「疲れた……」
急に漏れた言葉に、飛鳥は慌てて周囲を見回した。同じシフトのバイトリーダーはバックヤードで作業をしており、店内には客もいない。良かったと、胸を撫で下ろす。もうすぐ終業時刻とはいえ、気を抜いていた。
それでも、今日はマシな方だ。いつもは昼休みに三十分ほど占いをして脳を使うけれど、今日は良心的な客でゴールデン弁当まで買ってくれた上に、鑑定は五分ほどで切り上げてくれた。しかも、内容は高校生のくせに健康運だ。
「清瀬、翔」
女子生徒たちがこぞって好意を向けるのもわかる気がする。飛鳥から見たら相変わらず変わり者ではあるものの、優しくて誠実で、何よりも気前が良い。
ホットスナックを補充しながら、きゅっと唇を引き結ぶ。あと三十分だ。ゴールデン弁当で蓄えたエネルギーを思い出し、飛鳥は気合いを入れ直した。
しばらく作業をしていると、自動ドアの開く音と来客を知らせる音楽が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ」
顔を上げて、少しだけ驚いた。
「あれ、翔?」
一瞬わからなかったのは、学生服ではなくグレーのセットアップを身につけているからだ。シンプルでセンスの良いスタイリングは、素材の良さが際立って見える。
「どこのモデルさんかと思ったよ」
お世辞抜きでそう言うと、翔は少しだけ照れたようにはにかんで「うん」と言った。
「あっ! もしかして、デート?」
「え? ……いや」
「違うの? じゃあ、いつもそんなオシャレなんだな。よく似合ってる」
「……まあ、ちょっとくらい一緒にいられたらなとは、思ってるから」
その言葉を不思議に思い、店内の丸時計を見上げる。もうすぐ二十時だ。飛鳥には恋愛の細かいルールみたいなものはよくわからないけれど、少なくとも高校生がデートをする時間ではないことくらいわかる。変わり者の翔はちょっと変な恋愛をしているのだろうか。少し心配でじっと翔の顔を見つめると、翔はもう一度はにかんだ。
「飛鳥くんの家って、和樹の家の隣なんだってね」
「うん。明らかに立派じゃない方が俺の家」
「俺バイクで来てるから、よければ帰り乗って行く?」
「バイク!? 乗ってみたい!」
「もうすぐバイト終わる?」
「二十時までだから、着替えたらすぐに表に行くよ」
翔はサイダーを二本買うと、手を振って店から出て行った。
それからすぐに二十時になり、飛鳥は急いで着替えて挨拶を済ませると、店の表へと回り出た。翔は暗がりでもわかるほどピカピカしたバイクの横に立って、飛鳥に手を振っている。
「すげえっ! でっかい! かっこいい!」
「ははっ! ありがとう。バイク、好き?」
「うん。詳しいことは何も知らないけど、いつか乗りたいと思ってたんだ。本当に一緒に乗っていいの?」
「もちろん。よければ、ちょっとツーリングしようか」
翔に促されるままにヘルメットを被り、念願のバイクに乗ると、飛鳥は翔にぎゅっとしがみついた。そんなに仲良くないのにこれほど密着するなんて、なんだか変な感じだ。それなのに不思議と安心するこの感覚が面白くてくすくす笑っていると、腰に回した手を優しく叩かれた。
「ちゃんと掴まってて」
「うん」
バイクがゆっくりと動き出し、すぐにスピードにのる。初めて感じる風に、フルフェイスのヘルメットの中で「おぉ!」と感嘆の声を上げた。
しばらく車通りの少ない道を走り、やってきたのは飛鳥の家にほど近い市民公園だった。ここは夜になると不良の溜まり場だとか、チンピラの集会場とか言われているけれど、今日は誰もいないようだ。ちょっと安心しつつ街灯に照らされたベンチに腰掛けると、ふっと体から力が抜ける。
