちし
「わかったか。ハムやベーコンは加熱して食べるだろ?」
と、鼻息荒めに言ってくるけど、そもそも僕には料理の知識がない
「そうなのか?」
田中の言ってることが、合ってるのか、どうかも分からない。
ツッコミをちゃんとするなら、もっと色々なことに知識がないとダメだな。
そんな自分の反省をしていると
「俺の生ハムは焼いてくれてもいいけど」
と遊
「ダメ!」
と言う田中を無視して、僕の目を見ながらゆっくりと顔を近づけてくる遊
えっ、今の会話の、次のターンって僕?
「温には、もっと妬いてほしいんだけど」
「ぼ、く?」
吐息がかかるこの距離で、何の話でしょうかっ?
僕、料理は出来ませんが…?
「俺は、温が田中や津田と話しているのを見るだけで、妬いちゃうんだけど」
あっ、ヤキモチを妬くの方…にしても、
「いや、田中と津田は…」
僕は苦笑いしながら、遊の澄んだ瞳から目を逸らす。
心臓がもたない。
遊は僕の手首を掴んで、もう一度、僕を自分の方に、向き直させる
「温には、もっと妬いて欲しいな」
僕を見つめる遊に、この整った顔に、僕はなんと答えるのが正解なんだ?
答えは出ない
田中が、僕と遊の顔の間で、指を鳴らす
パチン
僕らは、我に返る
「長い!」
と呆れ顔の田中
先をスキップする津田が、振り返り
「なんで止まってるの?3人!遅れるよー」
と叫んでいる
「「「はーい」」」


