探偵研究部。――カケラノセカイ―― ④文化祭の謎を追え!

 平屋はタブレットに何度となく打ち込んでは首をひねる。

「イザナミ……イザナミ……。あ、日本神話の神様だ。ほとりの門って、なんだろこれ?」

 第二の謎があるとされている美術室へ三人は向かっていた。

「なんか三人で美術室行くの、四月以来だな」

「嫌なこと思い出させないでくださいよ。あれより怖いことなんてそうそうないでしょ」

「はは。確かに」

「ん? どうした未知、黙って」

 小川は少しどきりとした。
 ――四月を振り返ったのは悪手だったのだろうか?
 そんな心配をよそに、未知はきっぱりと言った。

「アナグラム。多分、それアナグラムですよ!」

「え? 並べ替えの?」

「そう。だって、これから探すのは西洋美術の石膏像じゃないですか。だったら、その日本の神様は何にも意味の無い言葉です。これってひっかけで、暗号でしょう?」

「確かに。……ちょっと待って。今、入力するから」

 平屋が打ち込み、「意味のある言葉に」と解析するとすぐに『モナリザの瞳』と文字が現れた。平屋は首をかしげる。

「こっちも分かんないなあ。モナリザなら、『ほほえみ』でしょ」

 黒のノートの出題にはこう書かれている。

【二、こちらを向く美術室の石膏像
 ヒント:その目に奪われると、君の世界は反転する。】

 そうして、一行は美術室についた。
 ちょうど美術部員たちは留守で、勝手に上がらせてもらう。

 そこには、無数の石膏像が並んでいた。不気味にこちらを向いているように見える。
 三人は、そろそろと石膏像の間を歩く。
 当たり前だが、石膏像は動かない。
 けれど、今度は『こちらを向く美術室の石膏像』だ。どれかは、きっと、振り向くのではないか。

 三人は石膏像の顔を見つめながら動いていく。
 そして、がた、と小川が腰を抜かした。

「あ……こいつだ。完全にこいつと目が合った」

 小川の人差し指の示す石膏像を未知が抱きかかえた。
 そして、その『目』に触れる。

「あ、これ」

 未知が声を上げた。

「この、目のとこ。触ってみてください」

 平屋が手を伸ばし、

「あれ……?」

 と違和感を口にした。
 小川も恐る恐る触れると、

「……くぼんでる?」

 飛び出ていると思っていた目元は、くぼんでいた。そのくぼみが錯覚となって、どの角度でもこちらを向いているようにみえるのだ。

「モナリザの瞳は見る人の方に向いているように見えます。だから『モナリザの瞳』ってヒントを出してたんですね。世界が反転する。確かに、飛び出てるものがくぼんでるんだからその通りですね。でも、このクオリティ。トリックアート美術館みたい」

 と未知は感心した。

「これ、Sの作品?」

 石膏像を平屋が持ち上げると石膏像の首元にも、またしても暗号が隠されていた。
 赤くペンキで書かれている。

「SHOUTS HIS O」(直訳:彼の叫ぶ「オー」)

「『真夜中に叫ぶ校内放送』……。放送室に行けって事か。いい加減あっちこっちで飽きてきたなあ」

 石膏像を元の場所に戻してから、小川は肩を回す。
 平屋はタブレットにアルファベットを入力し、

「腰抜かしといて何言ってるんですか?確かに、アナグラム解析だと『放送室(HOSOSHITSU)』が出ましたよ」

 と言い放った。