探偵研究部。――カケラノセカイ―― ④文化祭の謎を追え!

 この学園に伝わる、七不思議

 一、無人で鳴り響くピアノ
 二、こちらを向く美術室の石膏像
 三、真夜中に叫ぶ校内放送
 四、上がってるのに下がっている無限階段
 五、機械仕掛けのドッペルゲンガー
 六、踊り嗤う骨格標本
 七、異界へ引き込まれる魔の鏡

 部室には西日がさらに傾き、外は気の早い星がまたたき始めている。
 未知が蛍光灯のスイッチを入れると、ブウン……と古めかしい音を立てて電気が灯る。
 その明かりが更に五人の顔に深く影を落とす。
 高杉がいつもと違い、トーンを落として話し出した。

「実はさあ……この学園には、昔っから七不思議が伝わってるんだよ」

「『学園』じゃなくて『学校』でしょ」

 平屋の冷静な突っ込みに、高杉は眉をひそめた。

「いやさ、『学園』のほうが雰囲気出るじゃん」

「何の雰囲気だよ。それにこんな七不思議、聞いたことねーぞ!」

 小川が言えば、高杉は

「そりゃ、お前、休み時間中体動かしてばっかで、うわさ話に乗ってこないからじゃん。みんなだいたいは聞いたことあるだろ?」

 と聞けば、平屋と未知は首を横に振った。
 休み時間、大体タブレットとにらめっこして動かない平屋と、超集中で予習をしているような未知も聞いたことがなかった。

「あーあ。探偵の部活なのに、君たちもうすこし、世情に詳しくなって? ほら、このピアノのなんてマジで有名じゃん?  バッハ? だのベートーベンだのの目が動く、とか」

「おれ、そーいうのマジで苦手で!」

 ふるふると小川は首をふる。

「骨格標本はなんか小学校の時、聞いたことあるな……」

 平屋は首を捻った。

「でも、あくまでうわさですよね?高杉先輩、見たことあるんですか?」

 未知が尋ねると、高杉が手のひらを上に向けた。

「うんにゃ。見たことはない。でも、この七つのうわさを、謎解きの展示にしたらウケるんじゃないかって思った。謎解きしながらのスタンプラリーなんて、今流行ってるじゃん。どうよ?」

 その言葉に、未知が異論を唱えた。

「ってことは、高杉先輩。私たちに、実際にこの七つのうわさ話を検証しろってことなんじゃないですか?」

「え!」
「まじで!」

 探偵研究部三人が、高杉をじろりと見る。

「そーそ。さすが未知ちゃん。その通り。どこにあるのかも、どこで見れるかも、本当かどうかも分からないこの噂。君たち探偵研究部の名に懸けて、まずは探してみてくれるかな?」

「その間、私と高杉先輩で、飾り付けとか、他の作り物の準備してるから。ねっ? お願い」

 智子が小首をかしげ未知を見る。

「ぐ、ぐぬぬ……」

 三人は、首をタテに振るしかなかった。

 まずは平屋がタブレットで、学校の見取り図を表示する。学校要覧のコピーのそれには各教室などが細かく書かれている。未知は、企画書のコピーにチェックを入れていく。

「えーーっと、なんだっけ。七つもあるんだろ? それ」

 コピーを小川は覗き込むと、

「闇雲に探すのは非効率ですね。当たりつけていきましょう」

 平屋がピンチアウトで画像を拡大した。

「一、無人で鳴り響くピアノ……学校でピアノがある場所って、音楽室と体育館のグランドピアノですかね?」

 未知は記憶をたどって言う。

「これは簡単だ。場所が書いてある。二、こちらを向く美術室の石膏像――美術室を探せばいい」

 タッチペンで赤く画像に印をつけていく。

「三、真夜中に叫ぶ校内放送……。放送室だろうな」

「四、上がってるのに下がっている無限階段。初めて聞いたな。無限階段? どこまでも続くってことか? そんな場所はむしろ高杉たちの範疇なんじゃないの?」

「五、機械仕掛けのドッペルゲンガー……これさっぱりわかんない」

「六、踊り嗤う骨格標本。骨格標本は理科室。これもクリア」

「七、異界へ引き込まれる魔の鏡……。鏡がある場所なんてたくさんあるぞ。おい、高杉? 他になんかヒントになりそうなうわさ話はないのか?」

 高杉はにやにやしながら、入口の外をちらちら見ている。

「そう言うと思った。……だから、俺よりもこの学校の歴史に詳しい、『先達』をお呼びしました。先輩たち、どうぞ」

 扉をあけると、三人の人影が、ぬっと部室に入り込んだ。
 その姿を見て、小川は声にならない叫びを上げた。