澄みきった青を纏った晴天が地上を歩く私を優しく照らす。純白の雲を穿った飛行機が、これまた純白の飛行機雲を残して視界の外に消えていった。
地面に視線を落とすと、桜の木の隙間からこぼれる木漏れ日が足元を陽光の色で彩っている。午後2時の暖かな空気が肌に触れ、それは指先の温度と溶け合って春風に呑まれていく。
こんな穏やかな時間が流れている時は佑月に向けた物思いに耽りたくなる。ちょうどそばにあったベンチに腰を下ろし、息を深く吸い込んでから瞼を閉じて暗闇に意識を沈ませた。
心配しなくても、私はもう大丈夫だよ。佑月。
まだ生きたいと思えたわけじゃない。それでも、漠然と今は消えたくないと思った。
前向きな人間になれたわけじゃない。それでも、明日に向かって生きてみようと思った。
だけど、きっとまた消えたいと思う日がいつかはやってくる。その度苦しくなって、辛くなって、その荒波の中でもがきながら生きていくのだ。
今日は天気がいいから散歩でもしながら明日どんな方法で消えるのか考えておこう。やっぱり明日は好きなアイスの新作が出るからせめてその明日までは生きてみよう。こういう生き方こそ、案外私のような人間がそれなりの人生を長く歩むためのコツなのだと思う。
取るに足らないことで消えたくなりながら、また取り留めのないことで生きることを決意する、それを幾度となく繰り返しながら私は呼吸をしていくのだろう。
それは人によっては命を大事にしていないように映るのかもしれないけれど、これが私なりの命の守り方なのだ。どうか、誰にも口出ししてほしくない私だけの信念でもある。
そんな命の守り方しかできない自分でも、私は私を愛せるだろうか。人一倍傷つきやすくて、泣き虫で、心の汚れた私でも、自分を愛せるかな。私は私として生きていけるかな。
その答えは未来にある。その未来に向かって、私は一歩ずつ進んでいくのだ。
「それにしても、今日は快晴だから月もよく見えそうだな~」
そうぽつりと独り言を呟いた。私の記憶が正しければ明日の昼までこの晴天は続くようだから、明日の朝日も綺麗に見えることだろう。
朝日と月。私たちの名前に入っているその言葉を何度も心の中で噛みしめる。
夜明けは、月と朝日が出会える唯一の瞬間だ。だから私たちにとって一番大切な時間が夜明けなのかもしれない。私たちをその二つになぞらえるとするなら、月と太陽は同時には見えなくて隣で輝くことは叶わないけれど、月は太陽がいないと輝けない。
どちらも欠けてはいけない存在だ。たとえ夜が終わってしまったとしても、朝日がそれを繋いで明日を紡いでいくのだ。
私は貴方を忘れられないまま、少しずつ大人になっていくのだろう。貴方を覚えていることによって明日がどんなに苦しくなったとしても、絶対に貴方を忘れない。貴方を愛したことによって生まれた傷跡も、寂しさも、全てこの腕に抱えて生きていく。そうやって生きることの苦しみさえも、また愛おしいのだ。
一年にも満たない間ではあったけれど、貴方は確かに私の隣で生きていたよ。
「私も二度と貴方のことを忘れないから、もう貴方も私を忘れないでね」
青い空を吹き抜けた桃色の桜の花弁と手元に握っている淡い青色の勿忘草がそっと絡み合う。一見何の共通点も見当たらない二つの花だけど、実は共通点が一つだけある。
それは花言葉だ。二つの花の共通点となる、その花言葉は…………。
地面に視線を落とすと、桜の木の隙間からこぼれる木漏れ日が足元を陽光の色で彩っている。午後2時の暖かな空気が肌に触れ、それは指先の温度と溶け合って春風に呑まれていく。
こんな穏やかな時間が流れている時は佑月に向けた物思いに耽りたくなる。ちょうどそばにあったベンチに腰を下ろし、息を深く吸い込んでから瞼を閉じて暗闇に意識を沈ませた。
心配しなくても、私はもう大丈夫だよ。佑月。
まだ生きたいと思えたわけじゃない。それでも、漠然と今は消えたくないと思った。
前向きな人間になれたわけじゃない。それでも、明日に向かって生きてみようと思った。
だけど、きっとまた消えたいと思う日がいつかはやってくる。その度苦しくなって、辛くなって、その荒波の中でもがきながら生きていくのだ。
今日は天気がいいから散歩でもしながら明日どんな方法で消えるのか考えておこう。やっぱり明日は好きなアイスの新作が出るからせめてその明日までは生きてみよう。こういう生き方こそ、案外私のような人間がそれなりの人生を長く歩むためのコツなのだと思う。
取るに足らないことで消えたくなりながら、また取り留めのないことで生きることを決意する、それを幾度となく繰り返しながら私は呼吸をしていくのだろう。
それは人によっては命を大事にしていないように映るのかもしれないけれど、これが私なりの命の守り方なのだ。どうか、誰にも口出ししてほしくない私だけの信念でもある。
そんな命の守り方しかできない自分でも、私は私を愛せるだろうか。人一倍傷つきやすくて、泣き虫で、心の汚れた私でも、自分を愛せるかな。私は私として生きていけるかな。
その答えは未来にある。その未来に向かって、私は一歩ずつ進んでいくのだ。
「それにしても、今日は快晴だから月もよく見えそうだな~」
そうぽつりと独り言を呟いた。私の記憶が正しければ明日の昼までこの晴天は続くようだから、明日の朝日も綺麗に見えることだろう。
朝日と月。私たちの名前に入っているその言葉を何度も心の中で噛みしめる。
夜明けは、月と朝日が出会える唯一の瞬間だ。だから私たちにとって一番大切な時間が夜明けなのかもしれない。私たちをその二つになぞらえるとするなら、月と太陽は同時には見えなくて隣で輝くことは叶わないけれど、月は太陽がいないと輝けない。
どちらも欠けてはいけない存在だ。たとえ夜が終わってしまったとしても、朝日がそれを繋いで明日を紡いでいくのだ。
私は貴方を忘れられないまま、少しずつ大人になっていくのだろう。貴方を覚えていることによって明日がどんなに苦しくなったとしても、絶対に貴方を忘れない。貴方を愛したことによって生まれた傷跡も、寂しさも、全てこの腕に抱えて生きていく。そうやって生きることの苦しみさえも、また愛おしいのだ。
一年にも満たない間ではあったけれど、貴方は確かに私の隣で生きていたよ。
「私も二度と貴方のことを忘れないから、もう貴方も私を忘れないでね」
青い空を吹き抜けた桃色の桜の花弁と手元に握っている淡い青色の勿忘草がそっと絡み合う。一見何の共通点も見当たらない二つの花だけど、実は共通点が一つだけある。
それは花言葉だ。二つの花の共通点となる、その花言葉は…………。