「疲れた?」
気遣わしげに尋ねられて、飛鳥はブンブンと首を横に振った。心がいつになく元気な気がする。
「楽しかった! 夢が叶った」
「それは良かった。はい、これ」
手渡されたのは、先ほど翔が購入していたサイダーだ。まだ十分に冷たいそれは、バイト終わりに一気飲みするには最高の代物に思える。でも少しだけ疑問だ。
「……これ、俺にくれるの?」
こくりと頷いた翔に眉を寄せる。まさか、飛鳥のために買っていたとは少しも思わなかった。
「サイダー、好きじゃなかった?」
「いや、大好きだけど。この後会う人に渡すものかと」
「この後? 誰とも用事なんてないけど」
「そうなの?」
そうなると、やはり今日は本当にデートではないということか。誰かと一緒に過ごしたいとか言っていた気がするけれど、ますます変な男だ。思わず首を傾げると、隣の翔は小さく息を吐き出した。
「飛鳥くんってちょっと不思議だよね」
「不思議? 俺が?」
翔の方がよっぽど不思議なのに、自分のことはよくわからないのだろうか。ふと考えて、翔の右手を手に取った。昨日ぶりに見る手のひらははっきりとした線がいくつもあり、運と意志の強さを感じる相が多い。
「やっぱりね。これわかる? ちょっと不思議な人に現れる線。俺にもあるけど、翔にもあるよ。……あっ! この線もあるのか。すごく良い線だよ」
「これ? そうなんだ」
「俺の弟にもあるんだけど、才能も人気もあるって証拠」
「へえ。……飛鳥くん、弟いるんだね。仲良し?」
「うん! 俺と違って優秀な子でさ、隣町の高校に通ってる」
「そうなんだ。じゃあ、一年生だ」
「そうそう。そろそろ塾から帰ったかなあ。勉強ばっかりしてるからさ」
翔の手を手持ち無沙汰に握りながら、彼のおしゃれな服をまじまじと見つめる。
「今度さ、おすすめのブランドとかあれば教えて。ファッションくらいは物知りな兄ちゃんを気取りたいから」
「いいよ。飛鳥くんは俺の恩人だからね。飛鳥くんのお願い事はなんでも聞くんだ」
「はははっ! なんか恩を売ったっけ? やっぱり俺なんかより翔が変だよ」
楽しくてケラケラと笑うと、心がどんどん軽くなる。そういえば、真っ直ぐに家に帰らないなんて初めてかもしれない。帰ったらなんやかんや家事が待っているけれど、今日はいつもより少しだけ頑張れそうだ。そう思うのに、心が軽くなるのと比例するように瞼が重たくなってくる。
「飛鳥くん、眠い? 帰ろうか」
「いや、大丈夫。もうちょっとだけここにいる。翔は帰っても良いよ」
「まさか。飛鳥くんって眠り姫なんでしょ。ここでも普通に寝そうだから、隣にいてあげないと」
「あー、それ翔も知ってるんだ。絶対馬鹿にされてると思わない? それか、俺の寝顔が可愛すぎるか」
「……もたれ掛かって寝ていいよ」
「さすがに悪いよ」
断っておきながら、飛鳥は惜しいなと思った。自分のことなのによくわからない。でも、もたれかかって寝ていいなんて、頼れる優しさが心地良くて、何かが溢れそうになる。
「……うちさ、ばあちゃんと弟と三人暮らしなんだよなぁ。ばあちゃんも年取ってきたし、弟には行きたい大学に行って欲しいし、こう見えて悩み多きお年頃なんだよね」
気がついたら独り言のように話していた。隣の翔は黙ったままこくりと頷く。手は飛鳥に弄ばれるがままだ。その手にきゅっと握り返されて、飛鳥は慌てて手を離した。
「……俺はさ——」
翔が何かを言いかけた、その時だった。公園の入り口の方から聞こえてきた大声。街灯に照らされたのは、ガラの悪そうな若い男三人組だ。公園に入ってきた彼らは、何やら悪態をつきながら飛鳥たちに近づいてくる。金曜の二十一時前。酒に酔っているのかもしれない。
