おもちゃ箱に恋をした!?いえこれは断じて恋ではありません!

「温、おはよう」
パラパラとした梅雨の朝でも、箱星…いや遊は爽やかだ。
「おはよ」
僕は、昨日の、メッセージの失敗を謝るべきか?悩んでいた。
軽く教室を見渡しながら、濡れた肩や床をハンカチでふき、自分の席に着く。
今日は、田中も津田もまだみたいだ。
遊の視線を感じた。
なに?と目で話す。
遊は、微笑みながら、近づき、僕の机に顎と手をのせ、しゃがんだ。
いちいち、かわいい
「昨日は大丈夫だった?」
また、先を越された。
「全然、僕より遊は大丈夫だった?」
遊は、真顔で動かない
えっ?遊のお母さん、めちゃくちゃ厳しい人で、怒られたとか?
「遊?」
僕は、ぼーっとしている遊の目の前で、手を振った。
「あっ、ごめん。嬉しくって。温に、遊って呼んでもらえるのが、すごく嬉しくって」
そんなに真っすぐに、喜ばれると、こちらが照れる。
ドギマギしている僕へ、助け舟かのように、廊下から騒がしい足音と声が聞こえてきた。
 
「草壁、箱星〜来てる?」 
田中が、ゼイゼイ言いながら、僕らを見つける
「きて!保健室。津田が、津田が」
「津田がどうしたの?」
僕は田中に尋ねながら、廊下に出た。
「行こう」
と、遊は、もう先頭を走り出している。
 
こういう時の決断が早い所が好き
行こうっていう頼もしい声が好き
昨日のことを、今も気にかけてくれる所が好き
あと、ヤバっ
また、遊への、好きが溢れてた。
今は、津田。つだ、つだ

「それで、田中、津田はどうしたの?」
保健室に走りながら、後ろを走る、田中に聞く。
ってなんで、サッカー部の田中が一番、足が遅いんだよ!
遊は、もう見えない
「とにか…く、ほけん…しつ」
田中のスタミナは、コアラ並だな。

保健室に着くと、遊が爆笑していた。
「どうしたの?」
保健の先生が
「笑ったら津田君に失礼よ」
と、笑いをこらえながら言った。
僕は、ベットに腰掛けている津田に
「大丈夫?どうしたの?」
と尋ねた。
津田は苦笑いしながら
「自転車で突っ込んじゃって」
「突っ込む…どこに?」
「溝に」
みぞ?…みぞ
想像すると、面白くなってきた。

「えっ、どこの?」
笑いをこらえながら僕は聞く。
「駐輪場の」
「あの、浅い、落ち葉がいっぱいの、ほぼ道の」
ニヤニヤしている僕に
「草壁も笑うなよ」
田中に言われて、不謹慎さを自覚した。
だけど、つい反論してしまう
「でも、ケガもしてなさそうだし、大丈夫じゃないの」
遊が、笑いをこらえながら、僕の肩に手を置いた
「それが、溝に落ちて、バランス崩して、隣の花壇にダイブして」
遊も笑いながらだから、説明が進まない
花壇にダイブ?
「そこにあった、樹齢何十年の木を倒しちゃって」
「えーー」
僕は、田中と津田の、神妙な顔つきの意味が、やっとわかった。
「花壇って、教頭先生が管理してるよね。大事そうに…」
田中が膝から崩れ落ち
「ヤバいよなー、俺ら退学かな」
「退学は無いだろけど。わざとじゃないし。ねぇ遊」
僕は不安になり遊を見た。
そんな、退学って。あんなに楽しかった空気が一気に冷めた。
津田と田中は、ぼっちの僕を、受け入れてくれた大切な、友達で…
「逃げるか、4人で。」
「えー?!遊?」
「そうだな、津田走れるよな!」
「イヤイヤ田中、逃げたら余計、罪が重く…だろ遊」
僕は、遊らしくない提案に、遊の真意を知りたかった。
遊は噴き出した。
「ワッハハハハハァ〜うそ。逃げるわけ無いじゃん、ごめん、ごめん」
「も〜脅かすなよ」
僕は、いつもの遊に、ホッとした。
田中と津田は、保健室の入口でフリーズしている。
「2人とも逃げ足、速すぎ!」
「ごめんごめん、あまりにも皆が真剣で、ちょっと、からかいたくなった」
「ゆーうー」
僕は大袈裟に睨んだ。
田中と津田はまだ入口でフリーズ中
「教頭には、俺から反省文くらいになるように、お願いしとくよ」
田中と津田は、遊にかけより抱きついた。
「ありがとう箱星君」
「さすが箱星だな、頼もしいわー」

その後、担任が、津田と田中を、職員室まで連れて行った。
僕らは教室に戻って自習
「遊、教頭先生と話たことをあるの?」
「えっ?」
「反省文にしてもらうとか、交流あるのかな?って思って」
「あー入学してからずっと、学校のホームページのモデルとか、そういう広報的なこと、いくつかお願いされてて、だけどずっと断ってて。まっ、それやるって言ったら、多分、反省文で大丈夫になるかなーって」
田中と津田の為に…凄いな遊は。
僕なんて、してあげられること、何もない。
「だけど、嫌なんだよね」
「まーねー、目立つの好きじゃやいし」
「だったら。もしかしたら3日間くらいの、停学だけかもだし」
「アイツら、内申、気にしてるじゃん。」
そうだった。
だから大変でもサッカー部に入ってるんだった。
僕は隣を歩く遊を改めて見た。
本当に僕と同い年か?
大人すぎる。
「遊は本当にスゴイよ。遊といると、自分の考えの至らなさにガッカリする。2人のことをちゃんと考えてくれてありがとう」
「2人のことは、もちろん考えてるけど、温の為だよ」
「えっ?」
「全力で守るって、約束しただろ」
「うん」
「温との約束は、俺にとって絶対だから」
いつもの、キラキラの笑顔で話す遊に、心の中で呟いた。
 
僕はあなたが大好きです。