探偵研究部。――カケラノセカイ―― ④文化祭の謎を追え!

 やってきた三人の姿を見た平屋が思わず声を上げた。

「狭間先輩! 笠置先輩! 玉田先輩! どうしてここに!?」

「どうしてって、ずいぶんなご挨拶だね。相変わらず口が悪いなあ、君は」

 黒髪のショートカットを揺らす背の高い女子が、劇団員のようなハリのある声で楽し気にこちらを見る。

「で、で、で、でた――――!!!」

 小川はお化けでも見るかのように、やっと声をあげると、

「なんだい。人を化け物みたいに」

 きりっとした雰囲気を崩して笑った。

「うわー。かっこいい人……」

 智子は思わず声を上げた。ブレザーの制服にスラックス姿がやたら似合っている。

「おい、狭間。俺たちも中に入れろ」

 後ろからのんびりとした声が聞こえた。同じブレザーの制服を着た、大柄でマッシュルームカット、ゆるめの口元の笠置。

「あいっかわず、埃っぽい部室だなあ」

 口元をとがらせているのは、紺色のパイピングがほどこされた紺色の詰襟を着た、小柄で角刈りのような短髪の玉田だった。

「掃除はちゃんとしてますよ」

 と平屋が頬をふくらませると、

「この高杉に呼ばれたんだよ。探偵研究部が、どーにも文化祭の出し物が決まらなくて困ってるって言うから。はい、差し入れ」

 狭間はドーナッツの箱を未知に渡し、

「あ、ありがとうございます」

 未知はおずおずと両手で受け取ると、その隙に狭間は未知の顎をながれるような動きで、くいっと上げた。

「おー。君が、噂の外交官令嬢の有栖川美知さんか。うわー! かわいいね」

「きゃ――――!」

 智子が歓喜の黄色い声を上げる。
 慌てて小川は、

「やめて! そいつは毒牙にかけないで!!」

 と、たまらず大声をあげた。
 小川のその慌てっぷりに笠置と玉田は笑う。満足げに狭間は未知から手を離すと、

「確かに、守ってあげたくなる『お姫様』だね」

と笑った。

「やめてください! こいつら耐性ないんだから!」

 と小川は青くなって間に入った。
 未知は何が起こってるのか分からず、目をぱちくりとしていた。

「未知、気をつけて。狭間さん。あの人、人タラシだから」

 と平屋が耳打ちした。

 ***

「おいしー」
「おいしー」

 ニコニコと未知と智子がドーナツを頬張ってる姿を見て、狭間が言う。

「いいねえ、女の子二人もいると華やかで」

「あー、まあ、それは」

 頭を掻く小川と対照的に、据わった目で平屋が言う。

「それはそうと、教えてもらえるんですよね、七不思議のヒント」

 平屋はパイプ椅子に並んだOG・OB三人に詰め寄る。

「まあまあ。この噂、真偽はともかく、昔からあるってことだけは分かってる。特にピアノなんて、一番わかりやすい七不思議だと思うけど。小川にしては随分、小さくまとまっちゃってるじゃない?さあ、現役探偵諸君。このまんま安楽椅子探偵するか、現場を駆け回るか、君たちはどっちを選ぶ?」

 にやりと意地悪く目を細める狭間の言葉に、

「ピアノ……」

 と、つぶやいた未知は、ドーナツを食べ終わった口を紙で拭いてから、おもむろに立ち上がり、部室から飛び出した。

「現場に行ってみます!」

 未知が走り出したら、小川と平屋もついていくしかない。

「あいつ、夏休み終わってSPが外れてから自由にしすぎじゃないですか?」

 タブレットを小脇に抱えながら平屋は小柄な未知の背中を追う。

「まーな。生意気なのは、後輩の伝統芸みたいなもんだ」

 苦笑いしながら小川はうなずいた。