「おいっ!」
いかにも威圧的で嘲笑するような嫌な声に、ビクッと肩が跳ねる。
「……俺らに言ってるのかな」
どうやらチンピラが出没するという噂は本当だったらしい。もしかして、彼らの縄張りを荒らした罪で殴られるとか。ちらりと翔を見遣ると、彼は無表情でベンチから立ち上がった。
「翔?」
「ちょっと待っててね。お話ししてくるよ」
一瞬飛鳥を振り返ってそう言うと、そのまま男たちに近づいていく。飛鳥が唖然としているうちに何やら言葉を交わしたと思ったら、次の瞬間には大声で喚きながら襲いかかる男たちを次々と放り投げた。見間違いだろうか。それにしては鮮やかすぎる。
「すご……」
飛鳥がつぶやくのと同時に、男たちは逃げるようにフラフラと公園から出ていった。すべてが一瞬のことで、頭がついていかない。そのうちに翔がくるりと振り返り、小走りで駆け寄ってきた。
「ごめんね。せっかく楽しかったのに」
じっと翔の顔を見つめる。あまりにも強い美しさがキラキラと煌めいて、自然と身体中にゾワゾワと鳥肌が立った。
「……兄貴」
「え?」
「兄貴って、呼んでも良い? いや、呼んでも良いですか?」
「……えっと、飛鳥くん?」
「ゴールデン弁当くれるし、バイクに乗せてくれるし、サイダーくれるし、大人を背負い投げできるし、格好良すぎる! 俺、兄貴についていきたい!」
「待って、待って! なんか展開が変じゃない!?」
頬を自分の両手で包むと、口から「ひゃー」だなんて声が漏れる。心臓がまだドキドキしている。
「帰りは兄貴のバイクの横を走ります! どこまでもついていく!」
目を輝かせながらそう言うと、翔はなぜだか額に手をやって瞼を閉じた。
急に漏れた言葉に、飛鳥は慌てて周囲を見回した。同じシフトのバイトリーダーはバックヤードで作業をしており、店内には客もいない。良かったと、胸を撫で下ろす。もうすぐ終業時刻とはいえ、気を抜いていた。
それでも、今日はマシな方だ。いつもは昼休みに三十分ほど占いをして脳を使うけれど、今日は良心的な客でゴールデン弁当まで買ってくれた上に、鑑定は五分ほどで切り上げてくれた。しかも、内容は高校生のくせに健康運だ。
「清瀬、翔」
女子生徒たちがこぞって好意を向けるのもわかる気がする。飛鳥から見たら相変わらず変わり者ではあるものの、優しくて誠実で、何よりも気前が良い。
ホットスナックを補充しながら、きゅっと唇を引き結ぶ。あと三十分だ。ゴールデン弁当で蓄えたエネルギーを思い出し、飛鳥は気合いを入れ直した。
しばらく作業をしていると、自動ドアの開く音と来客を知らせる音楽が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ」
顔を上げて、少しだけ驚いた。
「あれ、翔?」
一瞬わからなかったのは、学生服ではなくグレーのセットアップを身につけているからだ。シンプルでセンスの良いスタイリングは、素材の良さが際立って見える。
「どこのモデルさんかと思ったよ」
お世辞抜きでそう言うと、翔は少しだけ照れたようにはにかんで「うん」と言った。
「あっ! もしかして、デート?」
「え? ……いや」
「違うの? じゃあ、いつもそんなオシャレなんだな。よく似合ってる」
「……まあ、ちょっとくらい一緒にいられたらなとは、思ってるから」
