「凪桜、大丈夫?目、開けられるかな」
瞼を恐る恐る開くと、真っ暗な世界が切り裂かれて一面が青で満ちた世界に移り変わった。最近雨ばかりだったからこんな快晴久々に見たな、茹だる頭ではそんな取り留めのない感想しか思い浮かばない。
空で思考を染め上げてぼんやりと目を開けていた私の意識はその瞬間明瞭になって、身体を思いきり起き上がらせた。今の声は佑月の声で間違いないはずだ。どうして、佑月がそばにいるのだろう。疑問符が頭を埋め尽くしていく。
「ゆ、づき……?なんで、ここにいるの。今まで、どこにいたの」
佑月の姿をしっかりと瞳で捉えた途端、涙が溢れ出てきて生ぬるい感覚が頬に触れた。貴方はその涙を優しく拭ってはにかんだ。
「ごめんね、一人にしちゃって。あれから、ずっと海の底で眠ってたみたいなんだ。あの日、目を覚ましたらどうしてか水底にいて、人魚に戻ってたから君のところまで行けなくて…………」
確かによく視線を巡らせてみると、佑月の体は人魚の姿に戻っていた。人間でいられたのは所詮一時の夢に過ぎなかったのか。そう気づいて私は肩を落とした。
やっぱり、私は無力だ。こんなにも無力な私でも、生きていていいのだろうか。
「佑月、私生きててもいいのかな。また消えたくなるかもしれないけど、それでもこの世界で息をしてていいのかな。でも生きてたくない自分もいて、もうなにがなんだかよく分からないの」
「消えたいと思うことは決して正しいことではないかもしれないけど、間違いでもないってボクは信じてる。この世界でどれだけ否定されても、ボクだけはその気持ちを抱きしめ続けるから、そばにいてくれる?」
「……分かんない。生きることはまだ約束できないから」
「約束しなくてもいいよ。というか、こんな世界じゃ生き続けることなんて約束できないよね。ずっと一緒にいてなんて我儘は言わないから、今日だけはそばにいてくれないかな」
今日だけ、その言葉にほんの少し心が揺れ動いた。期限付きなら、どうにか息をし続けられる気がしたのだ。
「でもこの世界に対して言いたいこと、たくさんあると思う。もし怒りたければ、気持ちの全部をボクにぶつけたらいい。もし悲しければ、せめてボクの前だけでは思いっきり泣いたらいい。君にならどんな風にされてもいいから、ボクの全部をあげる。この瞬間からボクの心臓は君のものだ」
想定外の言葉だったけど、それは他のどんな言葉よりも覚悟に満ちた響きをしていた。やっぱり、貴方はどこまでも貴方なんだね。
「ふふっ、そんなの重すぎ。私は貴方をどんな風にもしないよ。ただ、そばにいてくれたらそれでいい」
その言葉で佑月の瞳には光が宿った。これこそが、私の答えだ。
「それじゃあ…………」
「やっぱり生きる気にはなれないけど、今は消えるのはやめとくよ。生きたいわけじゃないけど、今は消えることを決断できるくらい消えたいわけじゃないから、ひとまずは貴方の隣で息をしてることにする」
「そっか、ボクのそばにいてくれてありがとう。もう、生きるのを頑張ろうとしなくていいからね。君はもう十分頑張ったから、あとは力を抜いてボクの肩に寄りかかっててよ」
二人きりの浜辺に響く佑月の声は際限のない優しさに溢れている。この人の隣でなら、明日も生きていられるだろうか。ぼんやりとそんなことを考えながら、佑月の肩に身を預けた。
瞼を恐る恐る開くと、真っ暗な世界が切り裂かれて一面が青で満ちた世界に移り変わった。最近雨ばかりだったからこんな快晴久々に見たな、茹だる頭ではそんな取り留めのない感想しか思い浮かばない。
空で思考を染め上げてぼんやりと目を開けていた私の意識はその瞬間明瞭になって、身体を思いきり起き上がらせた。今の声は佑月の声で間違いないはずだ。どうして、佑月がそばにいるのだろう。疑問符が頭を埋め尽くしていく。
「ゆ、づき……?なんで、ここにいるの。今まで、どこにいたの」
佑月の姿をしっかりと瞳で捉えた途端、涙が溢れ出てきて生ぬるい感覚が頬に触れた。貴方はその涙を優しく拭ってはにかんだ。
「ごめんね、一人にしちゃって。あれから、ずっと海の底で眠ってたみたいなんだ。あの日、目を覚ましたらどうしてか水底にいて、人魚に戻ってたから君のところまで行けなくて…………」
確かによく視線を巡らせてみると、佑月の体は人魚の姿に戻っていた。人間でいられたのは所詮一時の夢に過ぎなかったのか。そう気づいて私は肩を落とした。
やっぱり、私は無力だ。こんなにも無力な私でも、生きていていいのだろうか。
「佑月、私生きててもいいのかな。また消えたくなるかもしれないけど、それでもこの世界で息をしてていいのかな。でも生きてたくない自分もいて、もうなにがなんだかよく分からないの」
「消えたいと思うことは決して正しいことではないかもしれないけど、間違いでもないってボクは信じてる。この世界でどれだけ否定されても、ボクだけはその気持ちを抱きしめ続けるから、そばにいてくれる?」
「……分かんない。生きることはまだ約束できないから」
「約束しなくてもいいよ。というか、こんな世界じゃ生き続けることなんて約束できないよね。ずっと一緒にいてなんて我儘は言わないから、今日だけはそばにいてくれないかな」
今日だけ、その言葉にほんの少し心が揺れ動いた。期限付きなら、どうにか息をし続けられる気がしたのだ。
「でもこの世界に対して言いたいこと、たくさんあると思う。もし怒りたければ、気持ちの全部をボクにぶつけたらいい。もし悲しければ、せめてボクの前だけでは思いっきり泣いたらいい。君にならどんな風にされてもいいから、ボクの全部をあげる。この瞬間からボクの心臓は君のものだ」
想定外の言葉だったけど、それは他のどんな言葉よりも覚悟に満ちた響きをしていた。やっぱり、貴方はどこまでも貴方なんだね。
「ふふっ、そんなの重すぎ。私は貴方をどんな風にもしないよ。ただ、そばにいてくれたらそれでいい」
その言葉で佑月の瞳には光が宿った。これこそが、私の答えだ。
「それじゃあ…………」
「やっぱり生きる気にはなれないけど、今は消えるのはやめとくよ。生きたいわけじゃないけど、今は消えることを決断できるくらい消えたいわけじゃないから、ひとまずは貴方の隣で息をしてることにする」
「そっか、ボクのそばにいてくれてありがとう。もう、生きるのを頑張ろうとしなくていいからね。君はもう十分頑張ったから、あとは力を抜いてボクの肩に寄りかかっててよ」
二人きりの浜辺に響く佑月の声は際限のない優しさに溢れている。この人の隣でなら、明日も生きていられるだろうか。ぼんやりとそんなことを考えながら、佑月の肩に身を預けた。
