探偵研究部。――カケラノセカイ―― ④文化祭の謎を追え!

 三人は足早に理科室に向かっていた。

「オカ研の連中、これで身動きできませんね」

 平屋が意地悪そうにニヤリと笑う。

「そう。もう気づいてると思うけど、今回のこの七不思議、仕掛け人がいる」

 うん、と未知はうなずく。

「ピアノの『花のワルツ』。
 タブレットで聞かせてもらった音のひずみは、古い磁気テープの録音なら、納得です。
 誰かが、カセットデッキで録音して、あの日、流したんでしょう」

「四十年前に仕掛けられたイタズラがそのままの姿で残っているわけがない。
一番面倒な、七不思議探しは俺たちに任せて、一番おいしいところを掻っ攫って行くってやり口、俺はよーーく知ってる」

(あの人たちだ……。あの人たちが、ただの善意で応援に来てくれるはずが無いのだ……!)

『六、踊り嗤う骨格標本
 ヒント:君の技術が勝るか、こちらが上か』


 理科室には、マリオネットの要領でテグスにつられている骨格標本がそこにあった。

「最・悪……」

 平屋がうなだれた。

 笠置先輩そっくりのDJが、

『Shall we dance?』と言いながら、ターンテーブルで軽快なディスコサウンドを鳴らす。

 天井にはいつの間にかくす玉のようにミラーボールが吊り下げられてる。

 脚立の上から黒子になって骨格標本を操るのは、玉田先輩だ。

 カタンカタンとタップダンスを踊る骨格標本のシュールさに、もはや突っ込む気力は三人には残っていない。  
 
「なんか、絶対おちょくられている気がする!」

 と今まで冷静だった平屋が爆発した。

 平屋は、代名詞のようなタブレットを脇に置いた。
 未知はポカンとしたが、小川は、頭を抱えた。

(平屋がキレた。コレ、面倒くさくなる奴だ)

 サイケデリックな音と光が洪水のようにミラーボールと共にまわる。
 曲は、ディスコサウンドの代名詞『That's the way』だ。

「いいでしょう! ガイコツごときが、踊りで僕に挑むとは! 身の程をしれ!」

 鋭く言ったかと思えば平屋は、一旦ぐいっと腰を落とした後、いきなりガイコツの動きにシンクロさせて完璧なダンスで応酬する。

 アハン、アハン

 曲の軽快なリズムに合わせて、目は完全に据わったまま、キレキレの腰つきで踊り出す。

 驚くほど柔らかく、平屋は手首、足首、関節を動かし、ちょっと艶めかしくもターンする。
 そして、スピードをあげて、ガイコツを追い詰めていく。

 アハン、アハン

 あまりの腰つきに、たまらず小川は未知の目をその手で隠した。
 後奏まで、平屋はスピードを緩めない。
 最後、ピストルで打ちぬくようなポーズを決め、平屋は踊り切った。

 笠置先輩も、玉田先輩も、骨格標本も、平屋のダンスについていけず、テグスが絡み合い、骨格標本は打ち負かされた。

 本気度に度肝を抜かされ、小川も未知も言葉も無かった。
身動きが取れなくなった骨格標本は、降参とばかりに口を「パカ」と開けると、最後の暗号が書かれた紙を取り出した。

「これで、最後ですね」

 タブレットを抱え、平静を装う平屋の頭からは、ヒートアップした煙が出ているように見えた。
 紙に書かれていたのは、最後の七不思議の場所、「一階の洗面台」を示していた。

 ***

『七、異界へ引き込まれる魔の鏡
 ヒント:それを目にしたら、もう戻ってはこれないだろう――』

 一階の洗面台の一番端の鏡は、オペラ座の怪人のトリックで、鏡をずらせば隠された空間がそこにはあった。
 トリックアートで無限に続くかのように塗られたその空間には小さな紙が置いてあった。

 小川は口を真一文字に結んで、むんず、と最後の紙を手に取った。
 そこには、

「部室へもどれ」

 とだけ書いてあった。

(うん、確かに、もう戻りたくナクナッチャウかもしれない……)

 気が遠くなりそうになったが、気を取り直して、

「ぜったい戻るわ! ボケが!!」

 小川は盛大に突っ込みを入れた。