「似ている――」
その一言が、静かに三人の間へ落ちた。
波紋のように広がり、やがて――重なる。
気づけば、お互いの過去が流れ込んできていた。
どんな経緯でここに至ったのかも、説明される前に理解している。
なのに――言葉は交わしていない。
視線すら、ほとんど交わしていないのに。
「気が付きましたか?」
天使が、穏やかに問いかける。
「皆さんの共通因果が、“孤独”であることに」
――見られている。
視線という感覚がないはずなのに、確かに“俺”へ向いていると分かる。
「そして、あなたに欠けているものの正体……」
静かに、しかし確実に突き刺さる声。
「あなた以外の因果は“流された”ものです。止められなかった――理由は様々ですが、その果てを、どこかで想定していた」
「自覚がなくとも、選択していたのです」
空間全体に、声が反響する。
やけに――大きく。
逃げ場がないことを、思い知らされるように。
「見ない、ということは。運命を手放すことに似る」
「“選ぶ”という概念の根本。それが、あなたには欠けているのです」
――驚きは、なかった。
薄く、確かにあったからだ。
その自覚が。
ただ――
見ないようにしていただけだ。
その方が楽だったから。
三人は、無言で互いを見る。
落ち着かない。
どこにも居場所がないような、不安定な視線。
誰もが同じ顔をしていた。
「歪な形も、幾分かは整いましたね」
ふいに、話が切り替えられる。
「第四世界へ送るにあたり――あなた方の魂は歪みすぎていた」
「そこの器にすら、収まらなかったのです」
白しかないはずの空間が、わずかに圧迫感を帯びる。
逃げ場が、狭まる。
「孤独がどれほど魂を歪めるか……理解できましたか?」
「ここで行ったのは、次の器に“最低限”収まるための調整にすぎません」
理解とも違う感覚が、じわじわと染み込んでくる。
――そして、
こいつは、笑っている。
間違いなく。
「……でも」
沈黙を破ったのは、あの女性だった。
「私は……私は、無くなるのよね……?」
声は震えているが、不思議と崩れない。
「なら……なんで、一緒に調整される必要があるの……?」
その疑問は、自然だった。
俺も、チャラ男も――同じことを思っていた。
確かにそうだ。
ただ苦しめただけじゃないか。
意味もなく。
「フフッ……」
――笑った。
今度は、確実に。
「それくらいの楽しみがなければ……」
「ここには、娯楽など何も無いのですから」
背筋が、冷える。
「こちらの立場も、多少は考慮していただかないと」
――意味が分からない。
いや、理解したくないだけか。
「……」
こいつは――最初から。
俺たちの嘆きを、眺めていただけなのか。
三人の中に、同じ感情が広がる。
こいつは天使なんかじゃ無い
悪魔だ!!
白い存在は、淡々と続ける。
「ハズレです」
「そもそも私は、この空間とあなた方の認知を借りて“そう見せている”にすぎない」
その輪郭が、僅かに明確になる。
初めて――“表情”らしきものが浮かんで見えた。
「天使や悪魔など、想像の産物です」
「私の存在は、魂の理解領域には収まりません」
――もう、限界かもしれない。
気を失えた方が、どれほど楽か。
だが、その逃避すら許されない。
薄く残された感情だけが、意識を繋ぎ止める。
「待て!!」
空気を裂くような怒声。
チャラ男だった。
「それなら納得できねぇ理由があるッ!!」
初めて、明確な“意志”が空間を揺らす。
「――おい」
「そこのあんた」
その目は、もう軽薄でも何でもなかった。
「違和感に、気付いてるか?」
