誰の特別にもなれなかった俺と、愛が重すぎる一軍王子

 「やべっ!」

 曲がり角から飛び出してきた別のクラスの男子を咄嗟に避けようとしたものの、間に合わず目を瞑ったその時。

 「っと、危ねえな」

 ぐいっと強い力で腕を引かれ、間一髪で衝突を回避した。
 胸の中にすっぽり収まるような形で抱きとめられ、見上げると壱星が少し顔をしかめて俺を庇うように立っていた。

 ぶつかりかけた相手が「あ、すまん!」と手を挙げて去っていくのを見送り、俺は胸を撫で下ろす。

 「わりぃ、壱星。助かった」

 体を離そうとしたが、俺を抱きとめた壱星の力は緩まない。
 黙ったまま俺を見つめてくる瞳は、どこか切迫していて。

 「晴」
 「……なに」
 「ちゃんとそばにいて……心配になるから」

 その言葉に胸がキュッと締め付けられる。
 相変わらず心配性すぎるだろって呆れそうになるのに。壱星が本気で俺を大事にしてくれているのが嫌というほど伝わってきて、うまく言葉が返せなくなった。

 「……ん」

 俺が小さく頷くと、壱星は安心したように目を細め、俺たちは再び歩き出す。
 腕を掴んでいたはずの壱星の指は、いつの間にか俺の指と深く絡み合っていて。
 どうしてだっけとか、学校なのにとか思うのに。手のひらから伝わってくる温度があまりにも心地よくて、野暮な言葉でこの温もりを壊したくなかった。

 昨日からずっとバタバタと跳ね回っていた心臓が、この温もりに包まれていると、不思議とすーっと落ち着いていく。
 ずっと前からこうやって手を繋ぐのが当たり前だったみたいに。