第一層への転移が成功してから暫くが経ち、紗希はげっそりとしていた。元来、血色の良い白い肌には疲れが滲み出ている。それもこれも全てバルトが頑ななせいだ。
「バルトさん、明日こそヒロインを探しに行きましょう。ヴァレリア領の様子を見に行くべきです」
「嫌です。それより聖女様こそ調べものなど止めてください」
こんなやり取りを何度繰り返したことだろう。毎回、突っぱねられては終わっている。
紗希が外の世界へ促せば促すほどに、ヒロイン探しどころか足枷でも付けられているのかと思うほど、バルトは頑なに魔王城から出ようとしなかった。
つい先日「魔王城で自分の物語が止まっている」と切実に告げていた張本人が自ら引き籠るとは何事だろう。
いや、好意を伝えられているため紗希の気を引きたい事は理解しているが、あまりに極端過ぎる。
しかも日々上がってくる魔族領で起きる珍事や侵入者への処罰など精力的に捌き、あまつさえ魔王城の改修に着手する始末。
『七年間、どんなに手を加えようが俺の身体と同じように状態が維持されていたので今後どうしようかと困っていたんですよ。ほら、聖女様が足を踏み外して怪我をされてはいけませんから』
第一層に繋がる転移魔法陣がバルトを受け入れたあの日から、バルトと同じく止まっていた魔王城の時間も動き出したという。
だから修繕するのだと言って、その挙句には『やはり窓が無いのは気に入らない』『時刻が分かるよう鐘を鳴らすべき』『生食禁止、調理加工を必須とする』など、自ら問題を提起してはより住みやすい魔王城作りに勤しんでいる。
しかも配下の魔族達はバルトのその変化を喜んでいた。
確かに職場環境の改善に前向きな上司が居ることは喜ばしいことなのだろうが、彼の意欲の中心にあるのは紗希の存在だ。結局すべてバルトの要求は「聖女様のために」から始まる。
私情が城に悪影響を与えているわけでないのは幸いだが、しかしやはり紗希にとっては大問題だった。
そもそも城の改修工事など今やることではない。
「バルトさんと同じ七年を過ごした人がいるかもしれないんですよ?」
「そう言ってそのヒロインを押し付けようとしているのでしょう。俺には聖女様がいる。必要ありません」
いい大人が拗ねて不貞腐れているわけだが、それすらも絵になる眉目秀麗な横顔が憎らしい。
「バルトさん、明日こそヒロインを探しに行きましょう。ヴァレリア領の様子を見に行くべきです」
「嫌です。それより聖女様こそ調べものなど止めてください」
こんなやり取りを何度繰り返したことだろう。毎回、突っぱねられては終わっている。
紗希が外の世界へ促せば促すほどに、ヒロイン探しどころか足枷でも付けられているのかと思うほど、バルトは頑なに魔王城から出ようとしなかった。
つい先日「魔王城で自分の物語が止まっている」と切実に告げていた張本人が自ら引き籠るとは何事だろう。
いや、好意を伝えられているため紗希の気を引きたい事は理解しているが、あまりに極端過ぎる。
しかも日々上がってくる魔族領で起きる珍事や侵入者への処罰など精力的に捌き、あまつさえ魔王城の改修に着手する始末。
『七年間、どんなに手を加えようが俺の身体と同じように状態が維持されていたので今後どうしようかと困っていたんですよ。ほら、聖女様が足を踏み外して怪我をされてはいけませんから』
第一層に繋がる転移魔法陣がバルトを受け入れたあの日から、バルトと同じく止まっていた魔王城の時間も動き出したという。
だから修繕するのだと言って、その挙句には『やはり窓が無いのは気に入らない』『時刻が分かるよう鐘を鳴らすべき』『生食禁止、調理加工を必須とする』など、自ら問題を提起してはより住みやすい魔王城作りに勤しんでいる。
しかも配下の魔族達はバルトのその変化を喜んでいた。
確かに職場環境の改善に前向きな上司が居ることは喜ばしいことなのだろうが、彼の意欲の中心にあるのは紗希の存在だ。結局すべてバルトの要求は「聖女様のために」から始まる。
私情が城に悪影響を与えているわけでないのは幸いだが、しかしやはり紗希にとっては大問題だった。
そもそも城の改修工事など今やることではない。
「バルトさんと同じ七年を過ごした人がいるかもしれないんですよ?」
「そう言ってそのヒロインを押し付けようとしているのでしょう。俺には聖女様がいる。必要ありません」
いい大人が拗ねて不貞腐れているわけだが、それすらも絵になる眉目秀麗な横顔が憎らしい。



