リーガルウェポン


【争点】
 本件最大の争点は、被告人に殺意が認められるか否かであった。
 被告人側は、
「被害者を殺すつもりはなかった」
「怖がらせるつもりだった」
「頭に血が上り、とっさに刺してしまった」
 などと供述。
 殺害の意思を否定した。
 これに対し、検察側は、
・犯行当日に刃物を購入していること。
・被害者の仕事先を事前に調べていたこと。
・偶然遭遇したのではなく、待ち伏せしていたこと。
・人体の重要な臓器が存在する腹部を刺していること。
・至近距離から腹部を刺し、刺入が約八センチに達していること。
 以上の事情から、被害者が死亡する危険性を認識しながら、その結果を容認して犯行に及んだとして、未必的殺意があったと主張した。

   ♢

「脅すつもりで殺しかけていますよね、この人」
「そうだね。殺すつもりはないとは言っているけど、死なせる可能性があるやり方だよね。刺突行為って」

   ♢

【検察官による被告人質問】
「被害者を殺すつもりはありませんでした」
「では、何のために刃物を購入したのですか」
「……怖がらせようと思って」
「怖がらせるだけなら、なぜ被害者の身体に突き刺したのですか」
「頭に血が上っていて……」
「被害者は、あなたに何をしたのですか」
「彼を誘惑しました」
「その根拠は?」
「彼が、ELLIEのことばかり話していたからです」
「被害者本人が、あなたの交際相手に好意を伝えた事実はありますか」
「……ありません」
「交際を申し込んだ事実は?」
「ありません」
「連絡先を交換した事実は?」
「……ありません」
「むしろ被害者は、あなたの交際相手から繰り返し接触を受け、それを拒絶していましたね」
「……」
「被害者は、あなたの交際相手を誘惑していたのではない。拒絶していた。違いますか」
 被告人は、答えなかった。

   ♢

「叔母は、ストーカー被害に遭っただけでなく……その男の交際相手から、一方的に逆恨みされて……大切な身体の一部まで失った。あまりにも、動機が身勝手すぎる」

   ♢