昼休み。購買で他のパンを選んでいる間にいつも買う焼きそばパンが売り切れていて、地味にショックを受けていた俺の目の前に、ぬっとそれが差し出された。
「はい、晴の分」
「……え、おれ、の?」
「うん。晴、絶対これ狙ってると思ったから」
「や、でも俺にくれたら壱星の無くなるじゃん」
「大丈夫。俺、今日弁当だから」
「……は? じゃあなんで購買並んでんだよ」
弁当の日まで毎回ついてくる理由が意味不明すぎる。
首をかしげる俺に、壱星は手元のペットボトルを軽く掲げて、爽やかに微笑んだ。
「ジュース、買いたかったから」
……うそだ。
自販機なんて教室の近くにだってある。購買に設置してある自販機とラインナップは同じはずだ。
もしかして、毎回俺がパンを買い損ねないように……?
いや、さすがに自惚れすぎか。
サンキュ、と焼きそばパンを受け取ると、壱星が満面の笑み……違うな。ドヤ顔で俺を見ている。褒めろオーラがすごい。だめだ。本気で大型犬にしか見えない。
「あーもう! マジでサンキューな! ほら、早くしないと昼休み終わるぞ」
声をかけると壱星は、ん、と嬉しそうなまま俺の隣に並んだ。
……ていうか俺が毎回焼きそばパンを選んでるの知ってたんだ。ああ、そういえば俺がたった一回選んだだけの飲み物も壱星は覚えてたっけ。やっぱり壱星はよく見てる。やばい……なんか俺までニヤけそう。
その後、終始ご機嫌そうな壱星と教室で昼飯を食べ終わり、二人で特に喋るでもなくぼんやり過ごしていた時だ。
「榊、捕まえた〜! 頼むからちょっと来て!」
「無理。俺いま晴と話してるんだけど」
小向井たちが突撃してきたが、壱星はバッサリ音速で断る。
「いや、なんも喋ってなかっただろ。暇してんだから来いって」
うん。確かに俺たち何も喋ってなかったよな。
壱星はなおも「無理」の一点張りだ。
「あっ、鳴海も一緒に――」
小向井がそこまで言いかけて止まった。
ん? どうした、と聞こうとして小向井の視線の先を見たら――壱星が笑みを張り付けていた。いつもの愛想のいい笑顔に見えるけれど、だめだ。目が笑ってない。怖すぎる。どうしたんだ急に。
さすがの小向井たちでも、この笑顔を前にしたら、威圧感がすごすぎて固まるのも無理はない。
直後、壱星はくるりと俺の方を振り返った。
「晴、ちょっとだけ行ってくるね。すぐ戻るから」
声のトーンが三オクターブくらい上がったんですけど。
信じられないくらい甘い笑みを向けられ、その露骨すぎる切り替えの早さに、最近ではビビるどころか心の中で拍手を送りたくなるレベルだ。
「……おう、行ってきな」
俺が頷くと、壱星は名残惜しそうにしながら小向井たちに連行されていった。
しかし、教室の入り口で他クラスの女子数人も混ざり、小向井たちと話し始めた壱星が、なぜか嫌でも目に入る。
ま、まあ、あれだけ派手な集団だし見ちゃうのは仕方ないだろ。
そう思うのに、壱星が微笑むたびに胸の奥にどろりとした嫌な熱が溜まっていく。
いやいや……別に、俺のじゃないし。
誰と喋ろうが、誰に微笑もうが、俺には関係ない。
自分に言い聞かせるが、どろどろした熱は溜まっていく一方で。
「ねえねえ鳴海くん、さっきから竹中くん話盛りすぎてウケるんだけど!」
「いやマジだって!」
気づけば、たけぴーや女子数人に俺の席が囲まれていた。
「鳴海もそう思うっしょ?」
「……え? ああ、まあ」
「鳴海くん全然聞いてなかったでしょ!」
「違うよな。晴クンはいつだーって、俺の味方だもんな~!」
「……あー、うん?」
会話の内容が全く頭に入ってこない。
壱星は相変わらず爽やかに笑っている。
……いやだな。…………え? いやだな? だから俺のじゃないんだって。
そんなことより、さっきから肩が重いような?
