文化祭も昼を過ぎ、客足も最高潮に達していた――
小川はトルソーのキャシィちゃんを連れながら、宣伝を兼ね、七不思議の動作確認などで校内を歩き回っていた。
平屋は七不思議にシステムエラーがあれば、受付から即座にメイド服を翻して現場に向かう。
調整の最中、ギャラリーからの
「メイドさん、こっちむいてー」の声に、
「ああ?!」
と非常に治安のよろしくない顔で振り返るので、逆に七不思議になりそうだった。
未知のほうは、ピンクウサギの頭が重すぎて、ピアノを演奏するたびに「がっくんがっくん」と頭が揺れる。
それがちょうどいいシュールさを生んでいた。
時々、控室にしている部室に涼みに来ては、
「演奏中よりも、帰ってくるときのほうがもみくちゃになって大変だったーー」
と智子にハンディファンを何個も向けられながらタオルを首に巻いている。
どんな令嬢だ。
高杉のほうも、
「うえーー、のどからっからーー」
と水を飲みに来ては、
「あーー今ね、有志の発表だったよ。女子テニス部の乃木坂ダンス! 田代も藤崎ちゃんもがんばってたよ」
と情報を伝えてくれた。
そろそろ、スタンプラリーの台紙も残りが少ない。
*****
「やっと七つ揃ったか。まあ、なかなか見どころあったな」
第二中学の執行部と小笠原は、視察を終えて帰るところだった。
――悔しいが、いろいろこちらの学校も改善しないといけない。
(特にあの熱量。あれだけは第一中学の専売特許なのだろうか)
スタンプラリーを制覇して、もらったのが「探偵研究部お手製缶バッジ」だ。
「Detective Deduction Club」
――探偵・推論・部
(この語感、ナイチンゲール(未知)が考えたものだろうな――)
彼女の姿を思い浮かべながら、昇降口前の廊下で子供たちにもみくちゃになっているウサギの着ぐるみとすれ違った。
「あ、あのウサギ。なかなかいい演奏してたな」
そんな独り言を言って、外靴に履き替えた。
同じころ、昇降口前の文化祭本部の入口テントに、五十代くらいの男性が現れた。
男性は、麻のジャケットにジーンズ、茶色のシャツ。そして足元はハイカットのブーツだった。
テンガロンハットをかぶっており、なんとなく一般人と違うオーラがある。
生徒会副会長の成瀬今日子は、
「受付名簿にお名前お願いします」
と名簿を差し出すと、その男性は、ボールペンを手に取り指先でくるりと回し、握りしめた。
「とううん‥‥‥かつじ様‥‥‥」
成瀬が声に出すと、男性は、ああ、と笑顔を見せ、パンフレットを受け取る。
近くにいた教員が、その男性を見てから、成瀬の手元の名簿を確認する。そして慌てて職員室へかけて行った。
来賓名簿には
「東雲勝治」
と書かれている。
バタバタと校長先生が玄関に駆け込んで来た。そして、赤と白のリボンでできた来賓用バッジを渡そうとするが、男性が片手でそれを辞する。
そして、その後ろ――
同じ年ごろの他の男性四人を指さした。
男性は、挨拶するみたいに帽子をひょいと上げて、四人に合流する。その笑顔は屈託のないもので、はじめからずっと五人でいたみたいに見えた。
その五人は、プログラムを開いた。
「学園七不思議、後輩たちからの挑戦状だ」
探偵研究部。――カケラノセカイ―― ④七不思議の謎を追え・了
小川はトルソーのキャシィちゃんを連れながら、宣伝を兼ね、七不思議の動作確認などで校内を歩き回っていた。
平屋は七不思議にシステムエラーがあれば、受付から即座にメイド服を翻して現場に向かう。
調整の最中、ギャラリーからの
「メイドさん、こっちむいてー」の声に、
「ああ?!」
と非常に治安のよろしくない顔で振り返るので、逆に七不思議になりそうだった。
未知のほうは、ピンクウサギの頭が重すぎて、ピアノを演奏するたびに「がっくんがっくん」と頭が揺れる。
それがちょうどいいシュールさを生んでいた。
時々、控室にしている部室に涼みに来ては、
「演奏中よりも、帰ってくるときのほうがもみくちゃになって大変だったーー」
と智子にハンディファンを何個も向けられながらタオルを首に巻いている。
どんな令嬢だ。
高杉のほうも、
「うえーー、のどからっからーー」
と水を飲みに来ては、
「あーー今ね、有志の発表だったよ。女子テニス部の乃木坂ダンス! 田代も藤崎ちゃんもがんばってたよ」
と情報を伝えてくれた。
そろそろ、スタンプラリーの台紙も残りが少ない。
*****
「やっと七つ揃ったか。まあ、なかなか見どころあったな」
第二中学の執行部と小笠原は、視察を終えて帰るところだった。
――悔しいが、いろいろこちらの学校も改善しないといけない。
(特にあの熱量。あれだけは第一中学の専売特許なのだろうか)
スタンプラリーを制覇して、もらったのが「探偵研究部お手製缶バッジ」だ。
「Detective Deduction Club」
――探偵・推論・部
(この語感、ナイチンゲール(未知)が考えたものだろうな――)
彼女の姿を思い浮かべながら、昇降口前の廊下で子供たちにもみくちゃになっているウサギの着ぐるみとすれ違った。
「あ、あのウサギ。なかなかいい演奏してたな」
そんな独り言を言って、外靴に履き替えた。
同じころ、昇降口前の文化祭本部の入口テントに、五十代くらいの男性が現れた。
男性は、麻のジャケットにジーンズ、茶色のシャツ。そして足元はハイカットのブーツだった。
テンガロンハットをかぶっており、なんとなく一般人と違うオーラがある。
生徒会副会長の成瀬今日子は、
「受付名簿にお名前お願いします」
と名簿を差し出すと、その男性は、ボールペンを手に取り指先でくるりと回し、握りしめた。
「とううん‥‥‥かつじ様‥‥‥」
成瀬が声に出すと、男性は、ああ、と笑顔を見せ、パンフレットを受け取る。
近くにいた教員が、その男性を見てから、成瀬の手元の名簿を確認する。そして慌てて職員室へかけて行った。
来賓名簿には
「東雲勝治」
と書かれている。
バタバタと校長先生が玄関に駆け込んで来た。そして、赤と白のリボンでできた来賓用バッジを渡そうとするが、男性が片手でそれを辞する。
そして、その後ろ――
同じ年ごろの他の男性四人を指さした。
男性は、挨拶するみたいに帽子をひょいと上げて、四人に合流する。その笑顔は屈託のないもので、はじめからずっと五人でいたみたいに見えた。
その五人は、プログラムを開いた。
「学園七不思議、後輩たちからの挑戦状だ」
探偵研究部。――カケラノセカイ―― ④七不思議の謎を追え・了