その言葉を不思議に思い、店内の丸時計を見上げる。もうすぐ二十時だ。飛鳥には恋愛の細かいルールみたいなものはよくわからないけれど、少なくとも高校生がデートをする時間ではないことくらいわかる。変わり者の翔はちょっと変な恋愛をしているのだろうか。少し心配でじっと翔の顔を見つめると、翔はもう一度はにかんだ。
「飛鳥くんの家って、和樹の家の隣なんだってね」
「うん。明らかに立派じゃない方が俺の家」
「俺バイクで来てるから、よければ帰り乗って行く?」
「バイク!? 乗ってみたい!」
「もうすぐバイト終わる?」
「二十時までだから、着替えたらすぐに表に行くよ」
翔はサイダーを二本買うと、手を振って店から出て行った。
それからすぐに二十時になり、飛鳥は急いで着替えて挨拶を済ませると、店の表へと回り出た。翔は暗がりでもわかるほどピカピカしたバイクの横に立って、飛鳥に手を振っている。
「すげえっ! でっかい! かっこいい!」
「ははっ! ありがとう。バイク、好き?」
「うん。詳しいことは何も知らないけど、いつか乗りたいと思ってたんだ。本当に一緒に乗っていいの?」
「もちろん。よければ、ちょっとツーリングしようか」
翔に促されるままにヘルメットを被り、念願のバイクに乗ると、飛鳥は翔にぎゅっとしがみついた。そんなに仲良くないのにこれほど密着するなんて、なんだか変な感じだ。それなのに不思議と安心するこの感覚が面白くてくすくす笑っていると、腰に回した手を優しく叩かれた。
「ちゃんと掴まってて」
「うん」
バイクがゆっくりと動き出し、すぐにスピードにのる。初めて感じる風に、フルフェイスのヘルメットの中で「おぉ!」と感嘆の声を上げた。
しばらく車通りの少ない道を走り、やってきたのは飛鳥の家にほど近い市民公園だった。ここは夜になると不良の溜まり場だとか、チンピラの集会場とか言われているけれど、今日は誰もいないようだ。ちょっと安心しつつ街灯に照らされたベンチに腰掛けると、ふっと体から力が抜ける。
「疲れた?」
気遣わしげに尋ねられて、飛鳥はブンブンと首を横に振った。心がいつになく元気な気がする。
「楽しかった! 夢が叶った」
「それは良かった。はい、これ」
手渡されたのは、先ほど翔が購入していたサイダーだ。まだ十分に冷たいそれは、バイト終わりに一気飲みするには最高の代物に思える。でも少しだけ疑問だ。
「……これ、俺にくれるの?」
こくりと頷いた翔に眉を寄せる。まさか、飛鳥のために買っていたとは少しも思わなかった。
「サイダー、好きじゃなかった?」
「いや、大好きだけど。この後会う人に渡すものかと」
「この後? 誰とも用事なんてないけど」
「そうなの?」
そうなると、やはり今日は本当にデートではないということか。誰かと一緒に過ごしたいとか言っていた気がするけれど、ますます変な男だ。思わず首を傾げると、隣の翔は小さく息を吐き出した。
「飛鳥くんってちょっと不思議だよね」
「不思議? 俺が?」
翔の方がよっぽど不思議なのに、自分のことはよくわからないのだろうか。ふと考えて、翔の右手を手に取った。昨日ぶりに見る手のひらははっきりとした線がいくつもあり、運と意志の強さを感じる相が多い。
「やっぱりね。これわかる? ちょっと不思議な人に現れる線。俺にもあるけど、翔にもあるよ。……あっ! この線もあるのか。すごく良い線だよ」
「これ? そうなんだ」
「俺の弟にもあるんだけど、才能も人気もあるって証拠」
「へえ。……飛鳥くん、弟いるんだね。仲良し?」
「うん! 俺と違って優秀な子でさ、隣町の高校に通ってる」
「そうなんだ。じゃあ、一年生だ」
「そうそう。そろそろ塾から帰ったかなあ。勉強ばっかりしてるからさ」
翔の手を手持ち無沙汰に握りながら、彼のおしゃれな服をまじまじと見つめる。
