死んだはずの俺は言われた。『あなたもその事故の原因です』


俺が死んだ事故。
その原因は、あのチャラ男。

……とはいえ。

事故は事故だ。
故意じゃなければ、ただの不運だろ。

なのに。

天使の言い回しは、どこか引っかかる。

まるで――

「先にお伝えしておくべきことがあります」

俺の思考を遮るように、天使が口を開いた。

「魂とは、“器”を持ち、三つの世界を循環する存在です」

また、説明か。

正直、半分くらい頭がついていかない。

隣を見ると、チャラ男は明らかに顔色が悪くなっていた。

対して、あの女性は――


変わらない。


「魂は増減を繰り返しながら、三世界を経由して輪廻します」

「分かりやすく言い換えましょう」

わずかな間を置いて、天使は続けた。

「第一世界は“天国”」

「第二世界は“地獄”」

「そして第三世界が──あなた方のいた“現世”です」

……なるほど。

つまり、俺たちは前世の結果で行き先を決められる、ということか。

「違います」

即座に否定された。

……やっぱり聞こえてるだろ。

「ここは三世界のいずれにも属しません」

「そして“行き先を告げるだけの場所”でもありません」


その言い方に、少しだけ背筋が冷える。


「本来、魂は因果によって複雑に絡み合っています」

「しかし、それが歪なままでは――次の器に収まらない」


……何を言っている?


理解しようとすればするほど、逆に遠ざかっていく。


ふと見ると、チャラ男は完全に黙り込んでいた。

さっきまでの強気は消え、
ただ青ざめた顔で話を聞いている。


女性は。


やはり、動かない。


「そこで、あなた方のような“歪んだ魂”には」

「再定義と、整形の機会が与えられます」


……整形?


「あなた方に付与される“真逆の運命”」

「それは第四の世界において行われます」


第四の世界。


その言葉の響きが、妙に重かった。


「そこでは絡み合った因果を解き」

「偏った魂を均す」


均す、か。


要するに――

「……俺たちは、このままだと輪廻に戻れないから」

「一度“調整される”ってことか?」


口に出した瞬間。


天使が、わずかに笑った気がした。


「その解釈で問題ありません」


認められた。


その事実が、逆に気味が悪い。



「そして、もう一つ」


空気が変わる。


今までとは、明らかに違う重さ。


「これは非常に重要な前提です」


――嫌な予感がした。


「今、説明してきた内容はすべて」

「“自ら器を放棄していない”ことが前提です」


……え?


「つまり」


わずかに間が落ちる。


「自ら生を絶った者は」

「第四世界への移行も」

「輪廻への復帰も許されません」



……。



「その魂は消滅します」



音が、消えた気がした。



「苦しみも、恐怖もありません」


「ただ、存在が無くなるだけです」



その瞬間。



――ガタッ



初めて。


あの女性が、大きく震えた。



今まで一切動かなかった彼女が、

まるで何かに怯えるように。



……天使が、そちらを見た気がした。



いや。


“見ている”。



明確に。




――まさか。




この中に。




“それ”がいるのか?




その答えを確かめる前に──



俺たちは。



この後、信じられない話を聞くことになる。