「はい、晴の分」
「……え、おれ、の?」
「うん。晴、絶対これ狙ってると思ったから」
「や、でも俺にくれたら壱星の無くなるじゃん」
「大丈夫。俺、今日弁当だから」
「……は? じゃあなんで購買並んでんだよ」
弁当の日まで毎回ついてくる理由が意味不明すぎる。
首をかしげる俺に、壱星は手元のペットボトルを軽く掲げて、爽やかに微笑んだ。
「ジュース、買いたかったから」
……うそだ。
自販機なんて教室の近くにだってある。購買に設置してある自販機とラインナップは同じはずだ。
もしかして、毎回俺がパンを買い損ねないように……?
いや、さすがに自惚れすぎか。
サンキュ、と焼きそばパンを受け取ると、壱星が満面の笑み……違うな。ドヤ顔で俺を見ている。褒めろオーラがすごい。だめだ。本気で大型犬にしか見えない。
「あーもう! マジでサンキューな! ほら、早くしないと昼休み終わるぞ」
声をかけると壱星は、ん、と嬉しそうなまま俺の隣に並んだ。
……ていうか俺が毎回焼きそばパンを選んでるの知ってたんだ。ああ、そういえば俺がたった一回選んだだけの飲み物も壱星は覚えてたっけ。やっぱり壱星はよく見てる。やばい……なんか俺までニヤけそう。
その後、終始ご機嫌そうな壱星と教室で昼飯を食べ終わり、二人で特に喋るでもなくぼんやり過ごしていた時だ。
「榊、捕まえた〜! 頼むからちょっと来て!」
「無理。俺いま晴と話してるんだけど」
小向井たちが突撃してきたが、壱星はバッサリ音速で断る。
「いや、なんも喋ってなかっただろ。暇してんだから来いって」
うん。確かに俺たち何も喋ってなかったよな。
壱星はなおも「無理」の一点張りだ。
「あっ、鳴海も一緒に――」
小向井がそこまで言いかけて止まった。
ん? どうした、と聞こうとして小向井の視線の先を見たら――壱星が笑みを張り付けていた。いつもの愛想のいい笑顔に見えるけれど、だめだ。目が笑ってない。怖すぎる。どうしたんだ急に。
さすがの小向井たちでも、この笑顔を前にしたら、威圧感がすごすぎて固まるのも無理はない。
直後、壱星はくるりと俺の方を振り返った。
「晴、ちょっとだけ行ってくるね。すぐ戻るから」
声のトーンが三オクターブくらい上がったんですけど。
信じられないくらい甘い笑みを向けられ、その露骨すぎる切り替えの早さに、最近ではビビるどころか心の中で拍手を送りたくなるレベルだ。
「……おう、行ってきな」
俺が頷くと、壱星は名残惜しそうにしながら小向井たちに連行されていった。
しかし、教室の入り口で他クラスの女子数人も混ざり、小向井たちと話し始めた壱星が、なぜか嫌でも目に入る。
ま、まあ、あれだけ派手な集団だし見ちゃうのは仕方ないだろ。
そう思うのに、壱星が微笑むたびに胸の奥にどろりとした嫌な熱が溜まっていく。
いやいや……別に、俺のじゃないし。
誰と喋ろうが、誰に微笑もうが、俺には関係ない。
自分に言い聞かせるが、どろどろした熱は溜まっていく一方で。
「ねえねえ鳴海くん、さっきから竹中くん話盛りすぎてウケるんだけど!」
「いやマジだって!」
気づけば、たけぴーや女子数人に俺の席が囲まれていた。
「鳴海もそう思うっしょ?」
「……え? ああ、まあ」
「鳴海くん全然聞いてなかったでしょ!」
「違うよな。晴クンはいつだーって、俺の味方だもんな~!」
「……あー、うん?」
会話の内容が全く頭に入ってこない。
壱星は相変わらず爽やかに笑っている。
……いやだな。…………え? いやだな? だから俺のじゃないんだって。
そんなことより、さっきから肩が重いような?