「今度さ、おすすめのブランドとかあれば教えて。ファッションくらいは物知りな兄ちゃんを気取りたいから」
「いいよ。飛鳥くんは俺の恩人だからね。飛鳥くんのお願い事はなんでも聞くんだ」
「はははっ! なんか恩を売ったっけ? やっぱり俺なんかより翔が変だよ」
楽しくてケラケラと笑うと、心がどんどん軽くなる。そういえば、真っ直ぐに家に帰らないなんて初めてかもしれない。帰ったらなんやかんや家事が待っているけれど、今日はいつもより少しだけ頑張れそうだ。そう思うのに、心が軽くなるのと比例するように瞼が重たくなってくる。
「飛鳥くん、眠い? 帰ろうか」
「いや、大丈夫。もうちょっとだけここにいる。翔は帰っても良いよ」
「まさか。飛鳥くんって眠り姫なんでしょ。ここでも普通に寝そうだから、隣にいてあげないと」
「あー、それ翔も知ってるんだ。絶対馬鹿にされてると思わない? それか、俺の寝顔が可愛すぎるか」
「……もたれ掛かって寝ていいよ」
「さすがに悪いよ」
断っておきながら、飛鳥は惜しいなと思った。自分のことなのによくわからない。でも、もたれかかって寝ていいなんて、頼れる優しさが心地良くて、何かが溢れそうになる。
「……うちさ、ばあちゃんと弟と三人暮らしなんだよなぁ。ばあちゃんも年取ってきたし、弟には行きたい大学に行って欲しいし、こう見えて悩み多きお年頃なんだよね」
気がついたら独り言のように話していた。隣の翔は黙ったままこくりと頷く。手は飛鳥に弄ばれるがままだ。その手にきゅっと握り返されて、飛鳥は慌てて手を離した。
「……俺はさ——」
翔が何かを言いかけた、その時だった。公園の入り口の方から聞こえてきた大声。街灯に照らされたのは、ガラの悪そうな若い男三人組だ。公園に入ってきた彼らは、何やら悪態をつきながら飛鳥たちに近づいてくる。金曜の二十一時前。酒に酔っているのかもしれない。
「おいっ!」
いかにも威圧的で嘲笑するような嫌な声に、ビクッと肩が跳ねる。
「……俺らに言ってるのかな」
どうやらチンピラが出没するという噂は本当だったらしい。もしかして、彼らの縄張りを荒らした罪で殴られるとか。ちらりと翔を見遣ると、彼は無表情でベンチから立ち上がった。
「翔?」
「ちょっと待っててね。お話ししてくるよ」
一瞬飛鳥を振り返ってそう言うと、そのまま男たちに近づいていく。飛鳥が唖然としているうちに何やら言葉を交わしたと思ったら、次の瞬間には大声で喚きながら襲いかかる男たちを次々と放り投げた。見間違いだろうか。それにしては鮮やかすぎる。
「すご……」
飛鳥がつぶやくのと同時に、男たちは逃げるようにフラフラと公園から出ていった。すべてが一瞬のことで、頭がついていかない。そのうちに翔がくるりと振り返り、小走りで駆け寄ってきた。
「ごめんね。せっかく楽しかったのに」
じっと翔の顔を見つめる。あまりにも強い美しさがキラキラと煌めいて、自然と身体中にゾワゾワと鳥肌が立った。
「……兄貴」
「え?」
「兄貴って、呼んでも良い? いや、呼んでも良いですか?」
「……えっと、飛鳥くん?」
「ゴールデン弁当くれるし、バイクに乗せてくれるし、サイダーくれるし、大人を背負い投げできるし、格好良すぎる! 俺、兄貴についていきたい!」
「待って、待って! なんか展開が変じゃない!?」
頬を自分の両手で包むと、口から「ひゃー」だなんて声が漏れる。心臓がまだドキドキしている。
「帰りは兄貴のバイクの横を走ります! どこまでもついていく!」
目を輝かせながらそう言うと、翔はなぜだか額に手をやって瞼を閉じた。



