初代『花雫の乙女』であるアデル・カーマンが精霊王と共に建国したとされる国、アデル王国。
精霊の森と呼ばれる太古の森から湧き出る清らかな水源が質の良い魔力を生み出し、湖を中心に栄えている国だ。
そしてこのアデル王国では百年に一度“精霊の好む花”を生み出す者が現れる。
それこそが”花雫の乙女”であり、国の繁栄の象徴とされる。
エギルに協力を求めて精査したこれらの情報は、紗希が読んでいたWEB小説『王太子と異世界女に二度裏切られた私は、悪辣勇者に溺愛される』にて出てくる設定と概ね齟齬はない。
これから探りに行く相手は、今代の花雫の乙女であるミレーヌに婚約者の王太子を奪われる令嬢、セレスティーナ・ヴァレリア。
ヴァレリア侯爵家の令嬢で、彼女には年の離れた兄と一つ違いの弟がいる。セレスティーナは曲がったことが嫌いな清廉潔白な性格で品行方正な完璧な淑女だ。そんな彼女はミレーヌの思い通りに動かないバグキャラとして自らの運命を切り拓いてゆく。
物語の流れに沿っていれば、最初の裏切りに憤り、王太子との関係を見直すために王都の別邸から実家の侯爵領へと戻っているはずだ。
書物庫にあった大陸地図からすでに把握していたアデル王国と魔王領の位置関係から、ヴァレリア領に一番近い魔王領の転移魔法陣の場所を調べていた紗希は、やっと重い腰をあげたバルトと一つ約束した。
「少しでもセレスティーナさんに何か感じることがあれば教えてください。今後の方針を一緒に考えましょう」
あくまで紗希は協力者。そのスタンスを崩すつもりはなかった。
きっとバルトはセレスティーナに会えば何かが変わる。
そんな確信めいた予感がしていた。
バルトの魔王の称号については魔王領を離れても問題ないようだった。
エギルの話によると、魔王の継承はその命を奪ったものが候補者として名が挙がり、魔王軍の幹部である管理者全員の承諾を得て承認されるという。
そのため城を空けて気ままに旅をしてようが、眠っていようが、何をしていても討伐さえされなければ魔王は誰かに譲られるものではないらしい。
前代の魔王レギオスがまさに良い例で、殆どを眠るか享楽に費やし、良くも悪くも管理者に仕事を丸投げしていたという。
その後に君臨したバルトは魔族嫌いであったものの、求められれば応じる律儀なところがどうやら魔族達にとって良い上司であったという。皮肉なことだ。
――――つまるところ、バルトと紗希の出立は特に反対されることはなかった。
城を出るため第一層への転移魔法陣に入る瞬間、バルトの身体は前と同じく少し強張っていたが、これは今後慣れていけばきっと大丈夫だろう。
その時バルトの腕を引くのはきっとセレスティーナだ。彼女に任せれば心配ない。
精霊の森と呼ばれる太古の森から湧き出る清らかな水源が質の良い魔力を生み出し、湖を中心に栄えている国だ。
そしてこのアデル王国では百年に一度“精霊の好む花”を生み出す者が現れる。
それこそが”花雫の乙女”であり、国の繁栄の象徴とされる。
エギルに協力を求めて精査したこれらの情報は、紗希が読んでいたWEB小説『王太子と異世界女に二度裏切られた私は、悪辣勇者に溺愛される』にて出てくる設定と概ね齟齬はない。
これから探りに行く相手は、今代の花雫の乙女であるミレーヌに婚約者の王太子を奪われる令嬢、セレスティーナ・ヴァレリア。
ヴァレリア侯爵家の令嬢で、彼女には年の離れた兄と一つ違いの弟がいる。セレスティーナは曲がったことが嫌いな清廉潔白な性格で品行方正な完璧な淑女だ。そんな彼女はミレーヌの思い通りに動かないバグキャラとして自らの運命を切り拓いてゆく。
物語の流れに沿っていれば、最初の裏切りに憤り、王太子との関係を見直すために王都の別邸から実家の侯爵領へと戻っているはずだ。
書物庫にあった大陸地図からすでに把握していたアデル王国と魔王領の位置関係から、ヴァレリア領に一番近い魔王領の転移魔法陣の場所を調べていた紗希は、やっと重い腰をあげたバルトと一つ約束した。
「少しでもセレスティーナさんに何か感じることがあれば教えてください。今後の方針を一緒に考えましょう」
あくまで紗希は協力者。そのスタンスを崩すつもりはなかった。
きっとバルトはセレスティーナに会えば何かが変わる。
そんな確信めいた予感がしていた。
バルトの魔王の称号については魔王領を離れても問題ないようだった。
エギルの話によると、魔王の継承はその命を奪ったものが候補者として名が挙がり、魔王軍の幹部である管理者全員の承諾を得て承認されるという。
そのため城を空けて気ままに旅をしてようが、眠っていようが、何をしていても討伐さえされなければ魔王は誰かに譲られるものではないらしい。
前代の魔王レギオスがまさに良い例で、殆どを眠るか享楽に費やし、良くも悪くも管理者に仕事を丸投げしていたという。
その後に君臨したバルトは魔族嫌いであったものの、求められれば応じる律儀なところがどうやら魔族達にとって良い上司であったという。皮肉なことだ。
――――つまるところ、バルトと紗希の出立は特に反対されることはなかった。
城を出るため第一層への転移魔法陣に入る瞬間、バルトの身体は前と同じく少し強張っていたが、これは今後慣れていけばきっと大丈夫だろう。
その時バルトの腕を引くのはきっとセレスティーナだ。彼女に任せれば心配ない。



