放課後。校門へ向かう道すがら、前を歩くカップルが目に入った。二人は当然のように手を繋ぎ、時折肩をぶつけ合って笑っている。昇降口の陰では、別の男女が人目も憚らずに顔を寄せ合っていた。
普通、付き合うってああいうもんだよな。
人前でキスする心境は理解できないが、少なくとも触れるという行為が、そこには当たり前に存在している。
これまでに付き合ってきた奴らを思い返しても、もっと分かりやすく肌の温もりを求めてきた。それが付き合っている証とでもいうみたいに。
それに比べて、隣を歩く榊はどうだ。
元々誰にでもスマートに壁を作るやつだし、他人と触れ合うのが嫌いなタイプなら理解できる。
だけどそれはクラスメイトや友達に対してで、俺に向かってくる榊の熱は、そんな冷めたものじゃない。
名前は呼ぶし、視線は執拗なほどに俺を追いかけてくる。無駄に話しかけてくるし、距離だって十分に近い。
熱烈な好意を向けられている自覚はあるのに、榊は雨の日に髪を拭いてくれただけで、普通のカップルがするようなスキンシップは一切してこない。
「また、連絡するね」
駅の改札で足を止めて言った榊に「ん」とだけ返して背を向ける。
俺たちは『付き合っている』らしい。
でもそれは、手すら繋がない、あまりにもあやふやな関係で。
付き合っている意味あるのか、これ。
……まあ、いいか。そんなこと考えたって仕方ない。どうせそのうち終わるんだし。
触れ合ってもいない不確かな関係なら、終わる時だってあっさりしているはずだ。
それでいい。そうすれば誰も傷つかない。
それがいちばんいいはずなのに……胸の奥がこんなにも痛むのはどうして。
一度だけ振り返り、遠ざかる榊の背中に視線を送る。
それから俺は、あいつとは反対方向へと歩き出した。
雨の日、タオル越しに伝わってきた榊の手の温度だけが、どうしてか今になって蘇ってきて、頭から離れてくれない。
普通、付き合うってああいうもんだよな。
人前でキスする心境は理解できないが、少なくとも触れるという行為が、そこには当たり前に存在している。
これまでに付き合ってきた奴らを思い返しても、もっと分かりやすく肌の温もりを求めてきた。それが付き合っている証とでもいうみたいに。
それに比べて、隣を歩く榊はどうだ。
元々誰にでもスマートに壁を作るやつだし、他人と触れ合うのが嫌いなタイプなら理解できる。
だけどそれはクラスメイトや友達に対してで、俺に向かってくる榊の熱は、そんな冷めたものじゃない。
名前は呼ぶし、視線は執拗なほどに俺を追いかけてくる。無駄に話しかけてくるし、距離だって十分に近い。
熱烈な好意を向けられている自覚はあるのに、榊は雨の日に髪を拭いてくれただけで、普通のカップルがするようなスキンシップは一切してこない。
「また、連絡するね」
駅の改札で足を止めて言った榊に「ん」とだけ返して背を向ける。
俺たちは『付き合っている』らしい。
でもそれは、手すら繋がない、あまりにもあやふやな関係で。
付き合っている意味あるのか、これ。
……まあ、いいか。そんなこと考えたって仕方ない。どうせそのうち終わるんだし。
触れ合ってもいない不確かな関係なら、終わる時だってあっさりしているはずだ。
それでいい。そうすれば誰も傷つかない。
それがいちばんいいはずなのに……胸の奥がこんなにも痛むのはどうして。
一度だけ振り返り、遠ざかる榊の背中に視線を送る。
それから俺は、あいつとは反対方向へと歩き出した。
雨の日、タオル越しに伝わってきた榊の手の温度だけが、どうしてか今になって蘇ってきて、頭から離れてくれない。



