探偵研究部。――カケラノセカイ―― ④文化祭の謎を追え!

 九月七日(月)

 注文していた「部Tシャツ」が届いた。
 平屋と未知は大喜びで袖を通す。

 平屋がデザインしたもので、背面の
「Detective Deduction Club」
 のスペルは、未知が考えた。
 意味わからんが。

 オカルト研究会のも届いてて、智子が描いたっていう、なかなかかわいいお化けのTシャツに、未知が「いいなー」と言ったため、見本品の一枚を交換し合う一幕もあった。
 サッカーじゃねえか。
 と思ったがだまっておいた。

 九月八日(火)

 七不思議のアップデートに、いよいよ動いた。

『一、無人で鳴り響くピアノ』
 こいつは、PTA会議室に打ち捨てられたアップライトピアノを生かす方向に決まった。ピアノも目立つ場所にせり出させて、ホラー調にデコレートする。
 ちょうどいい感じで調律も狂ってるらしく(未知:談)、音声をカセットテープに録音して、定期的な間隔で鳴らす。「反響する板を自作すれば、それっぽく聞こえるだろう」と平屋が提案したところ、未知のほうから、「テープじゃなく、不協和音の生音でみんなを驚かせたい」と楽譜まで自作して持ち込んできた。

『二、こちらを向く美術室の石膏像』
 これは、東雲勝治作品であることが明らかになり、美術室での待遇が変わった。
 別珍の布をかぶせた台座に鎮座することになり、七不思議の目玉としては、文句のない展示になった。

『三、真夜中に叫ぶ校内放送』
 これは残念だがそのままは使えなかった。
 ここは、高杉らオカ研の出番だ。
 校内各所に貼られたQRコードを読み取ると、放送部員になりきった高杉の「呪いの校内放送」がスマホから流れる仕掛けだ。イヤホン推奨だが、ガチ目に怖い。

『四、上がってるのに下がっている無限階段』
 これこそが七不思議のメインイベントだろう。
 存在が分かってすぐに、上にかぶせられていたレリーフは、別の踊り場の壁に移動させられ、あっという間に「第一期 卒業生 東雲勝治作品」として、校長室と職員室へ上がる階段に堂々と展示されている。こうまで手のひら返しなのも笑ってしまう。
 アクリル絵の具のペイントだが、長年隠されていたことによって、奇跡的に保存状態は良かったと聞いた。

『五、機械仕掛けのドッペルゲンガー』
 このミニフィルムは、プロジェクターの力を借りて、ステージ展示として申請中だ。
 高杉の案では、サイレント映画みたいに、脇で生ナレーションを入れる予定らしい。
 悪いが、俺は見ないけど。

『六、踊り嗤う骨格標本』
 理科室の標本は、平屋が本気出して取り組んでいる。
 とりあえず、テグスを引いて人力で動かすのはやめた。

 骨格標本の胸元にタブレットを固定して持たせた。
 画面には、平屋がモーションキャプチャーを利用して作った、「踊る骨格標本のCG」が映る。あのキレキレ腰ダンスの再現だ。
 ガイコツなこともあり、とりあえずまだ生徒会からのNGは来ていない。

 そして極めつけは、実物の標本にスマホの「バイブ機能」を利用してガタガタと共鳴させる。突然動き始める骸骨に、平屋そっくりにキレ気味に踊るCGは、智子に大うけだ。

『七、異界へ引き込まれる魔の鏡』
 ここは女子二人に任せた。
 二人は楽しそうにホームセンターから、マジックミラーシートとセンサーライトを買ってきた。空間にライトとハロウィンマスクを仕込んである。
 人がそこに立てば、ライトが点灯して、内側のハロウィンマスクが現れる、びっくりミラーに早変わりだ。

 九月十日(木)
 スタンプラリー台紙の準備やら、参加賞の缶バッジ作成で目が回るほどの忙しさだ。
 こちらの七不思議のアップデートは順調だったが、学校全体で問題が起きた。

 生徒会の【文化祭の出店・展示物の要綱】に対して、不満を募らせていた一部生徒たちによる暴動が起きたのだ。
 生徒側の言い分はこうだ。

「生徒たちの自由な発想で考えた、自主的な発表の場を妨げる理由は、生徒会には無いはずだ。
 どんな表現であっても、それはその時の生徒たちが話し合い『最適だ』と出した答えだ。押さえつける理由などない。
 この生徒会文化祭要綱は、ただ生徒たちを押さえつけるための横暴だ 」
 
 とのことらしい。
 
 もともと、ステージ発表などを考えていたグループにとってみれば、
『すべての企画内容は、日常の部活動・同好会活動の延長線上にあり、かつ「日々の活動成果の発表の場」として客観的に証明できるものでなければならない』
 なんて生徒会からの堅苦しい後付けルールで縛られるのは、我慢できなかったらしい。

 仕方なく、ここはマタロウが折れ、
「きちんとした事前の企画書の提出があれば、発表を認める」
 となった。

 疲れ果てた顔で、マタロウは俺を見て、

「おまえのせいだからな。小川。お前が、先生方の前で、東雲勝治の未発表作を見つけたりするから。
 あの壁画に感化されたやつらに、変なやる気をあたえちまったんだ」
 
 なんて言う。俺は肩をすくめて言ってやった。

「おまえこそ、『そっちが発表するなら、執行部も自由にやらせてもらうからな!』って啖呵きってたじゃねーか」

 かくしてバタバタと準備は大詰めを迎えて、明日、九月十一日、文化祭を迎える。