誰の特別にもなれなかった俺と、愛が重すぎる一軍王子

 太陽が真上に昇る頃、俺たちは病院を後にした。
 診察の結果、大きな異常はないとのことだったが、晴の頭に巻かれた包帯が痛々しい。
 俺が代われたらいいのに、と何度も言いかけた。でも、それを言えば、晴はもっと自分自身を雑に扱ってしまうような気がして、俺はただ黙って隣を歩くことしかできなかった。

 「今から学校とかダルくね?」

 いつも以上に軽い声でそう言った晴を見て、胸が痛む。
 ああ、こんな時ですら、俺に気を使って明るく振舞おうとしてしまうんだ。

 「……もう、サボる?」

 自分の口から出た言葉に俺自身が驚いてしまう。
 遅刻や欠席なんて、これまでの俺の人生には無縁の選択肢だった。けれど、今の俺に学校へ戻っていつもの自分を演じる余裕なんて、これっぽっちも残っていない。

 晴は一瞬、目を丸くしたが、「あー、普通にアリ」とあっさり深く考えもせずに同意されてしまった。断られると思っていたから、拍子抜けすると同時に、心臓が小さく騒ぎだす。

 「昼だし、なんか食べに行く?」

 本当はこのまま家まで送って、安静にさせた方がいいに決まっている。でも、今の晴を一人でお兄ちゃん優先の家へ帰すことなんて絶対に無理だ。
 俺にできることなんて何もないかもしれないけれど、せめてあの家にいなくてもいい理由が、俺になってくれたらいいと思う。

 「じゃ、お詫びに奢るわ」
 「は? なんの詫び」
 「まあいろいろ。ごめん」

 そこにいつもの軽さはなくて、晴はどこまでも本気で申し訳なさそうな顔をしていた。
 ……なんで、晴が謝るんだよ。
 勝手に押し掛けて、怪我している晴を帰さないで連れ回しているのは俺の方なのに。
 いったいどこまで自分を後回しにすれば気が済むのか。

 「ラーメンでいい?」

 俺が言葉を詰まらせていると、晴は近場のラーメン屋を指差し、頭に包帯を巻いたまま何事もなかったかのように暖簾をくぐろうとする。
 その歪な気遣いが、俺の胸を焼き尽くしそうだ。