リーガルウェポン

「先生」
 少し離れたところに、武蔵が立っていた。
 今日の法廷に、武蔵は代理人として立っていない。
 これは、玲が担当する事件だ。
 訴状の作成も。
 証拠の整理も。
 依頼人との打ち合わせも。
 もちろん武蔵の確認は受けているが、実際に法廷に立つのは玲一人。 
 だから武蔵は、傍聴席から見守っていた。

「どうだった、初法廷」
「……」
 玲は無言で武蔵を見る。

「ん?」
「……短すぎません?」
「は?」

「あれだけ練習したのに」
「うん」
「昨日、訴状を五回読み直して」
「知ってる」
「想定問答も作って」
「見たよ」
「先生に付き合ってもらって、法廷の入り方から立ち方まで練習して」
「したね」
「なのに」
 玲は法廷の扉を指差した。

「十五分くらいで終わりました!」
 武蔵が吹き出した。
「ははっ」

「笑い事じゃないですよ!」
「いや、ごめん」
「僕、本当に心臓飛び出るかと思ったんですよ!」
「見てたから知ってる」
「だったら笑わないでください!」
「でも、ちゃんとできてたよ」
 その一言で。
 玲の口が止まった。