消えたい君の守り方。

「佑月!私がいない間、大丈夫だった?」

いつもと同じ言葉を並べて佑月に声をかける。貴方は返事の代わりに、首肯してこちらをじっと見据えてきた。そんなことより、今日はとっておきの話題を持ってきたのだ。

「ねぇ、お互いに色んなことを質問し合わない?まだまだ知らないことだらけだから、やってみたら面白いかなーって」

分かった、とだけ貴方は答えて、少しの間思案するように黙りこくった。しばらくして質問が思い浮かんだのか、地面に落としていた視線を私の方に戻して口を開いた。

「じゃあ、ボクから最初の質問。君が探してる人って言うのはどんな人なの?」
「それはほとんどなーんにも分かんない。男性なのか女性なのかも覚えてないし、声も顔も思い出せないの。人間だったのは覚えてるんだけどさ」

そう口に出す間にあの人をどれだけ大切に思っていたか、いつも以上に痛感した。でも、大切だったという記憶だけが色濃く残っているのが、余計に寂しさを加速させる。

「へぇ、ボクとほとんど同じじゃないか。こういうところだけはボクらも分かり合えるかもね」
「こういうとこ“は”じゃなくて“も”でしょ!私たち、結構相性いいと思うんだけどな~で、私からは…………そうだな、佑月は私がいない間いつも何して過ごしてるの?」
「基本は海を眺めたり、漂流物の収集とかかな。ガラクタ集めが趣味なんだ。それじゃ、二問目。君は何歳なの?」
「私は今17歳だよ。華の女子高生ってやつね」

ウィンクしながら誇らしげに語ってみたものの、佑月からは冷ややかな視線が返ってきただけだった。なんて奴なんだ、と私は思った。

「ふ~ん。その割に子供っぽいね。自分のことを美人だとか、可愛げがあるだとか言いのけるんだからある意味すごいよ」
「佑月は相変わらず毒舌だな~そういえば、貴方はいくつなんだっけ?」
「歳なんてもう分からないよ。何百年も前からここにいるから」

何百年も前から一人ぼっちで生きてきたのか。そんな積年の孤独に苛まれて生きてきたことを踏まえると、少しひねくれた性格をしているのも頷ける。

「それじゃあさ、朝陽さんとはいつくらいに離れ離れになったの?」

そう問いかけた後に自分がどれだけ無神経かを思い知った。こんなこと聞いても、佑月に辛い記憶を蘇らせるだけなのに。

「あっ、ごめんね。あんまり考えたくないこと聞いちゃって。やっぱり忘れて」
「いや、大丈夫。朝陽と離れたのは多分、ここで生きるようになる前だと思う」

その時、ふいに佑月が顎に手を当てて何かを思い悩み始めた。どうしたのだろう、と疑問を浮かべているうちに、佑月の顔色がみるみるうちに変わっていくのが見て取れた。

「あ、朝陽は…………」
「どうしたの?何か思い出しちゃった?」
「朝陽は、人間だ…………っ!」

宙をつんざくような佑月の叫び声がその場に響き渡る。その言葉が物語る意味を私も悟っていた。

「じゃあもう、朝陽さんは…………」
「もう、朝陽はこの世界のどこにもいないんだね。もっと早く思い出していれば、無駄に探し続けたりせずに済んだのにな」

そう口にする佑月のひどく寂しそうな横顔が脳裏に張り付いて、どうしても霧散してくれなかった。