エタってしまった小説の世界で、ヤンデレ化した勇者が離してくれません。~聖女と呼ばれ執愛されていますが……読者です!~

転生クソ女もといミレーヌの抱く逆ハーレム計画を壊せる存在でバルトにとって重要な相手。
ここまで言えば重い腰を上げるだろうと紗希は薄く口端を持ち上げた。

なにせ小説に登場するミレーヌはこの世界を前世でプレイしていたゲームの世界と認識し、最推しであるバルトに執着している。

そして、唯一バルトと結ばれることが出来る逆ハーレムエンドを目指しているのだが……、彼女の底意地の悪さが最悪の方向に作用してバルトに憎まれる。しかしバルトは物語の強制力ゆえかミレーヌから離れられない。

心は離れているのに、腐れ縁というべきか筋書きに縛られているのだ。
故に彼女のゲーム知識から発せられる予言に嫌悪し、自分と同じ人間を熱望していた。

つまりミレーヌの予想通りに動かないセレスティーナはバルトにとって突破口。だからこそ、婚約破棄の夜に契約婚を申し出る。

「……予言と戦うことが出来る貴重な相手だと?」

「そうです」
「なるほど……」

バルトは紗希に向かって今までになく美しく微笑んだ。

「やはり必要ないな。もはやこの状況は予言どころの騒ぎではないでしょう。違いますか?」

この瞬間の勝ち誇った笑みを、なんと表現すべきだろう。

たかがそんな事かと言わんばかりの、瑣末な理由とでも言いたげな問いに紗希は口を開閉させ肩を揺らした。

ーー分かっていない。

確かにエタった七年が引き起こした惨事はバルトの言わんとする物語の筋書きから外れた出来事だが、ミレーヌという女を舐めている。